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天狗✖️ギャル天女  作者: 抹茶ラテ


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美しいは至高

父が箸を置き、タブレットに「黒いノイズのようなデータ」を表示させた。

リビングの空気が、味噌汁の湯気さえ凍りつくような重圧に支配される。


「『餓魔』……奴らの発生源の8割は、男性から女性への悪意、加害欲、支配欲、いじめ、ハラスメント、そして醜い色欲だ。女性から女性へのマウントや陰口も残りの大半を占める。……要するに、美しくあろうとする女性は、周りにとっては『目福』だ。だが、ただ存在しているだけで負の感情の『とばっちり』や『搾取』を一身に受けているのが現状なんだ」


「……とばっちり、搾取か」

俺は、ギャルとして街を歩いた時に感じた、あの背中にねっとりとへばりつくような不快な視線を思い出し、肌が粟立つのを感じた。


「そうよ、潤。美しい女子は目福だけど、それは同時に男性からの『悪い色欲の標的』や同性からの『僻み、マウント』もそうね……。おしゃれしたいだけ、綺麗になりたいだけの女性からすれば、たまったもんじゃないわ」

母ローラが、珍しく真剣な表情を浮かべる。


「だからこそ、魔道具長官の私の出番なのよ♪」

堀井先生が身を乗り出し、潤のツヤツヤの肌を指さした。

「新作オイルやコスメ、さらに服や靴にまで『バフ』を付与したのは、単なる美容のためじゃない。餓魔やシャバサを物理的に弾き返す……いわば『美のドレスコード』による武装の強化よ!」


「そうですね堀井先生。それと並行して、男女両方の意識改革も必要だ。教育に取り入れ、マスコミを使って世論を動かす必要がある。……いいか潤。おしゃれやファッションも、芸術やアートと同じなんだ!美しいは至高!」

父が潤の目を真っ直ぐに見据えて続ける。


「そこには教養や情報、知識、そして自分を律する気品が必要だ。それがわからない男性の多く、中には羨む女性からしてみれば「対象」としか見られなくなり、さらなる餓魔を呼ぶ隙を作る。見る側が理解し、裏付けがあって初めて、美しさは悪意を寄せ付けない『聖域』になるんだ」


「美しさが……」

俺は昨夜の堀井先生の講釈を思い出し、深く納得した。


「ええ、その通りよ。シャバサさえなければ特に男性どもの視線や意見なんて気にせずファッションを楽しめば良いだけなんだけどね。男性のためにおしゃれしてるわけでもないし。でもシャバサが出てきた以上、男性どもの根本の考えを正さないといたちごっこだわ。会社や家族の前ではそれぞれの顔があるが、電車や街中では匿名性高くなり理性ない野良化したジジイね、美しければ見るのは自然だけど、普通理性で抑えるのよ。それなのに性的や悪意でガン見されるのはやはり違うと思うの」

思い詰めた表情で頷く堀井先生。だが、すぐに声を低くして本題に入った。

「だから当面、まずは『シャバサ』対策よ。奴らは自我を持ち、物理的に人間に攻撃を仕掛けてくる上位互換。昨日もラボ周辺で観測されたわ」


リビングに戦慄が走る。

「物理攻撃……。今までは餓魔の霧に感化された人間が悪事を働いたり、手足に憑依して悪さをしたりするだけだったのに……」

桜子が、不安げに俺の袖を掴んだ。


「だから、本格始動させる。一般からも『美の防衛隊員』を募るんだ。美人もイケメンも可愛いも……正しい美意識と知性を持つ者を募り、魔道具で武装させる。潤、お前には姉のココと一緒に、その最前線でシャバサ対策に当たってもらう」


「わかった! ぜんぜんやるよ! むしろ、やらせてください!」

俺の即答に、父とお祖父様が小さく頷く。


「他の種族とも連携することになる。桜子さん、君にも親御さんから通達があるはずだ」

父の言葉に、桜子の瞳にこれまで見たことのない強い光が宿った。


「いいわね。サキュバスの加護を受けた北条、私の『新作春物トレンド武装』……最強の『バニラ・ガール』に仕立ててあげるわ。……さて、桐山。朝食が終わったら、さっそく『知性と美の実技特訓』の続き、しましょうか?」


「そ……そうですよね(……結局、また脱がされるんだろうな)」


納豆の味もしなくなった食卓で、俺はこれからの「美しき戦場」を予感して、震える手でソーセージを口に運んだ。

潤は残りのソーセージを口に放り込むと、父とお祖父様にお茶を淹れ直した。


本作お読み頂きましてありがとうございます。


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