美しいは痛みを伴うときも
昨日は帰宅した後、マサ、桜子、姉貴のココ、母、それにローラとで夕食を囲み、放課後の出来事を報告した。
一方で、祖父と父さんはラボに泊まり込んだまま。あれから返信も途絶えている。
そして翌朝。登校した俺――潤を待っていたのは、昨日以上にピリついた学園の空気だった。
「……なぁ、聞いたか? 特進Aの白雪さん、今日も保健室登校らしいぜ」
「あんなに完璧な美少女なのに、最近ずっと鏡を見ては泣きそうな顔してるって噂だぞ」
廊下ですれ違う男子たちの囁きに、俺の隣でマサが眉をひそめる。
「白雪零……。確か、学園パンフの表紙にもなったインフルエンサーJKのアイドルだよな?」
「……インフルエンサーね。ある意味一番危ういわね」
桜子が俺の顔を覗き込む。
その時、脳内にエナエマの声が響いた。
『ジュンチン、波長がビンビンきてるわよ。旧校舎の美術準備室あたり――放課後にでも』
---
放課後。旧校舎の隅にある美術準備室。
マサと桜子に外の見張りをお願いし、俺は一人で重い扉を開けた。
夕闇が差し込む部屋の奥で、大きな姿見の前に一人の少女が立っていた。
学園のアイドル、白雪零だ。
「……あと、1ミリ。わざわざ渡韓して、鼻フル70万もかけたのに。……なんで。鼻筋のハイライトが1ミリ太いだけで、全部台無し。やり直したい。……やり直したい。こんなの私じゃない……!」
彼女が手にした紅筆を鏡に叩きつけようとした瞬間、俺は彼女の腕を掴んだ。
「……何よ、あんた。邪魔しないで、っていうか誰!?」
ジロリ、と白雪が俺を睨む。その背後では、鏡の破片を纏った巨大な『餓魔』が、彼女の自意識を喰らおうと鎌首をもたげていた。
「白雪さん、そのハイライト。入れれば入れるほど、あんたが命がけで手に入れた『忘れ鼻』の良さが消えてるよ」
「……あんたに何がわかるの!? ちょっと可愛いだけのギャルに……私のDT時の苦しみなんて……!」
『ジュンチン、今よ!』
エナエマの叫びと共に、俺はポーチから「ハッキング・ミスト」を周囲に噴射した。
霧がホログラムへと姿を変え、彼女の「本質」を暴き出す。
---
◎ エナエマ - レポート
ターゲット:白雪 零
顔タイプ:クール(直線・大人顔)
骨格タイプ:ストレート
Status Log:
【黄金比への過剰適合】
【自己否定によるノイズ】
⇒ 診断:美容整形の情報を多く取り入れすぎて、本来の美学をオーバーライドされている。DTトラウマあり。
---
「美容整形の情報を多く取り入れすぎて、情報まとまってないまま渡韓してやったみたいね」
エナエマが補足
俺は彼女の顔のハイライトを、指先でさっと拭った。
「メイク一つで、直線美はカバーできる」
エナエマが扇子を振り下ろすと、白雪の背後にいた餓魔が、光の粒子になって霧散した。
「は!?そんなこと、わかってるわよ……。なんなの!? ……大声出すわよ! だれかー! 先生ーーー!」
白雪の瞳から濁りは消えたが、正気に戻った彼女はパニックを起こして叫び始めた。
「……ちょっ。待っ、待って待って!」
思っていた反応との違いに、俺はギャルの姿で慌てふためく。
その時。
廊下に、コツン、コツンと硬いヒールの音が響いた。
扉が開く。
俺たちは息を呑んで、扉の先を見つめた。
本作お読み頂きましてありがとうございます。
この作品をチラッととでも
『ふふふ』、『!?』と思ってくださった方は
ブックマークとか!?
マックス『★★★★★』まで
評価あるのでポチッとしてもらえるとテンション上がります
へへへ




