入学式RTA
「……勝った。スイーツ『お布施』、これほどまでに男であることが心強いとはな、ふんぬ」
入学式当日の朝。
鏡の前に立つ俺、桐山潤は、無事「男子の自分」を指さして勝利を確信していた。
声良し!筋肉よし!喉仏ヨシ、胸良し! ふふふ♪股ヨシ!!!
どこからどう見ても、清潔感あふれる男子高校生だ。
『旨し♪♡ 約束は約束だもんね。昨日の夜の追加分、ベルギー産チョコ系マカロン、確かに受領いたしましたー♪』
天狗天女こと
エナエマが、チョコまみれの口で鼻を鳴らす。
「よし。エナエマ、昨日の家族会議の決定は絶対だ。学校では、俺は『桐山潤』として振る舞う。一般人生徒にバレた瞬間、俺は管理局の元、通信学校……泣。頼むぞ、またスイーツ買うからね! ホントに」
学園の校門。
桜が咲き乱れ舞う中、キラキラした一般人生徒たちの笑い声が響く。
「あ。…潤……? おはよう」
透き通るような声に足を止めると、そこには清楚なお嬢様――北条桜子がいた。だが、俺にしか見えない。彼女のスカートの後ろで、赤い尻尾が不安げにパタパタと揺れているのを。
「桜子。…おはよう…今日からまた同じクラスだね!よろしくな」
「え、あ、はい……。でも、潤。その……今日の潤、すごく良い匂いがして……入学式早々香水してきたの!? 大丈夫!?」
「大丈ばないけど大丈夫! ははは、姉貴の香水がうつったんじゃないかな!?」
必死の誤魔化し。そこへ、強いプレッシャーが近づく。
「……フン。朝から知った気配がすると思えば、桐山か」
ガタイのいい男、鬼族の真壁マサだ。
「マサ……。お、お前も俺と同じクラスだな、よろしくな」
「ああ。……よろしくって、お前。……変な匂いがするぞ。なんだこの甘ったるい匂いは!? 大丈夫か!? どうした!? 色気づいたか!?」
マサが俺の肩に、ガシッと野蛮な手を置いた。その瞬間――。
ピカァァ!
『はい、鬼のマナ接触! 強制トリガー引いちゃうよー!』
「なっ……エナエマ、やめろ……っ! なぜトリガーになるんだよ! 悪ふざけやめて」
『無理無理! サキュバスの熱視線と鬼の接触、ダブルでバリア突破! 潤子ちゃん・ブースト、強制アップデート開始!! じゃあね! ふふふ』
「ふふふじゃなくて待て!待て! 約束が違ッ!ここ、校門の前……っ! ぎ、ぐああああ!!スイーツあげたじゃん!」
胸のあたりが「ドクン!」と熱くなる。肋骨が勝手に形を変え、制服が悲鳴を上げる。
「ちょ、桐山くん!? 何今の誰!? って体から光が――」
「おい桐山、お前、今一瞬透けたぞ!? 異能か!? 使うのは臨時の時だけだぞ! 大丈夫か!? 餓魔がいるのか!?」
俺は反射的に、近くの大型掲示板の影に飛び込んだ。直後――「パァァン!」と、景気のいいボタンの弾ける音が響き渡る。
「ひゃっ……!? 潤!?」
掲示板の影に隠れているのは、男子制服を内側から破壊しかけた、銀髪爆盛りのギャルだった。
「んああ……見ちゃったね。……いいか、二人とも。これが俺の『異能でやばい事情』だ。おねがい先生呼んできてくれないか!? 俺は親にLINEする……!」
「わかった……けど……すごい。本当に……潤が、あの時ココさんといたギャルに!? ……(尻尾ビンビンだわ……っ!)」
桜子の瞳が赤く明滅し、尻尾がビシーッと直立する。
「……お前……。エスカレーターの時の女だったのか!! 匂いが……さらに濃くなっっ!」
圧倒的な「盛り」に後ずさりする。
「ねー、今掲示板の裏から、光ってなかった!?」
一般女子の声が近づいてくる。
「やべえ……! 隠してくれる!?! マサ、お前のデカい体で! 桜子、カーディガンを貸してぇーー!!」
「わ、わかったわ! 私の影にも入って、潤!? いや潤子さん!?」
「クソッ、バレるのは寝覚めが悪い! 桐山、俺の背中に隠れろ!」
母にLINEしたら「ウケる! そのまま掲示板裏に居てね! 保健の先生が来るまで待て」との返信。
くっ
母さん
温度差
「……おまっ。……その、爆盛りのやつ。……大丈夫か!? ぐふっ」
「……誰が見せたいと思ってやってんだよ!!」
入学式のチャイムが、絶望のファンファーレのように鳴り響く。
そこに、カツカツとヒールの音を響かせ、ミニスカで白衣を着た「保健の先生」らしき人物が姿を現した。
「そこの君さー。桐山でよくて!?」
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