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エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
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死神が消えた日-5

 反撃をし続ける〈ガンスリンガー〉の6丁の銃によって目の前の天機は確実に数を減らしていく中、〈グングニル〉を操るジークは一人で操作する〈ABF〉の動きに困惑してた。

『全くな何ですかこの機体は、アモンは良く一人で動かせましたね』

「ジークさんあんまり気張らないでください。何事も落ちくことが重要です!」

『落ちつくといわれましても、まあやれるだけやります』

 そういうと、空のコックピットの中の照明が一斉に点灯し、システムがジークが操る事が出来るように書き換えられていく。

『ミユキさん、助言ありがとうございます。ようやく動けそうです』

 システムを書き換えられた〈グングニル〉は名のごとく装備したその長い槍を構えると、背中に装備されたスラスターの出力上げ、戦場を飛び始める。

「何してるの?」

『俺なりの‘‘一息ついた‘‘です』

 飛び上がった〈グングニル〉はその地面の土埃を舞い上がらせ無数の〈天機〉の視界を奪い去る。

 視界を奪われた〈天機〉は耳をつんざく金属音と共に放たれる銃声を聞き、あたりを獣のごとく見渡すも、すでにそこには〈ガンスリンガー〉と〈グングニル〉の姿はなくあったのは、仲間だったスクラップだけだっだ。

『まあ、こんな感じです』

「すごすぎね」

 残された天機が恐る恐る背後の気配に気が付き後ろを振り返るとそこには両手に握られたハンドガンを構える〈ガンスリンガー〉と、槍を構える〈グングニル〉の姿があった。

「で、これで最後だけど」

『任せます』

 背後に立つ〈ガンスリンガー〉は息を吐くように残された〈天機〉の頭を鈍い銃声と共に吹き飛ばした。

「片付いたわね」

『それがそうでもなさそうなんです』

 槍を地面へ突き刺した〈グングニル〉が指を指すと大急ぎで走ってくる〈オーディン〉の姿があった。

「トオルさん、どうしたんですか?」

「ジーク! とりあえず戻れ。ミユキ、建物の穴をふさぐぞ!」

 状況が呑み込めず立ち伏した〈グングニル〉は、慌てて走り寄ってきた〈オーディン〉の下半身へと戻っていく中、ミユキは疑問に思いトオルに慌てる理由を解いた。

「ミツキに何かあったんですか?」

「いや、ミツキにじゃあない。セカンドはその身もろとも爆発させるつもりだ」

「それって…」

 ミユキはその作戦の全貌を大かた理解した。

「自分が死んででも皆殺しにするつもりだったんだ」

 そう話したトオルは〈グングニル〉が〈オーディン〉が元の姿に戻ったことを確認すると、〈ガンスリンガー〉の腕を引きスクラップの山を走り抜けると、講堂に空いた大穴を覆い隠すようにその場で〈ABF〉の機能を停止させた。


 ミツキは宙に舞った〈死神〉の体を推スラスターと機体のひねりを生かし地面へ着地させると、腰につけていた短剣で、〈指揮官用天機〉の膝関節を切りつけると、不自然なほどたやすく切り落とされ〈指揮官用天機〉はバランスを崩し背中から倒れこむ。

