第13話 ボロ雑巾リリアの製造計画
生徒会が解散する頃には、窓の外の日が傾き、
オレンジ色の光が廊下に差し込んでいた。
マーガレットは、姉の腕にべったりとくっついて、
女子寮――百合の華へ向かっていた。
歩きながら、肩にかかる姉の髪を掬い、うっとりと眺める。
ひんやりしたおねい様の人差し指が、額をピン、と弾いた。
「いた――くないですわ! おねい様!」
「痛くないようにしてあげたの。それよりも――」
姉の視線が、後ろに向けられた。
数歩離れて、肩を縮こませたリリアがついてきている。
「私との約束、守ってちょうだいね?」
マーガレットは、頬を膨らませた。
今は、わたくしだけを見ていてほしかったというのに。
「分かっておりますことよ、おねい様!」
リディアとミーナに任せればいいことですもの。
簡単ですわ!
マーガレットは、心の中でそう呟いた。
クリスティーヌの手が、マーガレットのくるくるした栗毛色の髪を撫でる。
「リディアさんとミーナさんに任せっきりにしないで、
バレエのお稽古も、もちろんお勉学も、一緒に過ごしてあげてね」
「え……」
う……うそ。
そんな日常まで……?
マーガレットの頬が、ピキッと音を立てて固まった。
この無茶ぶり。
やっぱりおねい様のおっしゃることは、難易度が高いですわ!
ピキ――ン!
と、何かが頭の中で閃く。
方向性が変わっただけですわ……!?
あからさまな嫌がらせでリリアを追い詰めるのではなく、
このわたくしと行動を共にさせて、
精神的に追い詰めて、ボロ雑巾のようにげんなりさせるおつもりなのね……!
な、なんて恐ろしいおねい様……っ!
そして、その意図はばっちり理解しましたわ!
このわたくし、マーガレットは、
バレエと学園、そしてプライベートでもしっかり追い詰めて、
聖女リリアをボロ雑巾リリアに仕立て上げてやりますわーー!!
「おーほっほっほっほ!!」
「え……マ、マーガレット……?」
わざとすっとぼけられてる……!
そんな困惑した表情のおねい様もかわいいですわーーーーっ!!
マーガレットは、姉の腕からそっと離れ、
後ろにいるリリアにきつく視線を向けた。
「リリア――さん?」
一応さん付けしてみたが、胸の中にぞわぞわと悪寒が走り回る。
リリアは、肩をびくりと震わせて、美しい緑色の瞳をマーガレットに向けた。
「明日から、あなたの所作を見直すところからびしばし指導していきますわ!
覚悟しておくことね! あと、リリアとお呼びしてよろしくて?」
指導なんて生ぬるいことなんかしませんけれど。
今はこう言うしかありませんわ。
だって、煩わしいことに、
なぜかリリアの背後に、エドガーがついてきているのですもの。
女子寮までついてくる気じゃありませんわよね。
いかがわしいですわ。
「は……はい、リリアと呼んでください。マーガレット……様」
「宿題として、放課後と休日を含めた一週間の計画を決めなさい。
勉学・お稽古・所作・魔法・お出かけができましてよ。
その計画次第であなたの未熟さがどう変わっていくのか、楽しみですこと」
ボロ雑巾のようにしごいてやりますわ……!
という言葉は飲み込んで、
女子寮に着くまでの短い距離を、リリアの隣に並んで歩いた。
エドガーは、本当に女子寮の前までついて来て、
無言で去っていった……。
迷惑なお話ですこと。




