トレンドは『桃』由来成分
潤が淹れた茶の香りが、張り詰めたリビングの空気をわずかに和らげた。
お祖父様は湯呑みを手に取り、ふう、と息を吹きかけてから一口啜る。
「……潤よ。真壁君から連絡があったと思うが、彼と北条(桜子)さんと一緒に、近いうちに『鬼界』の鬼ヶ島へ行くことになる。そこで一つ、頼まれてくれんかのう。……ココ、お前にも行ってもらいたかったが、お前には別の件で頼みたいことがある」
その言葉に、ココは一瞬だけ「えーっ、行きたい!」という顔をしたが、すぐに立場を思い出したのか、渋々ながらも頷いた。
お祖父様の静かな、だが重みのある言葉に、俺は背筋を正した。
「鬼ヶ島……。マサの家にある鏡から行くってやつだね。マサからもラインがきてたよ」
「ふむ。あそこには桃一族のファームがある。そこには、特別な桃の精霊『桃ラム』というのがおるんじゃ」
「桃ラム!? ……なんか、美味しそうな名前だけど」
「ふふ、あながち間違いじゃないわ」
堀井先生が、タブレットにピンク色のぷるぷるした球体の画像を映し出した。
「桃ラムはね、美しさに反応して、最高級の『桃由来バフ成分』を分泌するスライム状の精霊よ。今の私の研究には、その成分がどうしても必要なの。……でも、桃ラムは臆病で、若い女性(……あるいはそれに準ずる美しさ)じゃないと、心を開かないのよ!」
「だから、お前たちに行ってもらいたいんだ」
父が補足する。
「桃一族のピーチ太郎とモモ姫が案内役として同行する。……潤、北条さん。二人の美しさで、桃ラムを堀井先生用にテイムしてきてほしい」
「テイム……。私たちが捕まえて、堀井先生に届ければいいんですね……!?」
隣で桜子が、瞳を輝かせて身を乗り出す。
「わかった! やってみるよ。……俺、その桃ラムをテイムしてみせる!」
「いい返事だ。……ピーチ太郎たち桃一族と、鬼族……彼らと手を取り合い、種族を超えた連携を見せてこい」
朝食を終えた俺の肩に、堀井先生の手が置かれた。
「さて、決意が固まったところで……続きよ! 桃ラムに嫌われないよう、その『バニラ・ガール』としての彩度、限界まで高めてあげるわ! 桐山、北条、覚悟しなさい?」
「うわぁぁぁ! やっぱりそうなるのかー!」
「おねがいしまーす♪」
俺の悲鳴がリビングに響き渡る中、桜子が満面の笑みで俺の背中を押した。
鏡の向こう、ネオン煌めく鬼ヶ島での戦いが、今、幕を開けようとしていた。
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