べしべし☆ビンタ面接
「はい、まず最初の質問ですが、家族構成は?」
俺はシャラルナと面接を行っていた。
先生として生徒のことを知るため、というよりは単純にキャラクターのプロフィールもわかんない状態じゃ何もできないからだ。
金髪のツインテールだからツンデレなのではない、ツンデレだから金髪のツインテールなのだ。
「家族は兄が4人ですわ」
「意外にもめっちゃ妹キャラ!?」
「なんです、別に意外でもないですし、妹キャラってなんですの」
「一人娘で親から溺愛されてるとばかり」
「どれだけ勝手な妄想してますの……」
まぁ、そりゃそうだよな。
現実の女の子に勝手にキャラ設定するなんて失礼だよな。
「すまなかった、次の質問していいか」
「頭を下げなくてもいいですわよ、どうぞ」
長い髪の先をくるくると弄びながら、許してくれた。
とりあえずこの髪を切る選択肢はないな。
「兄を呼ぶときはお兄様?」
「だから勝手に決めないでくださいます!?」
「だって」
「だってじゃないですわ。名前の後にお兄ちゃんです」
「うおお、マジで!?」
「嘘をつく必要がどこにあるのです」
「お、俺をユーイチお兄ちゃんと呼んでくれ」
「何を言っているんです先生」
「いいから! 頼む! この通り!」
俺は深々と頭を下げ、両手を合わせて、この通りだと必死にお願いした。
「嫌ですわ」
俺は土下座した。
「頼むー!」
「い、嫌ですわ」
俺は額を床に当てたまま逆立ちした。
「頼むー!」
「どういうことかよくわからないのですが……」
「やってくれるまで絶対諦めないぞ!」
「な、なんでそこまで」
「やってくれないと脱ぐ! 全裸で土下座する!」
「わ、わかりました、わかりましたわ」
熱意が伝わったのか、呼んでくれることになったようだ。
真心が伝わるって、嬉しいことだね。
これが教師冥利に尽きるってことなんだね。
「ゆ、ユーイチお兄ちゃん」
「うおおおおおおおお!! 有難う御座います! 有難う御座います!」
「なんで、泣いてるんですの」
「泣くでしょ! 生きててよかったぁー!」
全く意味がわからないとばかりに、指を顎に当て、目を眇めるシャラルナ。
いいんだ、わからなくていい。
とりあえず意外にも妹キャラだということはわかった。
「じゃ次の質問ね」
「……まぁ、いいですけど。本当にこれが魔力アップに必要なんですの」
「超必要だよ」
「そうですか」
「好きな食べ物はなんですか」
「えぇ、それがなんだっていうんですの」
「いいから」
好物って大事なんだよ。
たい焼きが好きなのか、牛丼が好きなのか、肉まんが好きなのかでキャラクターが別れるんだよ。
名前じゃなくて好物でキャラ覚えてることだって珍しくないんだよ。
「水飴ですわ」
「み、水飴!? あの和尚さんがいない間に坊主が舐めるアレ!?」
「……和尚とか坊主とかはわかりませんが、舐める水飴です。甘くて美味しいですわ」
ほぉ~。
これまた意外だな。
そりゃ若い女の子だから、甘いものが好きっていうのはそんなに意外じゃないけど。
水飴ってこう和風で古風なイメージがあるし。
でも、なんか金髪で浅黒い肌の美少女が水飴をぴちゃぴちゃ舐めるっていうのは、なんていうか……イイね。
「じゃあ次は胸の大きさを、ブホオーッ!?」
台詞の途中で頬を叩かれた。
どうやら教えてくれないらしい。
顔は冷静極まりなく、かえって怖い。
こんな重要な情報無しでどうしたらいいんだ。
「まぁいいか、やや控えめってことで、ブハフホーッ!?」
逆サイドから頬を叩かれた。
細い眉毛を少しも動かすこと無く、無表情の極み。
仮にも教師を無言でひっぱたく辺り、物凄い芯の強さを感じるね。
どうやら胸の話は避けたほうがよさそうだ。
とりあえず年齢を考えればそこまで貧乳ってわけでもないのに、胸の話で怒るというポイントは抑えておこう。
「えー、次は趣味をお願いひまふ」
頬が痛くて少し台詞を噛んだ。
「趣味ですか、編み物ですわ」
「うわっ、可愛い!」
「な、なんですの、別に普通ですわ」
「うわっ、恥ずかしがっちゃって可愛い!」
「もう! なんですのっ」
「お兄ちゃんにも編んだりするの?」
「ええ、寝巻とか」
「寝巻!」
なぜかゴリゴリの日本語を使う彼女たちであるが、シャラルナは意外にも大和撫子だった。
段々イメージが湧いてきたぞ……。
「最後に好きなものと嫌いなものを教えてください。なんでもいいからなるべくたくさん」
そうですわね、と前置きしてポツポツと考えながら少しずつ単語を紡ぐ。
「好きなものは、月とお兄ちゃん達とミーニャ。ミーニャというのは同じクラスのお友達ですわ。あと飼っている小兎のルーナ。嫌いなものは、サソリと蚊」
「それと胸の話題だな、ギャバーッ!?」
「忘れてました、あと無神経な男が嫌いですわ」
ううう。
頬を擦りながら、メモを見直す。
「しかし、やっぱすっごく可愛らしいな、シャラルナは」
「……軽薄な男も嫌いでしたわ」
「別におべっかじゃないさ、本心だよ」
ぷい、とそっぽを向かれてしまった。
褒められ馴れてないってのも意外だな。
蝶よ花よと育てられたとばかり思ってたが、よくないね思い込みは。
そして金髪だから、褐色だから、というのも思い込みだ。
彼女に相応しい服と髪型は、もう頭の中に浮かんでいた。