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エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
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戦争と国家ー4

 各国の支援金が募る前の天使殲滅策略本部は内閣府直属、以前の自衛隊に次ぐ組織であった。

 ABFの基礎となった天機が攻め入る中、そのサンプルが手に入ったことにより試作機が作成されるとその技術を各国に買われ、日本は自衛隊から何人もの兵士を抜粋し、後に天使殲滅策略本部となる組織の前身を結成。

 その初期メンバーとして選ばれた一人が、現在の日本支部総司令のオオツカであった。

 当時のオオツカは一般兵でありながらその航空機の総技術は群を抜いており、ほかの同期に大きく差をつけていた。

 しかし、そのオオツカの功績をよく思わない者が数多く存在した。

 その中の一人が、オオツカよりも年上でありながら手柄を上げられず、階級をも下回っていたザイゼンカネミツであった。

 ザイゼンはその境遇からオオツカをひどく恨んでおり復讐の的としてその背中を追い続け、現在の国防長官という席に定着することとなる。



「お前ら何をしている」

 各国との防衛会議を終え、天使殲滅策略本部へと帰還したオオツカはその入り口に立っていた。

「なんだ貴様、我がこいつら低能な軍人に身の程というものを教えてやろうと…」

 ザイゼンが振り返るとそこには以前の同僚であり復讐の的であるオオツカの姿、ザイゼンはその姿を見るなり背筋を凍らせた。

「オオツカ……」

「これはこれは、ザイゼン国防長官でしたか。部下が失礼を犯したようで」

「貴様も我を愚弄するつもりか」

 オオツカの下手に出るその態度を見るなりザイゼンは再びその態度を豹変させ逆上した。

「いえいえ、そんなつもりは。カオル、息子さんを連れて格納庫にでも見学に行ってこい」

「しかし」

「いいかこれは命令だ」

 カオルはザイゼンへ頭を下げるために離したその手を再びつなぎザイゼンの息子を格納庫へと見学へ向かった。

「では、ザイゼン国防大臣にはぜひともその政治論をお聞かせ願いたいのですが、私たちに聞かせるのは勿体無い」

 その話を聞き何かを思いついたかのようにトオルが怪しくニヤついた。

「だったら大講堂で館内放送をつなぎつつ手の空いている職員はその場に来て講義をしていただくというのはどうでしょう。俺たち、脳の無い軍人に」

「仕方ない。いいだろう」

「ありがとうございますザイゼン国防長官殿」

 そういうとトオルとミサキは荷物を置きに応接室へとザイゼンと共に向かう。


「ミツキ」

「何?」

「ザイゼンのことだが」

「知ってる。あいつもそうなんでしょ?」

「ああ、同期として俺はあいつを救いたい」

 その問いかけに対する返答はあまりにも早すぎた。


「俺にはできない」


 真剣な願いにもかかわらずミツキは淡々とした態度を示しその場を後にした。

 取り残されたオオツカはその拳を握り直しその場に立ち伏した。



 カオルがザイゼンの息子を連れてその長い廊下を歩き続けると、その息子が急にその口を開き始めた。

「さっきはごめんなさい。軍人のお姉さん」

 さっきとは違う口調に困惑しその足を止めかける。

「足は止めずに、振り返りもしないで」

「どういうこと?」

「その角を曲がって、そこで話す」

 カオルは言われるがままに手前の十字路を左へと曲がった。

「で、話って?」

「そうだな、まずは自己紹介から。僕はザイゼンサトル、12歳、ザイゼンカネミツの息子だ。母は父に殺された」

 それは自己紹介と呼ぶにはあまりにも重すぎる内容だった。

「母親が殺されたってどういうことよ!?」

 カオルは思わず声のボリュームを上げてしまう。

「しー! まあ聞いて。父さんの様子がおかしくなったのは4年前のこと、ちょうど僕が5歳のころ父さんはまだ軍人としてここに所属していたんだ、その時の父さんはまだやさしい人間だった。僕や母を愛してくれたし、その行動に信念があった。しかしその1年後父さんは変わってしまった」

