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最終決戦式典の開始

風のない穏やかな夜。


星明かりの映る美しい湖の水面に光り輝く魔法少女がふわりと浮かび、息を呑むほど幻想的な光景を作り出していた。



そして、その湖の山側の岸には私が颯爽と立ち、その隣には圧縮空気に閉じ込められた12体の悪魔が積み上げられてうめき声を上げていた。


(絵面の対比が…)

(向こうもよく見たら装備が多すぎるが…)

(何体か悪魔泣いてないかこれ…)



作戦の開始準備段階で残りの悪魔を全員湖の近くに集め、何が起きても逃げないようにとりあえず捕まえている。最初に遭遇した時に全く感知出来なかったのを考えると、いざというところで怖気づいて逃げられたり暴れられると対応出来るか怪しく、時間勝負の作戦の成功率が急激に下がってしまうので仕方ない。


「タス…ケテ…」「い…嫌だ…怖い…」「ア…悪魔…」


作戦に全面的に協力すると言っていたので悪魔達も全く文句は無い筈だし、聴こえてくる悪魔の声もほぼ肯定的と言える。



エレン様とケイト様は近くで支援すると言い張っていたが、今回の作戦ではティア様に制限がかかるため瘴気や悪魔のトラブルから守りきれるか確証が無く、しぶしぶ家で待機して貰っている。


自分達が成し遂げてくれた事をもう少し自覚して貰わないといけないかも知れないが、それもこれも全て無事に終わってからだ。


これほど準備が整った状態でここに立てた事に感謝の気持ちが溢れていても、これは成功させてから伝えるべきものだ。



だから。さあ、やるぞ。




「ティア様ー!準備出来ましたー!」


覚悟を決め、息を整え、美しく光る魔法少女に声をかける。その手にはメカ箒ことハイドラさんが握られている。


「分かりました!!作戦、開始します!!」


ハイドラさんに付けられた追加パーツが光を噴射する。過剰すぎる魔力を逃す機構だが、花火のようでちょっと綺麗だ。


『にぎゃあああああ!!!』


そんなに綺麗じゃない悲鳴も聴こえた気がしたがそれは聞き流す。


((((((来た!前と同じ場所!!))))))


私達の中で最も感覚処理に優れた6つ頭のサメが地獄の門を感知する。ここまで来たらもう後戻りは出来ない。



「いいですか悪魔の皆さん。作戦はシンプル、あの穴にここから皆さんを一体ずつ投げ入れます。変に動いて大きくズレると大変な事になるのでなるべく大人しくして下さい」


一体目の悪魔を周りの空気ごと圧縮して持ち上げる。


「ぐ…ぐぇ…潰れる…!あ、あの…!想像より結構距離がありますけども…その…コントロールとかその辺りは信じて大丈夫なんですか…!」


確かに、暗い上に結構距離があって、力加減や角度調整など難易度が低いとは言い難い。悪魔であろうと怯むのは分かる。しかし、これは事前に分かっていたことで、当然対応済みだ。


「安心して下さい。私、このまえ野球が出てくる作品を読んだんです」

「逆に凄く凄く不安になってきました…!あの、実戦経験は…!?」

「大丈夫、結構力には自信があるので、ノックアウト出せる筈です」

「ウワァアアまともな野球作品ですらないいいい!!!!」


なぜか突然暴れだす悪魔を更に圧縮して押さえつけ投球準備を整える。真水が苦手そうな見た目なので、湖を前に不安で錯乱しているのだろう。


(この際細かい部分にツッコミはせん)

(状況確認だ。穴が小さすぎても大きすぎてもダメだが…)

(これは…若干小さいのでは無いか?その悪魔通るか?)


聡明な3匹のサメが的確に状況を分析し続けている。確かに、想像よりも小さい。大きすぎる方が問題の厄介さは深刻なのでまだマシなのだが、クラーケンさんみたく軟体動物でないと圧縮にも限度がある。



「ティア様ー!もう少しだけ大きくないと危ないですー!」

「あの!術式に問題有りです!!予想より更に魔力通りません!」


まずい、本来のイベントでは二度に分けて地獄の門を開くなんて有り得ないので、異常が起きているかも知れない。一度目で若干壊してしまったため予想よりかなり条件が厳しい可能性がある。


「なのでちょっとハイドラさんに無理して貰います!!いいですかハイドラさん!!」

『えっ?』

「ちょっとリミッター解除します!」

『えっ…はいっ!!?』

「シャークさーん!いけるみたいなんで無理します!!時間制限と出せる防壁枚数減るので注意して下さい!!」


「わかりましたー!」


『あっあっ違、今の、はいってのは肯定じゃ』

「ちょっとリミッター解除ーーー!!!」

『ぐぎゃああああ!!!!』


追加パーツから噴出する光が白から少し赤みを帯びたような気がする。ちょっと解除ってちょっとの間解除してすぐ戻してるのか、器用にちょっとだけ魔力逃がす機構を抑えてるのかどっちなんだろう。噴射光の大きさは乱れてないので後者かな?


