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天狗✖️ギャル天女  作者: 抹茶ラテ


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37/76

美しいは武器であり1つの正義

日も沈みかけた、日曜の夕方。


玄関の電子錠が重厚な音を立てて解錠された。

流れ込んできたのは、焦げた魔力と消毒液、そして冷たい鉄錆の匂いだ。


「ただいま。……すまんな、遅くなった」


防護服を半ば脱ぎ捨て、泥のように疲弊した父さんが立っていた。後ろでは、祖父が「ふぅ」と深く重い息を吐く。


「じじ、パパ! おかえり!」

「……ああ。ココ、心配をかけたな。だが収穫はあったぞ」


父さんがフラつく足取りでソファに沈み込むと、キッチンから母ローラが静かに現れた。その手には人数分のコーヒー。


「お疲れ様です♪ まずはこれを。……堀井先生の分も、もうすぐ来るわね?」


まもなく、玄関のチャイムが鳴る。

母が迎えにいくと、ネオンカラーのトレンチコートをなびかせて堀井先生がやってきた。


「タイミング良いわね、先生」

「ええ、お邪魔するわ」


母がリビングへ案内し、先生がソファへ腰を下ろす。


「街の偽装結界はどうでしたか?」

父の質問に、先生は険しい顔で首を振った。


「最悪よ、パパさん。あちこち餓魔がまや『魔漏まろう』の反応を隠蔽する細工がされてたわ。……それで、ラボでの結論は?」


父さんがタブレットを起動し、ホログラムの刻印を空中に投影する。

それを見た瞬間、堀井先生のコーヒーを啜る音が止まった。


「……偽装魔導印フェイク・シジル。間違いない、あの人――ヨウキヒヨ元長官のセンスだわ」

「ヨウキヒヨ……。堀井先生の、元上司だよね?」


父さんが尋ねると、先生は自嘲気味に笑った。

「ええ。美と嫉妬の化身。あの方は、かつて餓魔対策の研究をしていたはずなのに、今は人間も含めいろんな種族を『ジャバサ』へと変異させている!?。なるほど、この刻印のせいで、彼らは本来の浄化システムをすり抜けて肥大化し続けるのよ」


「つまり、ヨウキヒヨが……全部仕組んでたってことか」

「ええ。特定の『美』に執着したり、それが手に入らない絶望、妬み嫉み、加害欲、悪意。誰にだって少なからずある負の感情……。ヨウキヒヨはそこに付け込むの。厄介だわ、なんとかしないと取り返しがつかないわね」


「なるほどね!」

その時、俺の視界に天狗天女姿の『エナエマ』が現れた。軽快に指を鳴らし、優雅に扇子を振る。

画面には、今回持ち帰った個体の正体を暴く、非情なまでの「正解」が並んだ。


---

◎リポート

■ Subject: Jabasa

人族: 『Q』(元・ブランド狂いの転売ヤー)

■ Tendency: 【富裕層への羨望と憎悪】


■ Strategic Weakness (Critical Point):

顔タイプ:【クール・エレガント】

(圧倒的な気品に触れるとガードが30%低下)

骨格:【ストレート】

(迷いのない「芯」のある打撃に1.5倍ダメージ)

カラー:【ウィンター】

(冷徹な色彩に対し、精神耐性が激減)


---


「……こいつ、自分が一生手に入れられなかった『本物の高級感』に、本能的に怯えてるんだ。だから昨日、堀井先生の攻撃が効きすぎたのね。……ってことは、ジャバサの好みに合わせて攻撃すれば効率いいのね?」


母の言葉に、堀井先生が低く呟く。

「そうね。まぁ、ある程度『顔面偏差値』が高いなら通じるけれど……こればかりは好み(タイプ)があるからね」


父さんが真剣な面持ちで立ち上がった。


「各管轄省庁と連携を組んで、ラボに対策本部が設置された。しばらくワシと祖父はラボへ常駐になる。……家のことはローラ、ココ、潤、任せたぞ」

「わかった。パパたちが命がけで持ち帰ったデータだもん。……今後の訓練に取り組んで、少しでも役に立ってみせるよ」


母さんも頷き、祖父、父、堀井先生と共に、戦いの中心地であるラボへと向かっていった。


嵐が去った後のような静けさ。

ココ姉貴は何かを思い詰め、握りしめた拳を震わせながら「……私、ちょっと考える」とだけ残して自分の部屋へ戻ってしまった。


「まずは、できることから、か」


俺は、基本から確認しないとと思い鏡の前に立った。

「自分を整えることが、最大の武装になるのか……!?」


まずは【朝のルーチンセット】。

ぬるま湯で丁寧に顔を洗い、母さん特製の化粧水で肌を整える。指先に伝わる自分のコンディションを、試しにあげてみるか。


《 Beauty Maintenance: 3% UP ↑ 》

《 Defense: 1% UP ↑ 》


視界の端で一瞬、ポップアップが表示され、粒子となって消えていく。

「ぇ!?」

思わず声を上げた俺のリアクションを見て、エナエマが満足げにささやいた。

「この方がわかりやすいでしょう!?」


「お、おう、ありがとう、エナエマ。準備、手伝って」

「……オッケー♪ 任せなさいっ!」


エナエマの声に応じるように、俺は光に包まれ、再構築されていく。


流行りのメイクを効かせ、不敵に笑う――ギャルになった潤だ。


エナエマが俺の背中を力強く叩き、サムズアップを送ってくる。

本作お読み頂きましてありがとうございます。


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