ギャル化だけが肉体改造ではない
代官山での「グルテンフリーの日替わりランチとサラダボウル」と「空中ヨガ」を終え、這々の体で帰宅した頃には、太陽はとっくに沈んでいた。
「……死ぬ。……俺、もう一歩も動けねえ……」
リビングへ向かうが、平然としている姉貴は「まずは毛穴の洗浄よ!」と風呂に直行してしまった。
「お帰り、じゅん坊。顕現してから数日経つが、少しは慣れてきたか!?」
リビングでは、結界の巡回から戻った祖父と父が、厳しい顔で茶を啜っていた。二人の背後には、巨大な翼を持つ天狗の守護体が、静かな威圧感を放って鎮座している。
「ただいま、じいちゃん、父さん……。ぜんぜん慣れないよ。最初のイメージは陰ながら結界張ったり餓魔を倒したりするもんだと思ってたのに、エナエマは自由奔放だし、俺はただただ女子力を上げさせられてるだけの気がして……」
「ふむ。当面は慣れが必要だが、まずは守護体との同調率を上げねばならん。じゅん坊、お前も15歳で顕現して数日経った。徐々に『大和の守り』の一翼を担ってもらうぞ」
父が真剣な眼差しで俺を見た。
「この街にはな、『餓魔』という負のエネルギーがポップし続けている。放置すれば人間に憑き、悪さをし、時には人間を介して直接命を奪う。それを食い止めるのが、俺たち天狗一族の結界と、鬼族の武力、そして天女系やサキュバス系のバフがメインだ」
「……それは聞いてたけど、で!? 俺はどうすればいいんだよ!?」
「まぁ聞け。最前線で奴らを叩くのが鬼族の役割。俺たち天狗は、その場を浄化し、結界を維持する。……だがお前にはまだ、その力をコントロールしきれてない」
祖父が重い口を開いた。
「今日からとりあえず三ヶ月間、平日は毎日19時。……天狗界へ来い。一日3時間、力のコントロールと結界術の修行をみっちり仕込んでやるって言っても瞑想とイメージトレーニングと天狗との共鳴だな。まぁ、塾みたいなもんだ」
「天狗界どうやって行くんだよ!? しかも平日毎日……19時!? 3時間!? 終わったら22時じゃねーか! 朝は6時に起きなきゃいけないのに!」
そこへ、エナエマがふわりと現れた。
『あはは! ジュンチン、寝てる暇なんてないねw! 美容で外見を磨いて、天狗界で中身を鍛える。……これぞ最強の女子力アップだよ♪』
「……これのどこが女子力なんだよッ!!」
俺の叫びを無視して、エナエマは俺の分だったはずのロールケーキと珈琲を美味しそうに口に運び——。
『……旨し♪』
「はぁ……とりあえず俺にも飯を……ッ!!」
心身ともに削られる潤の、さらに過酷な「二重生活」の幕が開いた。
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