渋谷♪渋谷♪
「「これ、激カワやん!!」」
「「潤子、次はミヤシタパーク経由でパルコや! ハシゴすんで!」」
夕方の渋谷。トレーニング終わりの疲労などどこへやら、カリナとマリナは109からスクランブルスクエア、ヒカリエまでを驚異的なスピードで回遊していた。
俺はと言えば、両手に大量の紙袋をぶら下げた完全なパシリ姿。だが、最新のトレンドを「獲物」のように見定める双子の目は、戦場でのそれと同じくらい鋭い。
「……はい、ご褒美。ヒカリエで並んで買った限定スイーツ」
俺が差し出した箱を受け取ると、二人はようやく満足げに「潤子、分かってるやんw」と笑った。
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「はぁ……。ようやく落ち着いたな」
夕食は俺の家。母ローラ、堀井先生、マサ、桜子、双子、そしてココ姉貴。リビングにこれだけのメンツが集まると、熱気だけで魔力が上がりそうだ。
飯の後は、堀井先生が持ち込んだ「最新の戦備」についての反省会(?)が始まった。
「いい? 潤子。次のステップは『顔面偏差値』を上げてバフを付与すること。これはただのコスメじゃないわ。あなたの魔力回路を最適化する『塗る魔法術式』なのよぉ……」
先生が取り出したのは、ネオンカラーのオイルや、真珠のように輝くクリーム。
「春物のパステルカラーは、魔力の拡散を抑えて隠密性を……ふふ、高めるのら……」
いつの間にか、リビングには空いたワインボトルが転がっていた。
スパークリング1本、辛口の白1本、そして重めの赤まで空け、母ローラと堀井先生の顔はすっかり出来上がーつている。
「ちょっと先生ぇー! そもそもさぁ、汚い! 臭い! 醜いは人類の敗北なのらぁー!」
母ローラがグラスを掲げて、千鳥足で叫ぶ。
「そうよぉ、ローラさん! 醜い心に一言申したいのぉ。レディーファーストな紳士が絶滅危惧種なんですけどぉ!? 教育の敗北! ゴブリンみたいな精神の人間が多すぎるから、餓魔が湧くのよぉ!」
堀井先生も、コンソールを叩く時のキレはどこへやら、クッションを抱きしめてクネクネしている。
「おしゃれしてるだけなのに『媚びてる』とか? 韓流アイドルが可哀想だわぁ……笑わせないでよねぇ。存在自体が『目福』でしょうに! リスペクトが足りないのよ、リスペクトがぁ!」
「街中でもさぁ、視姦とか加害欲丸出しのクソオジ……マジ不潔で醜いんだわ。それでモテたいとか、キャバクラで説教ぉ? どの口が言ってるのかしらねぇー! 鏡見なさいよ!?きっしょw」
「ほんとそ!キモいよね! まずは清潔感と筋トレ、あとレディーへの真摯な心! それでようやくスタートラインなのら! ……あ、あとお金ね!」
「大事ね!お金は!でもやはりお互い清潔感、敬う気持ち、筋トレ、おしゃれね」
「はぁ!もうらめぇ、飲めないけふぉ飲むわよ!」
「パァーといくのらぁ」
(……怖ぇ。今日の女子会……)
部屋の隅でゲーム機を握りしめる俺とマサ。
「……マサ、女同士の会話えぐいな」
「……全くだ。高一に聞かせて良い話か!?」
「と、とりあえずがんばろ」
俺たちはひっそりと、将来絶対に「ゴブリン側」にはならないと、コントローラーを握る手に力を込めて誓い合った。
女性陣の爆笑と、コントローラーの乾いた音だけが、リビングの平穏を守っていた。
――だが、その平穏は、玄関の重苦しい音で唐突に打ち砕かれた。
「……ただいま」
聞き慣れたはずの父の声が、砂を噛んだように掠れている。
リビングのドアが開くと、そこには肩を借りて満身創痍で立つ祖父と、防護服をボロボロに汚した父の姿があった。
「じいちゃん!? 親父!?……その怪我、どうしたんだよ!」
二人とも、ただの事故とは思えない。
最新鋭の防護服をバターのように切り裂き、肉まで達した鋭い「斬撃」の跡。
そこからは、先ほど先生が嫌悪していたあの「醜悪な魔力」の腐敗臭が、どす黒く漂っていた。
平和だったリビングの温度が、一気に氷点下まで突き落とされた。
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