週末はアガる
金曜日、朝。
登校早々、俺の平穏は「保健室の主」によって木っ端微塵に打ち砕かれた。
「あら、桐山。いいところに」
「おはようございます、堀井先生……」
白衣をなびかせ、モデルのような立ち姿で廊下に立っていた先生は、ハイエルフ特有の冷徹な笑みを浮かべた。
「いい? 今週末の研修は遊びじゃないわ。……これはほぼ『実戦』よ。最新の研究でね、餓魔は『美しいもの』に弱いことが判明したわ。美しい女子による眼福こそが、あいつらには強力なデバフになり、こっちはバフがかかるのよ。効果は絶大よ! それらを考慮した私の魔導理論により、良質なスキンケアは『防御バフ』、鮮やかなリップは『出力強化』に直結するの。つまり、素肌で戦場に行くのは万死に値するわ」
「初耳ですが……。っていうか先生、俺、モブ男子だから関係なくね!?」
「検体はおだまり。あんたは『ギャル化』が前提よ。……じゃあ、後でね」
嵐のように去っていった先生。それから俺の「地獄の金曜日」が始まった。
授業が終わるチャイムが鳴るたび、前の席の桜子が前のめりで振り返る、距離感近っ。
「潤、いい!? 2限目始まるまで勉強よ! 今のトレンドは『水膜』! 潤がギャルになるなら、ぷるんとした唇は必須バフなんだから!」
「いや、勉強じゃないじゃん、桜子……数学のノートに『うさぎ舌リップ』って書くのやめてくれないか? 先生に見られたら死ぬ」
「とりあえず、次の2限後はこれよ、fweeのプリンポット! 潤にはピーチ系の色が絶対似合うわ。30色もあるけど、私が選んであげるから安心しなさい!」
桜子の勢いは止まらない。3限後の休み時間には、スマホで最新のパック画像をグイグイ見せてくる。
「潤、見て! この『Biodance』のコラーゲンマスク、3時間貼るとツヤ肌効果がバグるって話題なの。もはや回復魔法のポーションでしょ! これも新大久保で大量買いよ!」
昼休み、俺と桜子のやり取りを横で見ていたマサが、ニヤニヤしながらハンバーグを口に運ぶ。
「いいじゃねーか潤。バフ盛り盛りの『最強潤子ちゃん』、俺も楽しみだぜ」
「マサ、お前他人事だと思って……!」
「いや? 俺も先生に言われてから調べたけどさ。メディヒールのティーツリーとか、鎮静効果凄そうじゃん。鬼族は血の気が多いからな、これでお肌をクールダウン(鎮静バフ)しとかねーと」
「お前、適応早すぎだろ!」
5限が終わる頃には、俺の机の上は桜子が書いた「韓国コスメ攻略メモ」で埋め尽くされていた。
「仕上げはこれね、periperaの水膜ティント。……潤、ちょっと塗ってみて?」
「え、ここでかよ!?」
「いいから! ほら、じっとしてて」
俺が大人しく唇を突き出すと、桜子が真剣な顔でチップを動かす。だから……顔、近いって。
「……んー、やっぱり。潤、ギャル化してなくても肌がいいからね。顔はモブだけど! まあいいわ! めちゃくちゃ『多幸感バフ』乗るわね……ふふ、可愛い。ココさんみたい」
「……可愛いとか言うな! 恥ずいんだよ! ……っていうか近いよ、桜子。その、色気がちょっと効くからやめてくれ」
「えっ……!?」
潤の指摘に、桜子の肩が跳ねる。無自覚に漏れ出したサキュバスの色気が、至近距離の潤を直撃していた。
「桜子、すげーな……」
マサが他人事のように感心している。
そして、放課後を告げるチャイムが鳴る。
桜子が顔を少し赤く染め、ピンと立てた尻尾を嬉しそうに振りながら「よしっ!」と気合を入れて立ち上がった。
「さあ、新大久保へ出発よ! 潤、マサ、遅れないでね! ちなみに美味しいお店もチェックしてあるわ♪」
俺は、手元のピンク色に染まったメモを見つめながら、これから始まる未知の買い物に戦慄を覚え桜子はハイテンションだ
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