↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/42

第16話 聖女と話しがしたいなんて、ストレートもいいところですわ

 午前中はみっちりとお勉学に励み、

 リリアとマーガレットは昼食を摂ったあと、学園の舞踏室へ移動した。


 道の途中。

 マーガレットは指先を唇にあてて、リリアをちらりと見た。


 お勉学の出来は……全然ダメね。

 国の歴史や成り立ちも知らないし、

 爵位のあるお方の写真を見せられたら、即答してみせなさいよ、まったく。


 でも、ま。

 数日前まで平民だったのだから、仕方のないことですわね。


 マーガレットの視線に気づいたリリアが、控えめに声を出す。

「マ……マーガレット様?」

「あなた、バレエシューズはお持ちなの?」

「いえ。学園の備品をお借りしようかなと」


 ああ、あの平民専用の安物のやつですわね。

 ……あれでは、ろくにお稽古ができませんわ。


「今日は柔軟運動の後に、実際にシューズを履いて練習しようと思いましたが、

 ご自分のものではないのなら、体幹トレーニングに変更ですわ」

「体幹……トレーニング?」

 ふふん。

 あまり分かっていらっしゃらないですわね。

「きつい、ですわよ?」

「…‥お手柔らかに……」

 リリアの頬が引き攣る。

 そう!!

 その表情ですわ!

 そうして、実際にやってみて、

 心がバッキンと折れればいいのですわ!


 マーガレットは、鼻歌交じりに腕を振って元気よく歩いた。

 


 舞踏室に到着する。

 学内の舞踏室は貸し切りではなく、

 舞踊に励む他の生徒らが個人的に練習を行っていた。


『ワン・ツー・ワン・ツー』


『アン・ドゥ・トロワ』


 様々な声と、キュッキュと鳴る靴音。

 その中心で、一際目立つ存在が優雅に舞い踊っていた。

 

 赤い髪。

 長い手足。

 完璧なターンと、

 指先、足先まで意識の向いた姿勢。


 エドガー・ヴァルクール。


 間違いなく、彼がこの部屋の主役の存在だった。

 

「……きれい」

 リリアの小さい呟きが聞こえたかのように、

 舞っていたエドガーの動きがピタリと止まり、

 灰色の瞳が静かに一点を見た。


 リリアが息を飲む音が聞こえた。

 

 ドキッとしたのかしら。

 確かに、エドガーは綺麗に舞うわ。

 バレエだけじゃなく、社交的なダンスもばっちりと決めますし。

 スポーツをやらせれば嗜む以上の成果を残しますし。

 ……身体をお上手に使えるようですのよね。


 短気なことに目を瞑れば、言うことなしなのに――ですわ。


「いきますわよ、リリア」

「あ――はい……」


「待ってくれ」


 リリアを呼び止める低い声が、煩わしかった。

 運動後の、ほのかに上気したエドガーの頬が、少し赤みを帯びていた。

 その目は、立ち止まったマーガレットの奥に注がれる。

「なんですの?」

「聖女と話をしたい」

 なんて、ストレートな物言い。

 脳筋は、これだからいけませんわね。

「生徒会のお話をお聞きにならなかったのかしら?

 そう言うことがないように、わたくしがついているのですが?」

「言い寄りではない。ただ、話がしたい」

 マーガレットは深く息を吐き、リリアの肩に手を添えて女性更衣室へ移動した。

「あなたが女性なら、お友達としてお話できましたのにね」

 

 おねい様との約束は、絶対に果たさなければいけませんの。

 

 伸ばした手を宙に浮かせながら固まるエドガーを残して、

 マーガレットは女性更衣室の扉を閉めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。