表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
17/33

逃走の裏に

 ミツキによりサエジマリサコと呼ばれたリサは困惑の表情を浮かべていた。


「いったい何のことですか?」

「しらばっくれても無駄だ。アテナ!」

 ミツキはリサを追い詰めるかのように声を荒げると、カオルのABであるアテナの名前を叫んだ。


<カランッ>


 リサの制服の背中から道化師の仮面がすり落ちた。


 その場にいた全職員、全隊員も目線がリサへと向けられる。

「な、なによこれ」

「それはお前の正体だ」

「何を言っているのか。本当に」

 リサは慌てて床に落ちた仮面を拾い上げると、その面はどこか様子がおかしかった。


「嘘、このお面あの時欠けたはずじゃ」

 リサは恐る恐る仮面を裏返すとそこには怪しげに光る青色の眼がリサを見つめていた。

 その目を見たリサは思わず仮面を落としてしまう。


『痛!』


 その仮面が地面へと落ちると、仮面からは猫の鳴き声のように透き通る声でそう声を漏らし。仮面からはあってはならない猫耳としっぽが生えていた。

 ミツキは徐々にリサの元へと歩み寄りその取り逃した仮面を手に取った。


「全く、もっと丁寧に扱うことができないのか?」

『ミツキさんもういいでしょうか?』

「ああ、助かったよ」

 ミツキが拾い上げたその仮面は、みるみる形を変えていき気が付けば見慣れた猫の姿へと戻っていた。


「あ、アテナ!?」

 その姿は紛れもなくアテナの姿だった。リサはミツキの手からすり落ち地面へと着地する姿を見ると、額から脂汗がじわじわとあふれ出した。

「なんでその猫が私の服の中に!?」

 焦りを見せるリサのもとにカオルもヒールの音と共に近寄ってくる。

「そうか。あなた達一般兵は知らなかったわね。アテナたちビーストのこと」


 カオルがミツキの隣へ立つとすかさずアテナはカオルの隣へ移動する。アテナはカオルの隣につくなりその姿をカオルに似せた見た目へと変化させた。

 しかしその姿はどこか本物とは異なり、そのままと言うよりかは似ているという印象が強く出ていた。


「お姉さまが二人?」

 リサはいまだにカオルをお姉さま呼びしていると後ろで目を疑っていたトオルが急いでアテナとカオルの前に立ち交互に指を指した。


「か、カオルが二人!?…いや、まてよ?」

 トオルは独房の前で自分を待っていたカオルの姿を思い出す。

 自分の記憶にあるカオルの姿は制服を規定外の姿に改造する派手な見た目だったが、独房の前にいたカオルは制服を改造することなく真面目な印象を思い出した。

 その時を思い出したトオルは急いで二人を見比べると右方はいつも通り制服を改造した派手な見た目のカオルだった、しかし左方のカオルはそれとは相反する地味な見た目のカオルだった。


「おおお、お前!アテナだったのか!」

「お兄様何のこと?」


 話についていけない本物のカオルはただ質問をすることしか出来なかった。

「そうか、そっちのカオルは知らないか。実は独房に捕虜の様子を見に行った時一緒にアテナが変身したカオルと一緒にいたんだ。だが、つじつまが合わない気がするんだ」

「どういうこと?」

 本物のカオルはトオルの話を聞き入っていた。

「捕虜が逃がされたとき、独房からアテナが出てきたんだ」

『そのことですか』

 質問を返すようにロビンがトオルの肩へ乗る。

『あの時の猫は私です』

「どういうことだ?」

『私は先輩方の能力を30秒間、3回まで使えるんです。ミツキ殿はそれを知るとアモン先輩を私の元へ送り込み、協力を仰ぎました。もちろん私は正しいことをするようプログラミングされていますが、姫のためと聞き協力を了承しました。まあそのおかげで姫を守る作戦は一回きりの一か八かの諸刃の剣になってしまいましたが』

 

 そのことを聞いたリサは自分のことを忘れられているものと感じ、憤慨しその話に割って入る。

「じゃあ、あの時のこともすべて見てたのね!?」


 勢いに任せリサは口を滑らせた。


「とうとう言ったな」

 リサは慌てて口を押える。しかしその直後ため息をつくとすべてを諦め開き直った。

「はあ、もういいわ。そうよそこの少年が言ってることは正しいわ」

「嘘でしょ…」


 一向に出撃しない兵士たちの様子を見に来たミサキの目の前にいたのは。自分にそっくりの兵士の姿だった。


「あ、お姉ちゃん。久しぶり」

 リサは薄ら笑みを浮かべミサキに軽く手を振る。ミツキは手を振る反対の手でホルダーからハンドガンを取り出す姿を見逃さなかった。

「今すぐその手を下ろせ」

 ミツキが銃口をリサへ向ける。

「それはこっちのセリフよ。少年、今すぐそれを下ろしなさい。さもなくば」

 

 リサは人間離れした速度でミサキの背後へと回り込み、ミサキのこめかみへハンドガンを向ける。

「こいつを殺す」

「待て待てそいつはお前の姉なんだろ撃てるのかよ!それにその動き」

「あ、やっぱり気になっちゃうよね」

 そういうとリサはネクタイをほどき首元をあらわにする。

「それは…!?」

 

