頼りになる先生♪
「……騒がしくてよ!?♪ 放課後の美術室は凛とした静寂さが欲しいのよ!? おわかりになって!?」
現れたのは、白衣を羽織り、ゆったりとした足取りで歩く――堀井先生だった。
扇子を口元に当て、楽しそうに目を細めるその姿は、やはりどこか浮世離れした気品がある。
「ほ、堀井先生……!」
白雪が救いを求めるように先生に抱きつき、その腰に手を回した。
「先生、助けてください! このギャルが、私の顔に勝手に触って……なんか訳わからない説教を!」
堀井先生は白雪の顔を検分するように、じっと眺めた。
「白雪、こんなに美しいのに、惜しいわね」
先生の視線が、すっと――俺(潤)を優しく見つめる。
その瞬間、俺の脳内でエナエマが何かを理解したように弾んだ。
『ジュンチン、もう大丈夫よ♪』
「……堀井先生。白雪さんを、後はよろしくお願いします」
俺は、まだ少し震える声を抑えてそう告げた。
先生はクスクスと、柔らかい声で笑う。
「任せてよくてよ♪」
先生が指先をパチンと鳴らす。その音一つで、部屋に充満していたピリついた空気が霧散していくのがわかった。
「桐山、真壁、北条。これから何か感じたら、次からは先に報告してね?」
先生の射抜くような、けれど慈愛に満ちた言葉に、俺たちは顔を見合わせた。
「……確かにそうですね」
マサが、肩をすくめる。
「「「すみませんでした」」」
俺たち三人は、白雪さんを先生に任せ、美術室を後にした。
夕闇に染まり始めた廊下を歩く。
『甘いの食べたいからミス◯寄って♪』
空中で、エナエマが当然のように言ってきた。
「……そうだね」
俺自身も、今はひどく甘いものが食べたい気分だった。
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