こういうのもいいわね♪
リビングの惨状と、出来上がっている大人たちの熱気に、潤たちは「……今は、何も言わないでおこう」と静かに視線を交わした。
せっかくの表参道の余韻を台無しにしないよう、買ってきたばかりの荷物を手早く整理して部屋に置くと、吸い込まれるように近所のラーメン屋へ向かった。
カウンターとテーブルが数席あるだけの、どこにでもある街のラーメン屋。
「こういうお店もいいわね! ほとんど来たことがないから、すごく新鮮だわ」
桃姫が、少し油の染みたメニューを興味深そうに眺めながら目を輝かせる。
「そうか。ならよかったよ」
潤が少し照れくさそうに笑い、まずはいつものギョーザを注文しようとしたその時、スマホが震えた。
母のローラからのLINEだ。
『どこいったの!?』
『近くのラーメン屋だよ』
潤が短く返信を打つ。
すると、即座に既読がつき、立て続けにメッセージが飛んできた。
『なら、餃子と野菜炒めと、それぞれ2人前ね。あとはラーメン屋の隣のドーナツ屋で今CMのやつ、みんなの分も買ってきて』
『katochya pay送るね』
スマホの画面には、大人数分であろうなかなかの金額がチャージされた通知が届く。
「……すごいまだ食べる気なんだ」
潤は画面を見て溜息をついたが、隣では桃姫が運ばれてきたお冷を一口飲み、「なんだかこういうのもいいですわ♪!」とはしゃいでいる。
表参道の高級ランチから、街のラーメン屋、そして母からの「ついでのおつかい」。
潤たちの2日目は、予想外の庶民的な方向へと賑やかに転がり始めていた。




