死神が消えた日-4
トオルとミユキは転移からの追跡をかわし大講堂跡前へたどり着くとミツキは荒れ狂う大講堂跡の前でセカンドがこれ以上被害を広げないように死神の活動限界ギリギリまでその天機の足止めをしていた。
「なかなかやるわね。これならどう?」
セカンド操る指揮官用天機はその拳で何度も死神の体を右へ左へ殴り続ける。
ボクサーのように殴り続ける指揮官用天機から繰り出される攻撃は同時に摩擦熱を起こし、その拳が徐々に赤熱していく。
死神はその攻撃を何度もガードするが、死神の装甲をも破る威力で繰り出されミツキはコックピット内のいたるところに頭を強打した。
『ミツキ様! これ以上攻撃を受ければあなたが持ちません!』
「いいんだアモン、このまま耐えるぞ」
ミツキはそういうと死神にさらに固い防御態勢を取らせ、セカンドの攻撃を防ぎ続ける。
死神のコックピット内に流れるサイレンはますます増え、機体の破損状況が表示されたパネルにはその機体の関節以外の各部がすべて赤くなった。
『ミツキ様もう限界です!』
「その通りだ、だがここからだ!」
ミツキはその表示すべてが赤くなったことを確認すると、死神は自分の燃料パイプを引きちぎり燃料を天機へ振りかける。
『何をしてるんですか! そんなことをしたらこの機体はもう数分と持ちません!』
「まあ見てろ」
ミツキがそういうと死神の拳と天機の拳をこすらせるように死神を操縦する。
拳と拳がこすれあうとその隙間からはいくつもの火花が散る。その火花は死神が振りまいた燃料に引火し、天機の体は煉獄の炎に包まれた。
『なんて無茶な』
「無茶でもやるのさ、機会をうかがうのは得意だ。だろ?」
『そうですね』
天機の体すべてに炎が回るもその天機の動きは止まらず、地面に手をつき何度も振動させ地ならしを起こした。
「何をしているんだ?」
ミツキは疑問に思い死神のコックピットを開き自分の眼でその地面を見ると、地ならしを起こすその地点から徐々に亀裂が入りその中から大きな腕が伸びる。
『ミツキ様危険です、避けてください!』
アモンの警告を聞き、とっさにその場から後退すると地中から無数の食屍鬼タイプの天機が湧いて出る。
その数はさらに増えていきすでに死神を取り囲むほどその数が増えていた。
「なんてことだ。アモン数は?」
『ざっと数えて、101体』
「全くなんて数で来やがった」
「全くその通りだな」
「私たちが来なかったらどうするつもりだったんですかね?」
死神の両肩に二体のABFの手がかかる。
「雑魚は任せてお前はあいつを、ミユキ、準備はいいな?」
「勿論」
ガンスリンガーは反撃ののろしを上げるかのごとく目の前の天機を一体頭から撃ちぬき、死神は今まで被っていたそのローブをはぎ取り本来の姿をあらわにする。
「ミツキ、それって」
死神の本来の姿はあまりにも目の前の天機と酷似し、ちぎれたはずの燃料パイプは脈打ちすでに結合していた。
「これが終わったら話す」
「あっそ」
三機が見つめる先にいる指揮官用天機は纏わりついていたその炎を消し去り、合図を出すように振り上げた手を下ろす。
「…やりなさい」
周囲を囲むように群がる無数の天機はその合図を受けると一斉に三機のABF目掛けて荒ぶる獣のごとく襲い掛かり、合図を出した指揮官用天機は死神を目掛け手に持っていたアサルトライフルを構える。
「…死ね」
セカンドは照準を合わせ銃弾を死神へ打ち込む。
「ミツキ!」
ミユキはその銃弾が死神へ着弾しかけた瞬間。残像と共にその姿が掻き消えた。
「心配するな、あいつはそう軟じゃない」
オーディンが指を指した方角にはすでに指揮官用天機の首を絞める死神の姿があった。
「終わりだ」
「死ぬ前に一つだけ聞いてもいいかしら?」
「なんだ?」
「どうしてとっくに活動限界を迎えたあなたが動けているの?」
「それは簡単だ」
