表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
21/33

戦争と国家ー3

 現在資材不足や資金不足などと天使殲滅策略本部は未だかつてないほどの飢饉にさいなまれており、勿論のこと碌な食べ物もなければクーラーなんて贅沢な代物つけられる電力すらも惜しいほどだった。

 国家そのものが発展していく中、国民からの電力要求は日に日に増して行き、それに反比例するかの如く国の電力需給率が低下傾向に陥った。

 それを打破するため、基自分たちが楽をしたいがために天使殲滅策略本部への電力需給を遮断、もともと回していた電力はすべて国民。それも上流階級の人間へと回された。

 天使殲滅策略本部は、有無を言わさず電力を遮断されたためいたしかたなく風力、火力、太陽光と自家発電を行い今の今までしのいできた。しかし、この猛暑と資源不足により、電力の供給源は風力と太陽光のみになってしまい、なおかつその電力は基地の重要施設、ABFへと回ったために兵士らに回る電力は極限までカットされていた。



 基地内へと入っていったザイゼン親子と先頭に立ち案内人として活躍するミサキ、その後ろで荷物持ちをさせられるミシマ兄妹と何もしていないミツキとはたから見るといったいどんな状況か理解できない関係となっていた。

「全く、ここはクーラーも聞いてないのか」

「申し訳ありません、只今電力を重要機関へ回しているためクーラーは切らせていただいています」

 冷静に説明をする傍らあきれた目で見つめるトオルは聞こえるか聞こえないか程の小声で「痩せればいいだろ」とぼやく。

「何かね?」

 トオルは聞こえているとは思っていなかったため内心焦り足を止めると、よそ見をしていたミツキが背中に当たってしまった。

「痛っ」

「あ、すまんミツキ」

「何考えてたの?」

「いや、ここでは言えない」

 ミツキは内心愚直なトオルが何を考えているのかは容易に想像できたためその後は何も聞かずにトオルの前を歩き出す。


「ねえ、お姉さん」

「なあに?」

ザイゼンの息子はいまだにカオルの手を握り横並びで歩いていた。

 その目は正直なのか、はてまた単純なのか下心が見え見えであり常に目線はカオルの上半身から下半身へと嘗め回すように行き来している。

 しかし、カオルは軍の命運を握らされているのと同じものを握っており、目の前にはザイゼンの姿。何も言い返すことはできなかった。

「お姉さんって彼氏いるの?」

「んー、いないかな」

「そうなんだ。だったら僕が彼氏になってあげるよ」

「あはは」

 カオルは笑ってごまかすも内心この子供のどこにそんな自信がいるのか信じられずにいた。

 それもそのはず、この子供の人相は贅肉で埋もれており、父親と同じく体系もふてぶてとしていた、その見た目は世間から見ても決してかわいいとは言われないようなものだった。

「何? 嫌なの?」

「そういうわけでは……」

「この上流階級の僕のいったい何が気に食わない!」

 カオルが返答を渋るとその子供は急に逆上しつないでいた手を振りほどく。その声は目の前にいるザイゼンに届いておりその内容を聴いたザイゼンはその足を止め静かに口を開く。

