ロイヤルピーチ!桃一族と
昨日の話し合いを終えた後のことを思い出すだけで、体がびくついた。
堀井先生による、容赦のない『オイル全身リンパマッサージ(物理特訓)』……。
だが、その地獄のおかげで、今日、日曜日の俺は無敵だった。肌も、気合いも、化粧のノリも。桜子も気合い十分。マサだけは通常運転だけど。
マサ、桜子と一緒に降り立った鬼ヶ島のとある一角。
鏡の向こうは、見渡す限りの「桃色」だった。
ネオンに照らされた桃の果樹園。その中心に、信じられないほど「多幸感」を撒き散らしている男女が立っていた。
「……遅いぜ、マサ。天狗の秘蔵っ子や噂のサキュバスを連れてくるって言うから期待してたのに。連れてきたのは、ただの『彩度不足』な女の子二人か?」
派手なシースルーのハッピを羽織ったチャラ男——ピーチ太郎が、スマホのインカメラで自分の前髪をチェックしながら鼻で笑った。マサがまぁまぁ、となだめるが、奴の目は俺たちを完全に舐めている。
「太郎、失礼よ。……でも、確かに。私の視界に入れるレベルじゃないわね」
十二単をホログラム化したようなドレスを纏うモモ姫が、扇子をパチンと閉じた。
「あんたたち、自分を鏡で見たことある? 私の白桃肌の足元にも及ばないわ」
「……秘蔵っ子は姉貴のことだろ。っていうか……なんだって?」
隣で桜子のこめかみに青筋が浮かび、羽もしっぽも逆立てて威嚇している。
「(噂!?)ちょっとアンタたち。私はともかく、潤の美しさは、堀井先生が……」
「堀井? ああ、あの理論武装のハイエルフね」
モモ姫が冷ややかに言い放つ。
「理論だけじゃ、桃ラムは心を開かないわ。必要なのは圧倒的な『選ばれた者の血色感』。我らロイヤルピーチ! あんたたちみたいな一般層の『バニラ・ガール』程度には、この桃源郷の空気すら重すぎるんじゃない?」
「……マウント取られっぱなしだな、俺たち」
俺は一歩前に出た。
確かに彼らのオーラは凄まじい。悪意というよりは、純粋すぎる選民意識……。
「……ピーチ太郎、モモ姫。あんたたちの美しさは確かに凄いよ。でも、美しいの正解はそれだけじゃないだろ?」
「あぁん? なんだと?」
ピーチ太郎がスマホをポケットにねじ込み、俺を睨みつける。
「彩度が高いのはいいけど、肌表面のバリア機能がスカスカだ。その気持ちに傲慢な悪意が乗れば、餓魔やシャバサの影響を真っ先に受けるぞ。そうなれば、その美しさは一瞬で『とばっちり』を受けて腐る。……俺が目指してるのは、そういう悪意を弾き返すための美しさなんだよ」
俺は、堀井先生から叩き込まれた知識を総動員して、彼らの「死角」をハックする。
「モモ姫、あんたのそのマットな質感……素敵だけど、皮脂コントロールを無視した無理な厚塗りでしょ? このままだと、その自慢の肌、内側から悲鳴をあげるよ」
「な……っ!? 」
モモ姫が動揺して扇子を落としそうになる。
俺は一度、周囲を見渡した。
「……桃ラム、いるならこっちに来て。本当に求めてるのは、競う美しさじゃないだろ? 誰かと比べなくても、ただただ美しくなるのを楽しめばいいんだ」
俺の手には堀井先生の魔道具から「桃セラミド」をイメージした魔力を集中させる。
すると、草むらからプルプルと震えるピンクの塊——桃ラムが姿を現した。
「嘘でしょ……!? 桃一族以外にこんなに簡単に姿を見せないはずなのに!」
ピーチ太郎の絶叫を背に、桃ラムは迷うことなく俺の足元へと転がってきた。
「……さて。特訓の成果、ここで見せなきゃな」
俺は不敵に笑い、驚愕に凍りつく桃一族を横目に、桃ラムをそっと抱き上げた。
「あっ堀井先生からプレゼントだよ。桃一族に合わせたナイアシンアミド70%配合の、最新バフ付き美容液だ」
「「それ先に言って」」
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