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エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
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死神が消えた日-2

 モリタがカオルを医務室へ運びに大講堂の扉から出ると、ミサキの目線の先には瓦礫を押しのけ自力で這い上がるトオルの姿があった。

 トオルは瓦礫に交じって巻き上がった埃に目と喉を犯されつつも崩壊した大講堂の壁を眺めている。

「ゴホッゴホッ。なんだ?」

 トオルが見つめた先には、以前までとは違いどこか〈オーディン〉に似た外観の〈天機〉が左腕に構えた銃火器から煙を上げ、その巨体を威圧的に見せつけている。

 見た目こそ〈オーディン〉に酷似はしているものの、〈オーディン〉が二つ目に対し天機は一つ目、腕や足のフレームすら〈ABF〉の機械感はなくどこか動物的な印象となっているなどと、天機とオーディンの差は図らずともところどころに現れているためミサキから見てもそれは全くの別物だということが十二分に理解できた。

「何者だ!」

 トオルがふらつく足を地面へ叩きつけ、立ちなおすとその〈天機〉のコックピットハッチが白く濁った空気と共に静かに開く。


「皆さん久しぶり」


 コックピットハッチが開き切ると、そこには〈天機〉の生物的なコックピットを背後に天使用のパイロットスーツを着たセカンドの姿が現れる。

「お前!」

 トオルが鬼のような形相でその姿を睨みつけると、セカンドはヘルメットのバイザーを上げ、トオルの鋭い眼光すらものともせず薄ら笑いを浮かべていた。

「やだな、トオル団長。そんな目を向けないでくださいよ」

「何をしたのか分かってるのか!」

「さあ?」

 セカンドは嘲笑を浮かべたままトオルの左後方を撫でるように見て回ると、腕を抑え片目のつぶれたミサキの姿があり、セカンドは獲物を見つけたように目を光らせた。

「お姉ちゃん、もう死にそうじゃん」

 ミサキは妹であるセカンドの変わり果てた姿に驚くこともなく、鼻で笑う余裕を見せる。

「ふっ……あなたこそ、もう人間の見た目じゃないわね」

「何笑ってるのよ、負け惜しみ?」

 トオルは変わり果てたセカンドの姿を見ると、自制心を押し殺し静かに口を開いた。

「リサ、お前本当に天使の側についたんだな」

 セカンドはトオルの呼びかけに反応するも振り返ることすらせず声のみで反応した。

「まあね、このほうが私にとっては楽だから。何ってったって人間側についたってただの負け戦、そんなお遊戯に付き合ってる時間すら惜しいわで、私は勝つことにしか興味ないの」

 