 そこには痛々しい傷と共に生きているかのように脈打つ何かがあった。


「私、人間辞めたから。それにもう私はリサでもリサコでもないから」

 そういうと仮面を取り出しそれを顔に付ける。

「そこの二人にはもう説明したけど、この際もう一回説明するわ。私はセカンド。簡単に言うとあなたたちの敵よ」

 セカンドはミサキのこめかみに当てていたハンドガンを強く握りトリガーを外す準備をする。そのトリガーを引きかけたその時、ミツキらの後ろから乾いた銃声が響いた。


<バンッ!>


 銃声が鳴ったその先にいたのはミユキだった。ミユキのはなった銃弾はミツキの頬をすれすれで横切り、セカンドの武器を弾き飛ばした。

 ミユキのその姿はさながら荒野を背にするガンマンのそれだった。


「くそっ!0025番!」

 右手を庇うセカンドはシャッターの外へニコを呼び、ミサキをその場へ投げ捨てる。

 少しすると戦場へ面しているシャッターの奥からABFオーディンの巨大な手がセカンドを攫っていった。


「まて!」

 トオルがオーディンの手を追いかけるがそれもむなしくその手はシャッターの奥へと消えていく。

「シャッターを開けろ!」

「はい!」


 シャッターのそばにいた一般兵がトオルの命令を聞きシャッターを開けるとそこは火の海だった。


「一体これは!?」

「やられた」

「どういうことだ?」

 ミツキは爪を噛む指を硬く握りこむ。


「時間稼ぎだったんだ」


 そこにいたセカンドは格納庫内の全員をあざ笑っていた。



 ゴミのように捨てられ、頭を強く強打し気絶したミサキの脳裏にはいつかの記憶がよみがえった。


 いつかの記憶の中にミサキは吸い込まれていった。白い天井、低い目線、目の前には懐かしい母の姿。そして、いまだ小さい赤子のリサコ。

 その淡くも脆い記憶の中は無性に居心地がよくどこか悲観的だった。


「お母さん?」

 ミサキの母は声を発することはなく静かに頷いた。

「何よここ、どこか見覚えがあるような」

 あたりを見回すとそこは産婦人科の病室に見える。あたりを見つめる低くなった自分の目線が無性に不安になり、洗面所の鏡を見に行くとそこには幼き日の自分の姿があった。


「これは、確かに私だけど…どこか懐かしいような」

 自分の顔に疑問を持っていると病室の奥から赤子の鳴き声が聞こえてくる。


「泣いてる。行かなきゃ」

 ミサキは無性にそうしなければならないと思ってしまった。


 泣いている赤子の様子を見にミサキは母のいるベッドの横へ行く。

 作り物のように動かなくなった母の隣では妹のリサコが声を高くし泣いていた。

「どうしたの?」

 ミサキがあやそうとリサコをベッドから抱き上げると、即座にリサコは泣き止みミサキの顔を見つめる。

「よか…」

 ミサキが安心してベッドへリサコを戻そうとするとリサコは口を開きはっきりと言葉を話した。


「お姉ちゃん久しぶり」


 ミサキは驚き赤子のリサコを地面へ落してしまう。

 地面に落ちたリサコは鈍い音を響かせ地面へ落ちると、そこからスッと立ち上がりミサキの前に立つ。目の前に立ったリサコはみるみる身長が伸びていきミサキが最後に見た新兵のリサの姿になった。


「あなたは…!?」

「他人みたいな口調で話さないでよお姉ちゃん」

「あなたはリサコじゃない!」

「どこがよ、私はリサコあなたの妹よ」

 リサは手を広げミサキへ歩み寄ると小さい拳がその姿を殴り飛ばした。


「なに!?」

 リサコを殴り飛ばした小さな影は幼き日のトオルだった。

「ミサ姉。歯食いしばれ!」

 幼き日のトオルはいきなりミサキに向けてその拳を向ける。ミサキはいきなり殴りかかってきたトオルの拳をかわすことができずに左頬にその拳を食らってしまった。


「痛い…」

 殴られた左頬がじんじんと痛む中再び意識が深淵へと沈んでいった。



 セカンドに投げ飛ばされ気を失ったミサキのもとに駆け寄ったトオルは、目が覚めないミサキに不安が募っていた。


「起きろよ、なあ!」

 頭からか細く血を流すその顔を見たトオルは一種のパニック状態になり、自分はどうするべきか行方を見失っていた。


「ミサ姉…」

「トオル」

 その姿を見かねたミツキはトオルの元へ歩み寄る。

「なんだよ、俺を笑いに来たのか?いいよなお前は。このことをすべて知ってたんだろ、お前は何をどこまで知っているんだ?いや、それは野暮な質問だったか。ほら、笑うなら笑えよ。何一つ知らなかった男を」

 下唇を噛むトオルは自分が気付かないうちにミツキに八つ当たりをしていた。


「トオルはまだ守れるものがあるだろ」

「なんだよ」

「ミサキはまだ生きている。お前ならミサキの眼を覚ませるはずだ」

「何を言って…ってもういない」

 そういうとすでにミツキはそこにいなかった。


「どうしたらいいんだよ!」



 それは偶然のことだった。



 いつもの癖で地面を殴りつけようとするとそこにはミサキの顔がありその拳が左頬にあたってしまう。

「ミサ姉!」

 動揺を隠せないトオルの不安気な表情を見たミサキはその意識を覚醒させた。

「全く、ちゃんと名前で呼びなさい」

「ミサ姉!よかった。本当に良かった」

 トオルの頬からは涙が零れ落ちていた。

「何泣いてるの?私はいいから早くみんなのところに行きなさい」

「でも!」

「いい?これは命令よ」

「わかった」

「分かればよろしい」

 ミサキは微笑み、トオルを戦場へ送り出した。


「行ってらっしゃい」


 トオルが戦火の元へ向かっていくとミサキは安堵し再び気を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