(さすがゆっくりしない正義の使者、決断も速すぎて怖い)

(しかし穴は確かに広がったぞ)

(時間が無い、こっちもゆっくりせずやるぞ)


「ティア様!穴広がったの確認しました!始めますー!!」

「はい!!」



準備は整った。…さあ、野球の時間だ。


「では悪魔の皆さん、今助けます。12回ストライクを当てて、ノックアウトを出してみせます!」


「あああーーー!!ルールが!!ルールが絶対違うううう!!!」


立ち位置を確認し、何かよく分からない事を叫ぶ一体目の悪魔を片手で持ち上げる。


一番ダメな失敗は凄く手前に落とす事。ある程度はティア様が防壁でフォローしてくれるが限度がある。


つまり、必要なのは、思い切った豪速球だ。


…やるぞ!



「奥義!空気投げーー!!」

「空気投げでも野球でも無ぁぁああいいぃぃ……!!!」


謎の悲鳴を上げながら高速でかっ飛ぶ悪魔。近くで拘束されている悪魔達が更にざわつき始める。


「ヒィィ!」「暴投だ!!」「上半身が流れて力が逃げている」


なぜか投げ方の問題を指摘する悪魔が居て参考になるが、暴投ではない。ほぼ直線の軌道だけ見れば穴を飛び越えて遠くまでふっ飛んでいきそうだが、キャッチャーが居るのだ。


「ぶっ!!?ぐえぇ!?」


ごしゃっという鈍い音を鳴らしながら不可視の防壁に激突した悪魔が軌道を変えられてぴったり地獄の門へと落ちていく。


ティア様の防壁は不可視なので見えていない悪魔達は分かりづらいだろうが、まず穴から瘴気が溢れないようティア様が防壁で蓋をしてあって、悪魔が飛んできたら蓋を開けて、更に斜め配置の数枚の防壁に悪魔を当てて穴に落ちるよう軌道を誘導するのだ。


「シャークさーん!一体目成功ですー!」

「やった!!」

「向こうにクラーケンさんが居て!ちょっとでも入ったら引っ張り上げてくれてるみたいですー!」


(なんて律儀な悪魔なんだ)

(助け方が雑なのも知ってるから仲間が心配だったんだな…)

(もはや作戦の重要協力者だな…素材にまでされてるし…)



よし、一体目は確認事項が多いので前後に時間を取ったが、ここからはすぐに連投だ。ハイドラさんが定期的に悲鳴を上げてるし術式の崩壊までの時間も怪しい。ペースを上げていくぞ。


「ではどんどん行きます、悪魔の皆さんももう覚悟を決めて下さい」

「う…うう…」「怖イ…」「見えない壁に叩きつけられてたぞ…」


「ティア様ー!連続で行きまーす!」

「はい!!一気に終わらせましょう!!」


再び投球準備を整え、今度は一気に終わらせるつもりで連投の覚悟を決める。力も、コントロールも維持したまま、ストライクでノックアウトだ!


「空気投げ!空気投げ!!空気投げー!!!」

「ぎゃあああ!!」「いやだああ!!」「足の位置が安定してない」



私が投げて、ティア様がキャッチ・アンド・リリースする。野球ではこれをピッチャーとキャッチャーと呼ぶらしい。そして、その関係はバッテリー。または夫婦などとも呼ぶそうだ。


夫婦と呼ぶそうだ。



分かるだろうか。つまり、これは!結婚式なのだ!!!



(!?)(うわ…)(なんで野球を気に入ったのかと思ったら…)


このまま!夫婦になって事件解決したという既成事実を作らせてもらう!だからこそ失敗してこの結婚式に余計な傷がつくことは絶対に許されない。



出来る限り速度とコントロールを維持できる範囲で連投する私。あっという間に6体目の悪魔までストライクし穴へと叩き込む。


しかし、良いペースというわけではない。もし可能だったら想定されている邪魔が入らない内に全て投げ込みたかったのだ。


だが、やはりそう上手くはいかない。こんな滅茶苦茶な方法でイベントを進めて異常が検知されない筈が無いのだから。


((((((上空!))))))

「シャークさん!来ました!!」

「はい!!」



ビシビシと何もない空間に割れるような音が鳴り、時空に亀裂が走る。補正装置。エラーを調べるゲーム時代の名残。そう、えっちな触手だ。

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