 セカンドが嘲笑を浮かべているとトオルの背後に人二人分の大きさの瓦礫の山が押しのけられ、そこからミツキがサトルを抱えるように這い上がってくる。

「……落ちるところまで落ちやがって」

「あら? あなたもまだ生きてたの」

「……生憎な」

 ミツキが完全に立ち上がると抱えられていたサトルが少しずつではあるが目を覚まし始めていた。

「うう……」

「目が覚めたか」

「軍人……父さんは?」

 サトルがそういいあたりを見回すと人が立ったまま瓦礫に固められているように瓦礫が積み上げあれていた。

 彼は支えられているミツキの手を振りほどきその山へ近づき触れるとその瓦礫は中腹から崩れていき中からは埃にまみれたザイゼンが傷一つなく現れるもやはり意識はない。

「父さん! 父さん!」

 サトルはザイゼンの体にしがみつくがやはり体は冷え切っておりその目はすでにこの世に残っているものの眼ではなかった。

「やめるんだ」

 ミツキはサトルの体を無理やり剥がそうと試みるがその決意が現れているのか固く動くことはなく、剥がすことはできなかった。

「父さん……」

 サトルがザイゼンの胸に耳を当てるとその鼓動は急速に唸りを上げ始める。

 その鼓動はさらに早くなりザイゼンの体に体温が戻るとセカンドはその視線をザイゼンへと移し、その表情を歪ませた。

「実験は成功だったみたいね、ふふ。さあ来なさい実験体番号100」

 セカンドはその手をザイゼンへと差し出す。

「今すぐそこから離れろ!」

 サトルが振り向く暇もなくザイゼンはその目に光を宿しその腕をサトルの肩へ回す。

「父さ……」


 サトルが再び父親を呼んだその直後、サトルの体は宙を舞っていた。


「小僧!」

 トオルは瞬時に走り出しサトルの体を受け止めるも、その刹那背中から滑り落ちたため、制服の背中はずり向け血がにじんでいる。

「ナイスキャッチ」

「うっせ、小僧」

 その一言は癇に障ったのかサトルはトオルの襟をつかむ。

「僕は小僧じゃない、ザイゼンサトルだ」

 トオルは鼻で笑い、足元を見るとそこには下敷きになったミユキがいた。

「すまん、ミユキ」

 ミユキは意識を取り戻しその場から抜け出そうとするも、無数の瓦礫に押しつぶされ足掻いてみるも一向に抜け出すことはできない。

「トオルさん、話してる暇があったら助けてくれません?」

「す、すまん!」

 トオルは急いでその場から立ち退きサトルと共にミユキの上に圧し掛かった瓦礫を除ける。 

「行くぞ、サトル」

「はい!」

「1……2……3……」

 トオルとサトルは息を合わせその瓦礫を押しのけるとミユキは這いながらその場から抜け出すことができた。

 ミユキは右足を長く押しつぶされていたからか、その足を引きずりその場で立ち上がるとそこには天機のコックピットハッチに立っているセカンド、あたりには無数の負傷者、そして意識を取り戻したザイゼン。

 彼女はその現状に理解が及ばず頭を抱えると、セカンドはないがしろにされ話が進むことに逆上し、ミユキの足元へ発砲した。

「あなた達ね、私のこと忘れないでくれる?」

「忘れてなんかないさ」

 ミツキがそういうと、大講堂の崩壊した壁をふさぐように立っていた天機が作り出していた光の漏れが完全に影へと移り変わった。

「何!?」

 セカンドは慌ててコックピットへ乗り込み、頭部に内蔵された後部カメラでその正体を確認するとそこには、紫色のブレードアンテナを太陽に当て光らせたぼろ布を被ったABFが膝をついていた。

「おい。ミツキ、あれって!?」

 トオルはその光景を目の当たりにしミツキに問うもミツキは返事を返すことはなく、手に持っていた携帯電話を耳に当てる。

「いいタイミングだアモン」

『あなたがそういったのでしょう』

「ふっ、まあな。さあ、やれ」

『仰せのままに』

 ミツキはそのまま通話を切ると、アモンは待機させていた死神を立ち上がらせ、その拳を硬く握りセカンドの乗る天機の頭部を殴り飛ばした。

『私にできるのはここまでです』

「十分だ」

 ミツキはそういうとその場から一直線に死神が待機しているその場へ走り出し、アモンはそれに答えるかのように死神のコックピットハッチを展開させた。

 しかし、セカンドはそれを良しとせず天機の腕をミツキの元へ伸ばしミツキの進行を何とか食いとめようとする。

しかし、その行動をいち早く察したアモンは死神と照準をその腕へと移し死神の頭部バルカンで腕を弾き飛ばす。

 ミツキは走り出した足を止めることはなくその上部から降り注ぐ巨大な弾丸を避けながらも死神の元まで走り続けた。

「もう、しつこいわね! 実験体番号100その男を捕まえなさい!」

 その言葉に反応したザイゼンは、その巨体を荒ぶる獣のようにミツキめがけて走らせ始める。

「クソ! 早すぎるだろ!」

 ザイゼンの腕がミツキの首元へ伸びたその時、急にザイゼンの腕を何者かがつかみその動きが止められた。

「行け! ミツキ!」

 ミツキが後ろを振り返るとそこには頭から血を流しながらもザイゼンの腕を掴み離そうとしないオオツカの姿があり、ミツキは思わず足を止める。

「何をしているミツキ! 走り続けろ! これは命令だ!」

「恩に着る」

 ザイゼンの動きを止めているオオツカは今にも倒れんばかりに血を流し、動きを制御している腕すらもはや限界に近かった。

「こんなところで!」

 オオツカがその腕を離しかけると、その背後から無数の腕がオオツカのその腕を支えるかのように伸び、ザイゼンの腕もろとも鷲掴みにした。

「全く、司令ばかり無理しないでください」

「ここにはあなた以外にも動ける人間がいます。司令、早く命令を!」

 兵士たちがザイゼンの体を抑えつけたことを確認するとオオツカはその押さえていた手を離した。

「ここにいる兵士もとい職員に告ぐ。目の前の天使を殲滅しろ」


 その一言を受け兵士たちは奮起し、トオルとミユキは格納庫へと走り出した。


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