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スタンプカード終わり

とうとう訪れた週末の夕方。決戦前日…それも日付が変われば作戦開始なので、本番はもう目の前だ。


血の惨劇イベントが既に開始されていると思われる為、たった数時間だろうとトラブルで前倒しもありえるから、私達4人は既に臨戦態勢で私の家に集合していた。


ただ臨戦態勢と言っても動きやすい服装に着替えてあるというだけなので、見た目で言うとスポーツウェアの女の子4人が庭に集まってお茶をしてる感じで、言ってみればクラブ活動後の休憩風景のようだった。


エレン様とケイト様は可能な限り安定性を高めたハイドラさん決戦仕様追加パーツの最終調整を行い、私とティア様は作戦を念入りに確認している。


ハイドラさんのパーツにはギリギリで気づいた不足品もあったのだが、先んじてケイト様が更に色々集めてくれたらしく、エレン様が大喜びで調整しながら余分なものまで付けている気がする。



「ふっ…くくっ…!す…スミマセン…!こんなシリアスな段階で…!」

『どうかしましたかモップ?』

「ケ、ケイト様!つられて笑ってしまいます!手元が狂う…耐えてください…!」

『リミッターやパージ機構など、安全方面をしっかり確認して頂けると本当に助かるモップねぇ…』

「くふふふふ」

「わ、わかりました!自爆装置は外します…!外しますのでそのウネウネ動くの中止して下さい…!」

『なに付けてるんです!?!あっぶな!!!!』


ゴーストゴーレム八岐之大蛇メカドラゴン決戦仕様ハイドラさんメカ箒モデルの見た目について事前にケイト様も知識は得ていたのだが、笑っちゃいけない流れの時に実際に目の前でうねうね動かれる衝撃は初見で耐えられるものでは無い。


どうやら何かロマン的な装備を付けようとしていたエレン様も巻き添えでダメージを喰らい安全方向の強化へと切り替えさせられていた。



一方私とティア様の作戦確認は所々に問題点があり本当に結構シリアスな状況になっていた。


一つはハイドラさんに魔力を送っている間、最大戦力であるティア様の魔法が制限される事。魔力が足りないのではなく、下手に色々魔法を発動させようとするとその余波がハイドラさんの方にまで流れてしまって、追加パーツでも耐えきれないかもしれないのだ。


もう一つが時間制限。老朽化で恐らく少しの間しか門を開く術式が保たず崩壊する可能性が高く、その時間内に悪魔全員を投げ込まなければならない。当然一度開けば後戻りは出来ない一発勝負だ。


最後に門の暴走。地獄への時空穴が空いたまま術式が先に崩壊したら暴走して簡単には閉じられなくなってしまう。周辺の魔力源や発動させた術者を消滅させれば穴を維持出来ず塞がる筈だが、これはハイドラさんを消滅させる事になるので避けなければならない。



幽霊な上にわりと元凶だしちょっとくらい滅んでも大丈夫なのではという気持ちも無くはないが、ティア様と過ごすキラキラした思い出に汚点を残す気はない。全員を助けてこそヒーローなのだ。


((((((そう!ヒーローやるぞ!))))))

(うーん…)(なんかちょっと違う…)(教育に悪そう…)


「シャークさん!みんなを守りましょうね!」

「はいティア様。守るべき全てを守って見せます」



私だって最強のサメの筈なのに、最初はこの優しくて可愛い正義の使者が来る日に怯えていて、実際に遭遇し私も助けると言ってもらえるまで協力して事件解決なんて想像もしてはいなかった。


だが今は違う。皆に助けられて、なんとか事件の全容を掴み、誰も傷つかない完全な解決の入り口まで辿り着いた。


あとはもう、とりあえず事件の方はいい感じに終わらせて、ティア様との共同作業を堪能するだけだ。



「やっぱり作戦の要はスピードですね。作戦上のどの課題も手早く終えさえすれば良いだけですし、ティア様は素早さの固まり。であればもう私の空気投げの連投速度とコントロールが勝負になってくる」


「えっと、数枚の防壁くらいなら魔力コントロールしながら張れるので!シャークさんの安全はなんとかしてみせます!」


「身を案じて貰えるのは最高の気分ですが、ティア様のぶんの防壁もちゃんと張って下さいね」


「その、わたしの装備は防壁何百枚張るより強いので!変身してない時とか、えっちな触手とかに触られたく無い時とか、他の人を守る時くらいしか実は防壁使いません!」


そういえば本気の状態だと変身に変身を重ねてやたら過剰に防具がつくんだった。というかあの異様に固い防壁って厳しい魔力コントロールのついでで何枚も張れる感じなのか…。



「…そういえばハイドラさんへ送る魔力のコントロールというのは実際のところ今どんな感じなんでしょうか。ちょっとクシャミしたら破裂しちゃったりとか…」


「えっと、その、こう…ワニが生卵を歯で咥えて全力疾走してる感じです!」


すぐ割れそう。



『あ、あの、それはリミッターとか付く前の話ですよね?』


危険を察知したハイドラさんが祈るような声で確認するが、どう考えても今の流れは追加パーツをつけた状態での話だ。多分聞かないほうが良かった。


「追加パーツ無しなら、ワニがシャボン玉を歯で咥えて全力疾走してる感じです!」

『絶対割れる!絶対割れてますが!!』

「まあまあハイドラさん。知っても恐怖が増すだけなので忘れましょう」

『忘れる暇も無いくらいすぐ本番なんですが!?』



さあ準備も出来て覚悟も固まったら、今日は食べすぎない程度の夕食だ。


「あ!シャークさん!これ!スタンプちょうど3つ目です!」

「粗品のお菓子セットはもう私の部屋に用意してますのでお楽しみに」


ティア様のスタンプカードにサメスタンプを押す。



「ふふ…まさか私達まで本当に使うことになるとは」

「業者みたいな手紙の発案者はケイト様ですからね」


ケイト様のスタンプカードにサメスタンプを押す。



「なぜこんな面白い事になったんでしたっけ」

「そしてスタンプはエレン様の発案です」


エレン様のスタンプカードにサメスタンプを押す。スタンプ、これでおしまい。意外と、達成感があるかもしれない。


「ではちょっとだけパーティを。そして、全部終わってから改めて夜更ししすぎな悪のパジャマパーティをしましょう」


「今日だけは夜更しの為にお昼寝しておきました!」

「おなじく、早寝組はお昼寝済みのようですね」

「眠れなくなる怪談もちゃんと用意して参りましたわ!」

「今日は怪談封印です」

「そんな…!?」



食べすぎないようにと言いながらも、この4人での食事は本当に本当に楽しくてついつい満腹まで食べてしまい、決戦を前にしてるとは思えないほどのぐうたらした休憩時間が必要となってしまった。


そして、いよいよ、私が悪役をする筈だった血の惨劇イベントとの決着の時間が訪れる。

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