「どういうことだ」

『私にも』

 ミツキが疑問に思っているとその後方から、以前の姿と変わらぬ姿になった〈オーディン〉が駆けつける。

「ミツキ、俺はいらなかったか?」

「…いいえ、あなたはここにいてくれたほうが助かるわ。トオルさん」

「どういうことだ?」

「こういうことよ」

 セカンドが乗る〈指揮官用天機〉の手には現在地点から大講堂までを吹き飛ばせるほど大きなグレネードが握られていた。

「トオル、ミユキたちにあの穴をふさぐように伝えてくれ」

「お前は?」

「何とかする」

 その言葉を聞くと急いで二機の元へと向かった。

「仲間思いだこと、さて、私がこのぶっ壊れた腕でピンを抜くのが先か、あなたがそれに負けるのが先か」

「どういうことだ?」

『ミツキ様足元です!』

 アモンの警告もむなしく、攻撃を仕掛けた〈死神〉は食屍鬼タイプの〈天機〉に全身を拘束させらえてしまった。

「さて、どうする?」

「こうするのさ」

 ミツキは〈天機〉の腕を何とか振りほどくと〈死神〉の胸部アーマーを引きはがし、その体にまとわりつく〈天機〉のエネルギーを吸収し始める。

『ミツキ様、これ以上は吸いきれません!』

 アモンが〈死神〉のエネルギーパラメータを確認すると、すでにその容量は限界を迎え、これ以上の吸収は〈死神〉の体を大型の爆弾に変えることすら容易ではなくなった。

 ミツキはアモンに見せられた機体状況を察知すると、何かを思い出したかのように〈死神〉の武装を切り替えるショートカットを表示させる。


「だったら使い切ればいい!」


 ミツキはその開いたショートカットに登録していたリミッター解除のスイッチを押すと〈死神〉は依然見せた悪魔と同じ姿へと姿を変えた。

「どうだ? これならいけるだろ」

『なるほど、いい考えです! これなら、吸いきれます!』

 アモンがそういうとミツキはグリップを再び握り直しまとわりつく〈天機〉をすべて吸収しつくした。



 追い打ちをかけるように地面から這い上がってきた〈天機〉をすべて吸収しつくした〈死神〉はそれ以前に受けたダメージが蓄積されていたため、関節の節々から煙を上がらせその場に膝から崩れ落ちる。

「終わりだリサ」

 姿を変え悪魔のような見た目になった〈死神〉は、目の前で倒れこむ〈指揮官用天機〉に向け今にも関節が崩れ落ちそうな腕で、その場に落ちていた〈ガンスリンガー〉のハンドガンを構える。

「私はリサじゃない! セカンドだ!」

「いいや君はリサであり人間だ」

 ミツキの言動に激高したセカンドは天機に備わっていたグレネードを手に取る。


「馬鹿にするな! 私は望んで天使になった二番目の存在、セカンドよ!」


 そのグレネードの内部構造をスキャンしたアモンはその内部に仕込まれていた火薬量に驚き急いでコックピット内にサイレンを響かせる。

『ミツキ様回避してください!』

「もう遅いわ!」


 すでに活動限界を迎えていたはずの〈指揮官用天機〉はその手に持っていた巨大なグレネードの引き金を抜き自らの犠牲すら問わずに衝撃波と共にそれを爆発させる。


 その衝撃波は大講堂の穴をふさぐように立っていた〈ガンスリンガー〉と〈オーディン〉の背中に装備されていたバックパックの燃料タンクを赤熱と共に爆発させ、塞ぎきれなかったその隙間から漏れ出した熱風によりザイゼンを取り押さえていたもの含めその場にいた負傷者は体中をやけどに見舞われた。


「トオルさん無事ですか!?」

「……なんとか、だが機体の燃料が漏れ出しやがった」

「これで食屍鬼タイプは一掃できましたけど……」

 二人の眼には足元でうずくまりやけどの跡を抑える職員の姿が多々映った。

「嘘……なんてことを!」

「クソ! アイツ許せねえ」

 トオルが〈ABF〉二機の隙間から爆発の現場を覗き見るとミツキの乗った〈死神〉はセカンドの放った一発の衝撃波によりいともたやすく宙を舞い背中から落下するのが見えた。

「ミツキ!」

 トオルは壁となり職員を守っていた〈オーディン〉のコックピット慌てて乗り込みその操縦桿を握るもセカンドの放ったグレネードによる衝撃波により、その燃料タンクが損傷してしまったため〈オーディン〉をいくら動かそうと操縦桿を押し出すもその体が動くことはなく、トオルが見つめるその先で〈死神〉は背中から地面へ叩きつけられる。

「ミツキ!」

 トオルは〈オーディン〉のコックピットをこじ開け〈死神〉へ乗るミツキの元へ駆けつける。

「ミツキ! ミツキ! 開けろ!」

 中から一向に返事はなくアモンのシステムすらダウンしているためそのコックピットが開くことはなく、トオルがこじ開けようと試みるもそのハッチは開かずおおよそ中から固定されている様

様子だった。

「クソ! なんで開かないんだ!」

「何をしたってそれは開かないわ」

 必死にハッチを開けようとするトオルの背後に横たわる〈天機〉のコックピットハッチが開き、中からバイザーの割れたセカンドが傷を抑えあざ笑っていた。

「貴様!」

 その姿を見るなりトオルはホルスターに入っていたハンドガンを構えるも、セカンドには抵抗するそぶりはない。

「……まあまあ、私はもうこんなで動けない、危害を加えるつもりはないわ」

「だとしてもだ、俺はこいつを下ろすつもりはない」

 天使殲滅策略本部職員の体中に広がる大やけどを目の当たりにしているトオルは、人道を忘れただ目の前の対象を殺すべく無慈悲にもその人差し指を引き金にかけると、背後からミユキが額から汗を流して駆け寄ってきた。