「何があったの?」

 カオルがそう聞くと、通路の先からザイゼンとトオルの足音が聞こえてきた。

「父さんに何があったかは分からない。ここからは憶測だけど父さんの記憶はそこで止まって性格は凶暴になった。そして見境もなく母を殺し僕をいまだに5歳の子供だと思ってる」


「どういうこと?」


「僕にだってわからない、ただわかるのは父さんはすでに人間じゃない」

 カオルはすでに人間じゃないというサトルその言葉は以前にも同じニュアンスの言葉を聞いていた。

「天使ね」

「その通り、これから僕は父さんにカマをかける。もしかするとあなた方に危険が及ぶかもしれないけど協力してくれる?」

「勿論」

「ありがとう、父さんが近づいてきてる早くそこの応接室に」

「最後に一ついい?」

 カオルはどうしても気になっていたことを聞いた。

「何?」

「そのすごい汗はどうしたの?」

「生まれつきだ」

 それを聞くとカオルとサトルは血相を変え応接室へと足を急いだ。



 ザイゼンとトオルが応接室へたどり着くとそこには施設内探検に言ったはずのカオルとザイゼンの息子がすでにそこにいた。

「何をしてるんだカオル」

「お兄様、まあ、色々あったのよ」

 と、そう語るカオルの背後にはスマホでゲームをするサトルの姿があった。

「パパ!」

「坊や、楽しかったか?」

「いいや、全然。暑いし臭いし汚いし。もう最悪だよ、こんなんだったらここなんか来ないで家でゲームしてたほうがましだったよ」

 その一言を聞いたザイゼンの眼の色が変わる。

「そうか退屈だったか、貴様ら我の息子が退屈するような真似をしてくれたのか。本当であればここで処分してもいいんだが今回は見逃してやろう。それに今はほかのことで腹がったっている」

 ザイゼンが経っていたその地点はすでに水たまりができるほどの汗でぬれきっていた。

「全く、ここはクーラーすらつけないのか。脱水症状で死ねと?」

 そういいザイゼンは今までとは違い胸ぐらを掴むのではなくとうとうミサキの首を鷲掴みにした。

 ミサキの首をつかむその腕力は人間のそれとはあまりにも差があり、ミサキの呼吸は刻々と薄れていく。

「い、いえ、そういうわけでは」

 ミサキはその薄れゆく意識の中必死の思いで壁に掛けられたエアコンのリモコンを手に取りクーラーを起動させる。

「分かればいい」

 ミサキの首を絞めていたその手が振り払われると、ミサキはその呼吸を整えることができずに軽いか呼吸状態へと陥っていた。

「ミサ姉!」

「ゴホッゴホッ!」

 ミサキが呼吸を整える手助けをするトオルは目の前に立つザイゼンへ再び軽蔑の念を感じその顔を睨みつける。

「またその目か。貴様ら軍人は言葉のボキャブラリーが無いんだな、だからそうやって睨みつける。やはり貴様らはただの猿、いや、猿以下だな」

 トオルの睨みつける目をザイゼンはあざ笑うかのように見つめ返す。その目の瞳孔は少しではあるが開き始めていた。

「お前、その目!?」

「見るな!」

 ザイゼンはその目を見られたことを察知すると慌てて目を隠し後退する。

 その後天使殲滅策略本部職員が講堂の準備が整い呼びかけに来るまで背後にあるソファーに腰を掛け何人にもその目を見せることはなく、沈黙を守り続けていた。


「ザイゼン国防長官、行動の準備が整いました。移動お願いします」

「ああ、今行く」

 そういうとザイゼンはトオル、ミサキと共に行動へと足を運び始める。

「カオル、頼んだぞ」

「任せて」

 三人がいなくなり応接室には二人だけが残った。


「見ただろ、あれが真実なんだ」

 カオルは理解をしたくはなかったが。自分の目の前で起きたその現実を理解せざるを得なかった。


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