第26話 おねい様とエラルド王子が何お話しておりますわ!
マーガレットは、魔導部の扉を閉め、生徒会室の前を通って寮に帰ろうとした。
通りがかった生徒会室の引き戸が、薄く開いていた。
ちら、と銀色の淡い光が、目の端に映る。
あれは――おねい様の輝き……っ!
マーガレットは、俊敏な動きでドアの隙間から中を覗いた。
「マーガレ――」
「シッ!」
リリアの声を鋭く制して、黙らせる。
部屋の中の姉は、気付かなかったようだった。
(おねい様と……誰かしら)
窓辺の席で、誰かの方を向いて何かを話している様子だった。
ドアの隙間が狭すぎて、角度が悪い。
もう少し、移動してくださらないかしら。
……いえ、覗き見なんてはしたない行為こそ、
今すぐやめるべきですわ。
ああ、でも――!
なんだか、とても入れる空気じゃありませんもの。
姉が、席を立った。
その正面に、誰かが立って、二人が向き合う。
その背丈。
その距離感。
鳶色の髪。
(あれは、エラルド王子ですわ……!)
ならきっと、エラルド王子が、思いを寄せていることを告白するところなのですわ!
ああ、ですが、おねい様はまた……、
心にもなく、拒絶してしまうかもしれませんわ。
マーガレットの頭の中に、厳しかった時の姉が浮かぶ。
あれは、おねい様がこの学園に入学されるとき。
ともに学友になられたエラルド王子が、親しみを込めて伸ばされた手を、
パシンと強くはたいていらしたもの。
あの時のおねい様の気高さには、ビリビリに痺れましたわ……!
そして、今――、
おねい様は、エラルド王子と見つめ合い、
きゃ!
肩を、抱かれておりますの……っ!?
マーガレットの胸が、きゅんと沁みた。
息を漏らさないように、慌てて口を塞ぐ。
二人の表情は見えないし、
何の会話をしているのかもわからないけれど、
いい雰囲気であることには違わない。
エラルド王子の隣に立つおねい様……!
まるで、おとぎ話に出てくるお姫様ですわ……!
息を詰めすぎて、苦しくなってきました。
早々に、立ち去らなくては……っ!
マーガレットの覗きの横で、リリアも中を見る。
「わぁ。クリスティーヌ様ですね。
行かないんですか?」
「だめよ。というか、覗きをするなんてはしたないですわ!」
リリアが、すこしむっとする表情を作った。
「マーガレット様が先にやったんですよ?」
「う……」
うるさい小娘ですわね!
「……もう、行きますわよ」
おねい様とエラルド王子の邪魔をしてはいけませんもの。
マーガレットはリリアの手を引き、生徒会室から離れた。
この時、部屋の中に入っていたら、
もしかしたら、何かが変わっていたのかもしれませんわね……。
もう、遅いのですけれども。




