第5話 生徒会室って、どこですの? おねい様、がどこにも見当たらないですわーー!
マーガレットは、配布された重たい教科書類を
取り巻きの女子に部屋に運ぶように命じた後、
姉を探してキャンパス内を歩き回った。
噴水のある中庭。
カフェ。
三年の教室棟。
図書室。
運動広場。
(どこにも……いないですわ…‥)
もしかして、お部屋に戻ってしまわれたのかしら。
いえ、まだ探していないところもありますわ。
たとえば――そう、生徒会室。
ピンッときた。
(きっと、そこですわ!)
何度目か分からないけど、そこにいる姉をリアルに想像して、
胸が焦がれる。
ああ、追いかけるたびに遠ざかるなんて――。
これも、おねい様のたちの悪い魅力ですわ……!
ところで、生徒会室って、どこですの?
マーガレットは、辺りを見渡した。
そのとき。
「ねぇねぇ君、そこで何してるの?」
明るく、軽い調子の声が後ろからかかった。
振り返ると、
プラチナゴールドの髪が眩しい男子生徒が、
人懐っこい笑顔を向けてこちらへ来た。
(あの方は――)
カーライル・ギレーゼン。
伯爵家の跡取り息子じゃありませんこと?
王族パーティで、何度かお会いしたことがありますわ。
「あれ、君――マーガレット嬢」
カーライルは、青空のような目をぱああ、と輝かせた。
自然な仕草で、マーガレットの手を取り、
簡易的に手の甲に唇を落とす。
「ごきげんよう。カーライル様」
マーガレットは社交場の笑みを浮かべて、
穏やかに挨拶を返した。
「おねい様を探しておりますの。
生徒会室にいらっしゃるのではないかと……」
「クリス嬢? 確かにさっきは生徒会室にいたよ」
「本当ですの!?」
やっと、こちらに幸運の風が吹いてまいりましたわ。
だって、
カーライル様も、生徒会のおひとりなのですもの。
「生徒会室の場所だけでも、教えていただけます?」
「いま行っても、たぶんいないよ」
「え――」
カーライルは眩しい笑みを浮かべながらさらりと言った。
「転入生の様子を見に行かれたようだから」
「て――転入生って、あの……」
リリア・クローバー……!
マーガレットの胸がカッと熱くなる。
なんで……なんで……っ。
「なんで、わたくしより先にあの女の場所に――っ!」
キイイイ、悔しいですわ――っ!
ハンカチを噛みしめる。
あの女は今――きっと女子寮にいますわね……!
重たい教科書やら備品やらを一人でせっせと運び終えた頃合いかしら。
ふんっ!
「あはは。噂通り、面白い妹嬢だね」
「う……」
カーライル様に笑われてしまいましたわ……。
いけない、感情を抑えなくては……っ。
「――ねぇ、僕の予想なんだけどさ」
カーライルが空色の瞳を細めて、怪しく笑った。
なぜだか、嫌な悪寒が腰から首筋までゾゾゾ、と這い上がった。
「あの子を、生徒会に入れるつもりなんじゃないかな」
「……は?」
おねい様が?
田舎のど平民を……?
マーガレットの中で、
ウキウキわくわくのハッピー生徒会ライフ像に、ひびが入る。
ピキ、ピキ……。
パリン――ッ!
幻想。
まやかし。
ただの妄想――?
「そんな、そんなの……嫌ですわーーっ!」
マーガレットは女子寮に向かって走り出した。
*
廊下に取り残されたカーライルは、
薄い唇に手を当てて、楽しげに微笑む。
「ただの予想なのに。思い込み激しすぎ」
ふふ。
肩を震わせる。
(あの子は、婚約者には無理だな)
子供すぎる。候補外。
あまり関わらなくてもいい。
そんな娘より――。
(聖女の力が目覚めた娘、ね)
エラルド王子にとられる前に、抱え込むのもいいかもな。
生徒会にいる連中も、似たようなことを考えてるだろうし。
さて――。
卒業までに、いったい誰が聖女を手に入れるのかな?




