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ゴシック&ロリータは、はばからないっ!?  作者: ねず ただひま


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9/17

チョコミントと、雨粒


 川は浅く、流れる水は思っていたより冷たかった。ズボンの裾を膝あたりまで上げ、水草が生えている川べりを前屈みの姿勢で慎重に歩く。

 

 昼間、河口さんが指で大きさを示したロゼットとやらは、勲章のような見た目をしていて、リボンが付いているらしい。

 僕は特徴しか聞いていない物を、確信のない場所で探すというかなり馬鹿なことをしている。

 

 なんでこんなことを……

 偶然さっきの会話を聞いたから?

 河口さんが可哀想だから?

 自分でもよくわからない。

 

 途中、下校しているクラスメイトから「なにしとん?」と声をかけられ、僕は小銭を落としたとだけ答えた。


 ほんと、なんしとんやろ?


 捜索を始めてから数十分、いよいよ腰が痛くなり、上体を起こして背中を反らすと、“彼女”と目が合い、体が固まった。


 「あ……」


 あの、ゴスロリファッションの“彼女”が小さな橋の上から僕を見下ろしていた。


 彼女はメイクを施した大きな瞳を僕に向け、瞬かせるとニッコリと笑った。


「もしやとは思っていたけど、やっぱり栄磨《えま》くんだった。ま(・)た(・)会(・)っ(・)た(・)ね(・)」


 彼女の口から『また会ったね』が聞けたことが不思議と嬉しかった……のだけれど、まさかこのシチュエーションとは。

 僕は引きつった顔でやぁと手を上げて返事をした。変なところを見られて汗が噴き出る。


 今日の彼女は白い日傘を差し、淡い緑色と茶色を基調としたジャンパースカートを着ている。まるでチョコミントのようで一発で目を引く服装だった。


「てか、栄磨《えま》くんは何してんの? あ、待って、当てようか?」


 彼女は、「ん〜」と唸り、日傘の持ち手をくるくる回すと、僕へピースサインを向けた。


「わかった。ザリガニ採りだ」

 

 ピースはハサミへと姿を変え、可愛らしい笑顔の横でチョキチョキと動いた。

 

「はは、ザリガニなら簡単に採れるんやけどね」


「あれ、違うの? じゃあ川掃除かな?」


「それも違う……と、友達がさ、川に落とし物したけん……それで探しとる最中」


 今日初めてちょっとだけ会話した女子のことを、勝手に友達と呼んでしまった。何とも言えない恥ずかしさに陥り、顔が熱くなった。


「ふ〜ん、やっさしいね、栄磨《えま》くんは」


 名前を呼ばれ思い出す。そうだ、なんでこの子は僕のことを知っているのか聞かなきゃ。

 

「あのさ、君はなんで僕のことを知ってるの? それに、うちの学校にも来てたって聞いたよ」


 彼女は口に手を当て、緩んだ頬を隠すとにんまりした笑顔を向けた。


「なぜだろうねぇ〜? このまま秘密にしておくのも面白いかも」


「むかし、この島に来たことがある……とか?」


 日傘を回す手がピタリと止まる。当たりか? しかし、彼女の顔には依然として余裕の笑みが浮かんでいる。


「ふふ、いい線いってるよ。たしかに、私とキミは昔会ってるよ」


 マジか? 


「な、名前は!? キミの……名前」


「これは言っちゃうと、簡単に思い出せちゃうかもだけど……私は“セナ”」


「セナ?」


 記憶の引き出しを探る。保育園時代から中学校まで、島を出た子供の顔と名前が脳裏を駆ける。


 セナ? 瀬名? せな? その名前に該当する人物は思い浮かばない。


「あ、ごめん、ごめん。必死に思い出してる所悪いんだけど、コレ……偽名だから。今思いついた偽名」


「偽名かよ!?」


 思わずツッコミを入れる。彼女は大きな口で笑った。


「あはははは! キレッキレだね、栄磨《えま》くん。でもね、これはヒントを含んだ偽名だよ」

 

「ヒント?」


「そう、思い出せるかな?」


 セナ……とは一体?


「本当はもっとお喋りしたいけれど、ワタシはこれから四国側へ歯医者に行く予定があるから、またね。栄磨《えま》くん」


 セナと名乗った彼女は、僕に手を振ると小さな橋を渡り姿を消した。


「また……」


 気づけば空はいつの間にか灰色の雲に覆われていた。湿った空気を肌に感じる。島育ちの僕には分かる。この雲はもうすぐ雨を運んでくるだろう。今日は家に帰ろうと思い、川から上がろうとした時、緑の水草の間に、不自然なオレンジ色が目に止まった。自然と手が伸び拾い上げる。

 それは黒とオレンジの二色のリボンを畳んで円を形どっており、真ん中部分は小さな造花が取り付けてあった。


「あった……たぶんコレだ! やった! 良かったぁ〜」


 僕は天を仰ぎ、それを胸に当てていた。小さな雨粒が僕の顔を打った。

 



 読んで頂き、ありがとうございます。お手隙でしたら読み返してみたり、ブクマしたり、リアクションしたり、★での評価をお願いします。


 ねず ただひま

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― 新着の感想 ―
読了しました!! 遂に再会しましたね!! セナの正体とは一体……しかも偽名!? ヒントを含んでると聞いて、エマ君がピンと来てないから本当に忘れてしまった記憶のことだったりするのかな……! 落とし物見…
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