ミツキは死神の左足の装甲を形成している鉄板を無理やり剥がすと、そこには食屍鬼タイプの天機が数体同化していた。
「こいつは元々天機、それもお前らの乗っている物よりももっと昔にできたものだ」
「ふふ、なるほど、そういうことだったのね」
セカンドは怪しくコックピット内でほほ笑んだ。
「何がおかしい?」
「いやね、メカは頭良くてもあなたは馬鹿だって知れてよくてね」
『ミツキ様、どうやらこれは時間稼ぎだったようです』
アモンの忠告もむなしくミツキが気が付くころには死神はすでに宙を舞っていた。
「ミツキ!」
トオルはその場から抜け出し、ミツキの元へ駆けつけようとするも目の前には無数の天機、同様にミユキもその対処に追われている。
打つ手がなくなり頭を抱えたトオルはジークの持っていたモリタからの手紙を思い出す。
「そうだ、ジーク、5番のスロットをオンにしてくれ」
『いいのですか?』
「今はそれしかない」
『了解!』
トオルに言われジークはオーディンの機能をオンにすると、その体が真ん中から二つに割れた。
「おいおい、ただのぼろい機能なのか!? なあ、ジーク! ジーク!」
トオルが何度呼び掛けても反応の無いジーク、不審に思ったトオルは後方カメラを確認するとそこには分離したはずの下半身が直立しているのが見えた。
『どうやら、これはすごい機能のようです』
ジークがそういうと直立したそれは形を変え、再び振り向くころには以前トオルが乗っていたオーディン酷似した姿になっていた。
「ジーク、お前なのか?」
『どうやらその様です』
「戦えるのか?」
『もちろん、ですが』
目の前のオーディンは手を広げトオルに向って何かをアピールし始める。
「なんだ?」
『武器がない』
「そんなことか、ならこいつを使えジーク」
トオルは背中にマウントしていた槍を一本ジークに分け与える。
「頼んだぞ、グングニル」
ジークをそう呼びトオルはミツキの元へ駆けつけた。
*
トオルがミツキを援護しにその場からいなくなった傍らミユキはトオルがいなくなったことによりトオルの引き受けていた天機の相手をしていた。
「全く、トオルさんこんなに押し付けないでよ!」
『まあまあ、姫、落ち着いてください。それに弾はまだありますし、落ち着いて撃てば確実に勝てます』
ミユキはそういわれ一呼吸置きハンドガンを再び構えると、残弾数のカウントはまだあるにもかかわらず撃つことができなくなった。
不審に思ったミユキは弾詰まりが原因と考え銃口を除くも弾は詰まっていなかった。
「なんでなの?」
『姫、今はそんなこと考えないでください!』
ロビンが呼びかけるも遅くガンスリンガーの目の前には一斉に飛び掛かってきた天機がその拳を振りかざしていた。
一斉に飛び掛かった天機を目の当たりにし、自分の運命を悟りミユキは覚悟を決めると、あたりにいた天機がグングニルの放った槍により一掃される。
『大丈夫ですか!?』
「その声、ジークね!」
『そうです、ミユキさんも早く5番のスロットをオンにしてください、そうしなければ負けます!』
「だけどこれはピンチになった時にって。整備長が!」
『姫、今がそのピンチです』
「ロビンまで、分かったわ、やればいいんでしょやれば」
ミユキはふて腐れながらもコックピット横にあるダイヤルを5番に回す。
「これで何になるってのよ」
『姫、弾数が合わない理由がわかりました』
ロビンはコックピット内のモニターをフロントパネルの前に移動させると、腕部と脚部に異様な形状のパーツが表示され、そこにはロビンの計算とは合わない弾数の弾が込められていた。
「それでこれは?」
『まあ見ててください』
そういうとガンスリンガーの腕と足からは合計で4個の銃口が露わになる。
「これ全部打てるの?」
『もちろん。すべてオンラインです』
ガンスリンガーはそのすべての銃口を天機へ向ける。
「さあ、反撃よ」