「待ってください!」

「ミユキ! なぜ来た」

「ここで彼女を殺してもなんの意味をなさないからです!」

「賢明な判断ねミユキ」

 ミユキは内に秘める感情を押し殺しトオルの構える手を下ろし、セカンドの顔を蛇のような目で鋭くにらむ。

「私を知った風な口を利かないで! いい? 今は人手がいるからあなたを生かしてる。でなかったら私があなたを撃つ!」

 ミユキの気迫に負けたセカンドはこの場ではだれにも勝てないことを、その場でいち早く察しミユキに抵抗することを諦めた。

「分かったわ、協力する」

「ミユキ、ちょっといいか」

 トオルはミユキを連れ〈死神〉の陰に隠れる。

「どういうことだ、なぜ撃たせない! 奴はカオルを傷つけた、ミツキを傷つけた! そんなあいつを生かす価値なんてあるか?」

「彼女は利用できます。ミツキを中から出すにはそれしかないんです! 今生かすべきはあの女よりもミツキです!」

 ミユキは上司であるトオルに立場など関係なくその眼光を向けると、トオルはひねくれたように背中を向け、ミユキに普段みせることのない冷たい視線を送った。

「……好きにしろ、どうなっても俺は知らないからな?」

 トオルはカオルをどつき再び物陰に隠れ、ミユキは再び〈死神〉の足元へ歩み寄る。

「何か方法があるの?」

「あるわ。この機体はまだ動く、私が動かせばその扉をこじ開けられるわ。どう? 私に賭ける?」

「……分かった、やって」

 そういわれるとセカンドはそのコックピットに乗り込み、傷ついた〈天機〉の大きな腕を動かし〈死神〉のコックピットを開け、トオルとミユキが慌てて中を見覗き込む。

 するとそこにいたミツキは腕を大やけどをし、腹部には鉄の破片が何本も刺さっている光景が目に入った。

「ミツキ! ミツキ!」

 ミユキはミツキを起こそうと体を揺らすも反応はなく、腹部に刺さった鉄の破片が重みで奥深くへ刺さっていく一方なことに気が付く。

「うそ……どうしたら!」

 そのやるせない気持ちをコックピットの壁に打ち付けたミユキを見て、トオルはこれがカオルだったらと思い、ミユキに対する態度を改めた。

「待ってろ、今すぐ衛生兵を呼んでくる」

 我に返ったトオルは慌てて建物内へ戻っていくと、腕が崩れ落ちた〈天機〉に乗っていたセカンドがコックピットハッチを開けてミツキの姿を見下す。


「ふふ、全くいい気味。私のこと早く殺さないからこうなるのよ」


「リサ!」

 ミユキは憤慨しセカンドの姿を見に行くと、セカンド自身の起こした爆風により焼け爛れた傷が体中を蝕み、その光景をあざ笑いつつコックピット内で気を失っていた。



 コックピットハッチから救助されたミツキは、その後賢明な処置の末一命をとりとめることができたが、一向に目を覚ますことはなく、ミユキは季節が移り変わることも知らずに寄り添っていた。

 

 季節が秋へと移り数週間後、生命維持装置につながれたミツキは涼しい秋風にさらされその目を静かに開く。

「う……」

 見知らぬ天上に、耳を通り過ぎる心電図の音、何かを考えるだけで痛む頭にミツキはその喉を震わせると、その声はミユキへ届き、ベッドで寝ていたその目を覚まさせる。

 寝ぼけ眼をこするミユキは、ベッドに座り込むミツキの姿を見るとその意識を覚醒させ、その目には涙を浮かべた。

「……ミツキ!」

 涙を浮かべ、寄り添うように見守っていたミユキはこらえきれずその体を揺らすと、ミツキの表情は徐々に明るくなり弱弱しい力で体を揺らすミユキの顔をまじまじと見つめていた。


「どうしたの?」

 不審に思ったミユキがそう尋ねると、うまく動かない喉抑えながら発せられたミツキのその言葉を聞き絶句してしまう。


「君は一体誰だ?」


 死神は、ミツキの中から奇麗に消え去っていた。


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