↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/42

第24話 魔力のコントロールって、難しいのですわね

 フィンネルが手招きをして部屋の奥に消える。

 マーガレットとリリアは意を決して魔導研究部の部屋に入った。


 広い作業台には、水晶や色水の入った試験管。

 変な匂いのする紫色の液体が入った鍋が、ぐつぐつと煮込まれていた。


「コーヒー飲むかい?」

「結構ですわ」

「あ、そう」


 フィンネルは、作業台の上に肘をつき、ズズ、とコーヒーを飲んだ。


「魔力を安定させる練習がしたいですわ」

「ほとんどの生徒の課題だねぇ」

 エドガー君や、クリス嬢も。

 

 フィンネルは指を一本ずつ立てながら、何名かの生徒の名前を呟く。


「一年生は基礎から授業で習うでしょ? 急がなくてもいいと思うけどねぇ?」

「あなたのように、魔力量がもともとない方はそれでよろしくてよ。

 でも、リリアは常に魔力を放出して誰彼構わず魅了してしまいますわ。

 それは、よろしくなくてよ」

「うん。そうだね。

 君みたいに、魔力量が少ない生徒は授業で何とでもなるけれど、

 リリアちゃんはそもそも異質な力だし、なおさら訓練が必要。

 そう言いたいんだね?」

「あなた、いちいち言葉が一言多くてよ」


 フィンネルがわざとらしく首を傾げた。


「事実を述べただけなんだけどなぁ?

 どこらへんが多かった?」


 相変わらず、性格が破綻していらっしゃいますわね。

 こんな方が従兄だなんて、嘆かわしいですわ。


「もう、いいですわ。

 で、リリアの練習は、どういったものがいいと思いますの?」

「ふふん。なんか君、変わったね」

「どういう意味ですの……?」


 フィンネルが身を起こし、腰に手をやった。


「感情のコントロールはやったけど、あまり効果が無かったんでしょ」


 なんなんですの?

 急にやる気になって……よく分かりませんわ。


「説明していないのに、よくわかりましたわね」

「魔力ってね、大きく分けて二種類あるんだよ。

 一つは、自分の内側で生み出す魔力ね。これがマーガレット嬢やボク」


 フィンネルは、部屋の隅に置かれたホワイトボードに人体の絵をかき、

 中心から手足に矢印を書いた。


「もう一つは、自然の力を外から取り込んでしまう魔力ね。

 これが、エドガー君やクリス嬢。そして、リリアちゃんなんだ」


 フィンネルは、色の違うペンで外側から人体へ向けて矢印を書いた。


「だから、いくら感情をコントロールしてもさ?

 入ってくる量をどうにかしないと何にもならないんだよねぇ」


 分かったぁ?

 と言いながら、ペン先をマーガレットの方へ向けた。


 そ……んなの……。


「……」

「まぁ授業で習うのって、まだ先だろうしね?

 君が一般的な解決方法を勧めたのは悪くないけれど、

 リリアちゃんが瞑想したところで、さらにおしとやかになるだけでしょ?」


「……ぐ……っ」


 何も、言えないですわ……っ!

 く、や、し、いぃぃい……!


 マーガレットの背中が丸まり、ぷるぷると震える。

 フィンネルは、んふ、と鼻を鳴らし、ペンを置いた。


「と、言うことで、これからリリアちゃんにやってもらうことは――」

 

 裏声と、その変なテンションが最高潮になる。


「バラバラにしたぬいぐるみを一パーツずつ繋ぎ合わせる、こ、と!」


 ダンッ!

 

 マーガレットが、作業台を強くたたいて身を乗り出した。


「却下ですわ!」

「おやなんで?」


 ぱちくり、とフィンネルの目が瞬く。

 これだから、この男は嫌なのですわ!

 マーガレットは、人差し指を突きつけて、高らかに叫んだ。


「ぬいぐるみが可哀そうで仕方ありませんわ!

 あなたがバラバラになったら、どう思うか考えてくださいまし!」

「……む……ぅ」


 ふふん。

 言ってやりましたわ!

 魔法の知識が広くても、倫理観を捨ててはなりませんもの。


「君、ぬいぐるみの気持ち『は』考えるんだ……」

「……? 当然ですわ?」


 強調した言い回しだったが、些細なこと。

 マーガレットは、深く考えずに聞き流した。

 フィンネルが頭を掻きながら、うーん、と悩む。


「なら、このコップの中に、赤い液体を入れよう」


 青い透明なコップに液体が注がれ、光に透かすと綺麗な紫色に透けた。


「リリアちゃんは、中身の赤色だけ透明な水にしてね」

「なんですの? その練習は?」

「いいからやってみて」


 フィンネルがリリアにコップを手渡した。


「えっと……じゃあ……」


 リリアが両手でコップに手を添え、

 目を瞑って魔力を込める。


 すると。


「……あ……」


 青かったコップまでも透明にしてしまい、

 リリアの手には、透明なコップに透明な液体が入ったものが握られていた。


「ほらねぇ?」


 フィンネルが笑う。


「リリアちゃんは、何でもかんでも全部浄化しちゃってるんだね」


 あらま。大変ですこと。

 マーガレットは、神業がかった芸当を意図せず成功させたリリアを横目に、

 ふん、とそっぽを向いた。


 才能がある人の悩みなんて、知らないわよ。

 

「たまにきて練習していくといいよ~。

 ボクはいつでも大歓迎さ!」

 

 こんなところ、来たくないのですけれど。


「……むずかしいな……」


 リリアの横顔に、少し焦りが見える――……気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。