路〜視る〜(n+0.5)
月がシャーベットの真上にきている。
今、この路地裏を照らすのは月明かりだけだ。そんな暗い道をシャーベットは一人、通学路を歩くように進んでいった。
右、左、左、右、左、右……
迷路のような道を抜けていき、やがて着いたのは、古くボロボロな廃屋だった。
蜘蛛の巣、ボロボロな木の板、催促状で埋まった郵便受け。
そういうマニアにとっては、ここに風情を感じるのかもしれない。だが、彼女にとっては風情も何も感じない。感慨もなにも湧き上がらない。関心もない。ただの実家。
今日は、自分を括り付けていた呪いを解きにきただけだ。
少し深呼吸をした後、インターホンを押す。しかし、なにも応答はない。インターホンが反応していないのか、留守なのか…はたまた無視か。
少し経って、シャーベットは家の中に入っていった。
家の中は物で散乱していた。
ほとんどがゴミだったが、その中にビンの破片なども混ざっていたため足元に気をつけて歩いた。
リビングに着くと女がこちらに気づき、近づいてきた。
「……シャーベット?あなたシャーベットなのね!?ホント心配したんだからー!!帰ってきてくれて良かったわ!!無事に帰ってきてくれて本当に嬉しいわ!!お祝いのケーキでも焼きましょうか!!」
女は満面の笑顔で出迎えた。それにシャーベットは少し微笑みそうになったが、すぐに思い出して表情は暗くなった。母親は自分を愛していない。
「いや、いいよお母さん。そんなの」
「……どうして?」
「…………私、もうお母さんの元には戻らないから。それだけ言いにきたの。それじゃあ」
そう言ってシャーベットは母を後ろに歩いていった。
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