女子力のルーチン
「……おい、マサ。……ドリンクバー、手伝って……(震え声)」
サイゼの椅子から立ち上がろうとした俺は、生まれたての小鹿のように膝を震わせていた。
股間の違和感、下腹部の鈍痛、そして「ドバッといきそう」な恐怖。もはや数メートル先のコーラが、エベレストの頂上に見える。
「お前、マジでどうしたんだよ。……ほら、捕まれよ。ったく、銀座歩き回ってそんなにバテたのか?」
マサが苦笑しながら肩を貸してくる。こいつ、無神経だが優しいな!
「……バテたんじゃないよ。……俺は今、自分と戦ってんだよ。……いいかマサ、姉貴はいつもコーラだ。氷は少なめで。桜子はなんだっけ!? あぁ、同じコーラだっけ!? 俺もコーラにしと…ん!?マサもコーラかいw…」
サイ◯の席に戻ると、姉貴と桜子が楽しそうにスマホを突き合わせていた。
「ねえ潤子、見て! 明日の予定なんだけど、まずは代官山の『骨盤矯正ヨガ』で歪みを取ってから、中目黒の『グルテンフリーカフェ』で内側からデトックスしない?」
桜子のキラキラした提案に、俺はドリンクバーのコップを握りしめたままフリーズした。
「……ヨガ? ……デトックス? ……なあ桜子、俺の体は今すでに十分『ギャル矯正』されてる気がするんだが……」
「何言ってるのよ! 明日は8時に迎えに行くからね。今夜しっかり『浮腫み』取っておかないと、明日のウェア着たときに絶望するわよ?」
姉貴の宣告に、俺の「大和の民」としての誇りがポキリと音を立てた。
【19時:自宅・自室】
「ただいま……。……よし、とりあえず寝る。俺は寝るぞ……」
這うようにしてベッドに倒れ込もうとした瞬間、部屋のドアが勢いよく開いた。
「ちょっと潤子! メイクしたまま寝るなんて、顔面に負担かけて寝るのと同じよ! さっさとお風呂入ってきなさい!」
仁王立ちする母の手には、クレンジングオイルと得体の知れないローラー!?が握られていた。
「母さん……。潤子じゃないし俺、それにまだ15歳だぞ。こんなの、大人になってからでいいだろ……。それに風呂は朝入るよ、マジ勘弁して」
「甘いわね。今の15歳は『美肌の貯金』が義務なの! ほら、まずはクレンジングで『地層』を溶かして! 髪にはトリートメント塗って5分放置! その間に膝裏のリンパをコロコロしなさい!」
「……トリートメントの待ち時間に、脚をしごけってか? 女子の風呂場、やること多すぎて落ち着かねーよ!」
【20時30分:風呂上がり】
ようやく風呂から出た俺の前に、姉貴が3種類のボトルを並べた。
「はい、まずは導入液。次にビタミンC、最後はこれで『蓋』をして。摩擦は厳禁、ハンドプレスで優しく押し込むのよ」
「……導入に、蓋。……俺の顔は、いつから建築現場になったんだ? ……痛っ! なんだよこのオイル、指先にまで塗るのかよ!」
「ネイルオイルよ。ささくれがあるギャルなんて、ギャルが泣くわよ。仕上げはこれ、シルクのナイトキャップ!」
鏡を見ると、そこには銀髪を全て詰め込まれ、給食当番のようになったギャル(15)がいた。
「何言ってんの、これが明日の『ツヤ』を作るのよ。ほら、最後はストレッチ! 反り腰のまま寝ると、明日ポッコリお腹になるわよ!」
「……ッ!! ギ、ギブ! 股関節が死ぬ! 大和の民の可動域を超えてる……ッ!」
【21時】
顔はクリームでベタベタ、頭は給食当番、足には着圧ソックスの重装備で、俺はようやくベッドに沈んだ。
スマホに届いたマサからの『明日楽しみだなw』というLINE。
俺は、ベタつく指で、渾身の呪いを込めて返信を打った。
「お前は……呑気だな、また明日な!」
潤の「女子2日目」は、睡眠時間を犠牲にした魔改造と共に、女性ってめちゃくちゃお金かけてるんだなと思う
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