月が綺麗♪
「(あれ……? そういえば、ピーちゃんは? まぁ、リビングでまだ遊んでるのかな……)」
潤は暗闇の中でふと、ピーちゃんの姿が見えないことに気づいたが、睡魔には勝てなかった。マサとピーチ太郎の寝息が重なり合い、潤の意識もゆっくりと沈んでいく。
深夜、潤の部屋には静寂が訪れた。
――だが、その頃。
客室の扉の向こうでは、アロマの香りに包まれた「作戦会議」がさらに熱を帯びていた。
「ねえ桜子、見て。この新作のアイシャドウ、ラメの密度が凄いの。これなら明日のテラス席の光でも、絶対綺麗に映えるわ」
桃姫がスマートフォンの画面に映る最新のコスメ情報を、真剣な眼差しで見つめる。
「本当、絶妙な色味……。でも桃姫、その色ならベースにこのコーラルを仕込まないと、せっかくの透明感が台無しになっちゃうかも。明日、私のこれ貸してあげる」
「助かるわ。流石は桜子ね、私の肌のこと分かってくれていて嬉しいわ」
そこには、男たちが期待するような「誰がタイプ?」なんて甘い会話の気配は微塵もない。
あるのは、明日の自分をいかに最高な状態で完成させるかという、ストイックなまでの自分磨きだ。
「明日、ココさん♡が予約してくれた表参道のスイーツ、限定10食なんですって。朝のスキンケア、いつもより30分早めて取りかかりましょう」
「ええ、望むところよ。移動ルートも最短で回らないと時間が勿体ないもの」
桃姫はテキパキと指を動かし、SNSで話題のスポットをチェックしていく。
「……そういえば、さっきリビングを通った時、潤さんたちが深刻そうな顔で話してたけど。何かあったのかしら?」
桜子がふと思い出したように呟くと、桃姫は手鏡で自分のデコルテをチェックしながら、無造作に答えた。
「ああ、きっとくだらないことでしょ!? 男の人って、どうしてあんなに中身のない議論で盛り上がれるのか不思議ですわ」
「ふふ、確かに。私たちには、もっと大切な『明日』がありますものね」
「そうよ。さあ、次は春夏トレンドのファッション誌をチェックしなきゃ。寝ている暇なんてありませんわよ」
「ピー」
不意に、可愛らしい鳴き声と共に桃色の影が跳ねた。
いつの間にか部屋に忍び込んでいたピーちゃんが、ベッドへダイブして桃姫と桜子の間に入り込む。
「あら、ピーちゃん。あなたも一緒にチェックしますの?」
「ふふ、いい子ね! んふ♡ ラメぇ」
二人を独占するように、ピーちゃんはたわわな胸の桃姫と桜子を交互にモミモミしながら、満足げにプルプルと震えて一緒に眠りについた。
夜はさらに更けていく。
ただ、今宵は満月。
「んふ♡ んふ♡」
ふと、ピーちゃんは気づく。
隣で無防備に眠る桜子が、満月の光を浴びてサキュバスの妖艶な姿で横たわっていることに。
その神秘的で柔らかな感触を確かめるように、ピーちゃんはさらにモミモミと堪能し、最高潮の満足度で眠りにつくのだった。