「どうしたんだい坊や」

「パパ、聞いてよこの女軍人、僕が折角彼氏になってやるって言ったのに断りやがったんだよ!」

「なんだと? おい、そこの女!」

 ザイゼンはそのことを聞くと背を向けたまま急に怒鳴り散らすと、後ろを振り返りカオルの胸ぐらをつかみ宙に浮かせた。

―なんなのこのデブ、いったいどこにこんな力が。

「俺の息子のどこが気に食わないんだ!」

「う……ぐ……」

「貴様上流階級の私たちに逆らいやがって、この軍人風情が。貴様などここでなぶり殺しにしてくれる」

 そういうとザイゼンはカオルの顔面に向けて拳を振りかぶる。

 その拳がカオルの顔面に届きそうになった刹那、カオルの後ろからトオルの声が聞こえ、ザイゼンの手がすんでのところで止まる。


「おいおい、ちょっと横暴じゃあないですかね」


 やはりそのことは兄であるトオルが見過ごすわけもなく、両手に荷物を抱えたままザイゼンの目の前に立ちふさがった。

「なんだね荷物持ち、貴様も俺に逆らうつもりか?」

「お兄様、下がって」

「だが!」

「いいの。お願い……」

 トオルはカオルの眼を見ると、その目は覚悟を決めた目をしていた。

「降ろしてください…」

「妙に素直ではないか」

 ザイゼンは意外な反応を見せたカオルに少々驚きすんなりとその手を放してしまう。

「で、何をしてくれるんだ?」

 ザイゼンがその冷たい視線をカオルに向けると、カオルはゆっくりとその膝を地面につける。

「おい、何をするつもりだカオル!」

 あまりの事態にトオルはその状況が飲めずにいる。

 そんなトオルの傍らカオルはついにザイゼンの息子に頭を下げる直前まで来ていた。

「ほう、頭を下げるのか」

 トオルが困惑している中とうとう下げていたカオルの頭は地面へと着いてしまう。


「誠に申し訳ございませんでした」


 カオルは深々と土下座をしその場で謝罪すると、謝罪を受けているはずのザイゼン当の本人はその姿を見下し、不意に噴出す。


「何がおかしい」

「いやはや、さすが軍人脳みそまで筋肉でできてるのか? 謝って許されると思ったら大間違いだ、貴様は軍人風情で我々に盾ついたのだぞ。それが謝罪で許されると思うなよ!」

「あなたいい加減に……」

「何かね?」

 ミサキが止めに入ろうとするもザイゼンの蛇のごとく鋭い目線がミサキを睨みつけるも、ミサキはその何人も逆らえないほど強烈な眼光に委縮してしまい、逆らうことができなかった。

 

 その間も頭を下げ続けるカオルを見かねたトオルはその持っていた荷物をその場に投げ捨てカオルのそばに寄り添った。

「おいやめろ、カオル頭なんて下げるんじゃない!」

 トオルは必死にカオルの頭を起こそうとするもカオルの意志と同じくその体は凝固なものとなっていた。

「止めるな、そこの女軍人がやりたくてやっていることだ」

「貴様!」

 トオルはザイゼンのその言葉を受けて憤怒した。

 ミツキやミサキが止めようと手を伸ばすもむなしく、トオルはザイゼンの胸ぐらを掴み持ち上げていた。

「やめなさいトオル!」

「ミサ姉は黙ってろ! 生憎俺はこんなクズ野郎を野放しにしているほどできた人間じゃないんでね!」

 そういうとトオルはその拳をザイゼンへ向ける。

「いいのか、そんなことをして」

「何がだ」

「貴様ら軍人は天使と戦うための資金を私のポケットマネーから出されていることを理解しているのかね」

「それが何だってんだ」

 一度緩めた拳を再び構えるとそれはミツキに抑え込まれた。

「何すんだ」

「落ち着つけトオル」

 トオルはミツキのその手を振りほどこうとするも、ミツキのその体のどこにあるのか分からないほどの力で抑え込まれビクともしなかった。

「いいぞ、そこの生意気な軍人そのままそやつを抑えていろ。我が貴様ら軍人の足りない脳みそに我々に逆らってはいけないと叩き込んでやる」

「なんだと?」

 トオルの怒りはとどまることを知らず胸ぐらを掴みなおすもその手はミサキに抑え込まれる。

「ミサ姉まで」

「いいからここは押さえて」

 ミサキの一言によりトオルの怒りは一時的に収まりその場にいたザイゼンの息子すらその場に口をはさめないほどの静寂へと移り変わった。


「トオルもカオルもいったん落ちつけ」

「ミツキ。お前はあくまでもこいつの味方なのか?」

 ミツキの立ち振る舞いはトオルやカオルの眼から見るとザイゼンを擁護するようにしか捉えることができないほどであり、トオルはそのことに関しても許すことができなかった。

「いいや違う」

「じゃあ、こっちの味方なの?」

 今まで頭を下げていたカオルがスッと頭を上げその額を赤く染めミツキの眼を見つめる。

 しかし、ミツキの目線には何ら迷いなど映し出されてはいなかった。

「それも違う」

「だったら一体どっちの味方なんだよ!」

「俺は……」


 ミツキが続きを話そうとすると後方からドスの効いた低い声が聞こえた。


「お前ら何をしている」

 そこにはその場の全員を睨みつけるオオツカの姿があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