姉貴の本領発揮
渋谷の更地を前に呆然としている俺たちの横で、不意にココ姉貴がゆっくりと立ち上がった。
その瞳には、今までの余裕とは違う、鋭く冷徹な「戦士」の光が宿っている。
「……ふふ、見てたら私も久しぶりに施設でトレーニングしたくなっちゃったわ。先生、難易度はナイトメア!……じゃなく『メタルメア』でいいわ。東の筆頭の私としては、これでも軽い方だけどね?」
「「「……メ、メタルメア!?」」」
俺と桜子、そしてあの双子ですら、その単語を聞いた瞬間に顔色を変えた。
「ナイトメア(悪夢)」ですら精神汚染で廃人が出ると言われるこの施設で、その上位互換――物理的硬度と精神的絶望が融合した禁忌の領域。
「あら、ココさん。いいデータが取れそうだわ。喜んで用意させてもらうわね」
堀井先生が、かつてないほど速い手つきでコンソールを叩く。施設の防壁がミシミシと軋みを上げ、仮想空間のはずのエリアから、現実の空気を押し潰すほどの重圧が漏れ出してきた。
『想定トレーニング:LV15【夢の国スタンピード連鎖Vo3・ソロ討伐】』
投影されたのは、誰もが知る「夢の国」を模したテーマパーク。だが、そこは幸せな魔法など微塵もなく、鋼鉄の鎧を纏った餓魔たちの咆哮で埋め尽くされていた。
「すごぉい……ココさん、あんな地獄に一人で……」
「……東の筆頭。西のうちらとはまた違う、ガチの武闘派やからな……」
桜子と双子が、祈るような羨望の眼差しを向ける。
ココ姉貴は、俺が持っているエナエマとは比較にならないほど巨大で、禍々しくも美しい東の秘宝天狗天女――『ホシヒメ』を顕現させた。
「潤子、よく見ておきなさい。これが『守る』ためではなく、全てを『無』に帰すための魔力よ」
姉貴が一歩踏み出した瞬間、地平線を埋め尽くす餓魔の群れ――メタルメアの連鎖が、一斉に襲いかかる。
だが、姉貴は微笑みを絶やさない。
「『東天・灰燼の調べ』」
姉貴とホシヒメが同化した手から放たれたのは、ネオンブルーを通り越して『白銀』に近い高純度の閃光。
それが夢の国のシンボルである城の頂点から降り注いだ瞬間、鋼鉄の餓魔たちが、まるであめ細工のようにドロドロに溶け、一瞬で蒸発していく。
「「「……は……?」」」
双子の攻撃が「空間の切断」なら、姉貴のそれは「存在の否定」。
たった一撃で、レベル15の絶望が、文字通り『灰』へと変わった。
「ふぅ……。やっぱり少し体が重いわね。先生、今の動き、どうだったかしら?」
ホシヒメもドヤ顔!
「完璧よ、ココさん。……潤子、今の姉貴の背中を見て、何を感じたかしら?」
堀井先生に促され、俺は開いた口が塞がらないまま、白銀の残光の中に立つ姉貴を見つめていた。
ギャルだの、内股だの言っていた次元が、一気に吹き飛ぶ。
(……これが、俺の姉貴……。東を統べる、本物の化け物……!)
「姉貴……ガンガリマス、じゃなくて、マジでリスペクトっす!! スイーツ買ってくるっす!!!」
俺の叫びに、姉貴はいつもの妖艶な笑みを浮かべて、パチンとウィンクして見せた。
そのまま潤子姿の俺に近寄ると、有無を言わさず頬ずりし、豊満な胸で俺を全力でもふもふし始める。
「潤ちゃん可愛い。……ギャルのままでいてね」
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