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ゴシック&ロリータは、はばからないっ!?  作者: ねず ただひま


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13/17

晩御飯と、凛の記憶


 長く艶のある黒髪をポニーテールに結えたセーラー服姿の凛は、僕たちを……いや、僕を蔑むような目で見ている。エコバッグを両手にぶら下げ、背筋をピンと伸ばして仁王立ちしている姿は、なかなかの迫力があった。


「家におらんけん、神社《ここ》かなぁ思って来てみたら……デートの最中やったん?」


「り、凛? なんで?」


「なんでって、アホか? 週末は島に戻るってメールしたやん。んで、家でご飯作ったげるって書いてましたけどぉ? まさか私を放ったらかしにして、こんな可愛いらしい子とデートしとるとは」


 しまった! 今日、凛がうちに来ることを完全に忘れていた。夏の暑さと凛のメールを思い出し、僕の背中を汗が滑り落ちた。凛は自分を落ち着かせるような大きなため息を吐き、肩の力を抜いてセナに話しかけた。


「はじめまして、私は村上凛。あなたは……観光客さんかな? 日本人……だよね? なんでこの男と?」


「こんにちは。ワタシはセナ。つい最近この島に来たの。栄磨《えま》くんには道を教えてもらったの。それから仲良くさせてもらってるんだ。あと、この髪はウィッグで、ワタシはバリバリの日本人だよ」


 セナは白髪を撫でながらにっこりとした笑顔で凛に答えた。


「セナさんね。よろしく」


 凛も笑顔で返した……と言えるのか? 目が全然笑っていない。


「んで、どーするん? 色男。このままやと、この暑さで買ったばかりの食材がパァーになるんじゃけど?」


 凛は肩をすくめるように、両手のエコバッグを持ち上げてみせた。

 

「あぁ、ごめん。すぐに帰るよ」


 僕は急いで食べかけのクッキーを口に放り込み、紅茶で流し込んだ。


「セナ、ありがとう。おいしかったよ」


 そう告げて立ちあがろうとした時、セナに手首を掴まれた。


「待って、コレも持って帰って。キミのために作ったんだから」


 残りのクッキー数枚を手渡された。


「ありがとう、ホントごめんね、セナ。またね」


 セナは少し寂しそうな顔で小さく手を振った。僕は申し訳ない気持ちのまま凛の隣に並ぶと、凛はセナに向けて両手を前に組み深く頭を下げた。凛は島の名家と呼ばれる家の生まれだ。この所作一つだけでも育ちの良さが伝わる。たとえ僕に怒っていても礼儀作法は欠かさない。


「ごめん、持つよ」


「当たり前じゃ」


 んっ、と凛が差し出したエコバッグを受け取る。僕らは並んで歩き、境内を後にした。背中にセナの視線を感じながら。



 ──キッチンからは鍋が煮立つ音、揚げ物の音、小気味良い包丁のリズムが聞こえる。部屋着に着替えた僕は、凛に「アンタは座っとって」と言われたので、リビングで大人しく学校の課題と向き合っている。

 ふとキッチンの方へ目をやると、セーラー服の上からエプロンをつけた凛の後ろ姿があった。迷いなくテキパキとした動きで料理を進めている。


 時刻は午後6時を回っているが、陽はまだ落ちていない。そろそろヒサシが部活を終える頃だと思い、スマホを手に取りメッセージを打ち込む。


「ねえ、凛。ヒサシが会いたがってたよ。晩御飯一緒に誘ってもいいかな?」


 凛の動きがピタリと止まる。振り返ることなく、しばらくして返事が返ってきた。


「まぁ、ようけあるけんええけど……アイツ、ごはんは家で食べるんじゃないん? ここで食べるんならオバさんに断り入れなあかんやん」

 

「それは僕から伝えておくよ」


 送信ボタンを押すと、すぐに既読がつく。『行くッ!』の文字とともに笑顔のスタンプが軽快な通知音に乗って返ってきた。


 小さなため息がキッチンから聞こえた気がした。


 僕はヒサシの家に電話をかけ、オバさんに晩御飯の件を伝えると、快くオッケーをもらった。


「ねぇ、栄磨《えま》」


 電話を切った後、凛は唐揚げを盛り付けたお皿をテーブルの上にコトンと置いた。


「なに?」


「ずっと考えとったんじゃけど、さっきのセナって子……昔、会った気がするんよ」


「え? ほんと!?」


 僕やヒサシでは思い出せなかったことを、凛は思い出せたのか? 女の子同士だから印象に残っているのかもしれない。


「実は、セナは昔この島におって、僕と会ったことがあるって言っとったんよ!」


「ん? あんた、あの子が何者かわからんのに一緒におったん?」


「あ、いや、それは……」


「ふ〜ん、ま、ええわ」


 凛は顎に手を当て、目を細める。


「多分、アレやわ……私ら島の子どもが集まってさ、しまなみっ子友の会を作ったん覚えとる? 二年生の頃に秘密基地でね。その会には、違う学校の子が何人かおったわ。アカリと、もう一人……」


 この島に小学校は二つある。僕はセナが同じ学校の子だと思い込んでいたんだ。

 セナは別の学校で、一緒にいた期間は二年生の夏休みの間だけ、そしてその後セナは島を出た。そうなると、我ながら覚えていないのも頷ける。


「なんで、凛は覚えてたの?」


「人形よ」

 

「人形?」


 僕は首を傾げ、凛の次の言葉を待った……が。


 ドーーン!!


「お邪魔しまぁぁーーす!」


 ヒサシが勢いよく玄関の扉を開けた。来るの早ッ!


「わっ! ビックリしたやん!」


「来るのちょっと早すぎん!?」


「鳥生ヒサシ! ただいま到着!」


 敬礼するヒサシは、坊主頭に汗をかいていた。

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。


次回更新は月曜日の夜を予定しております。ブクマ、評価、リアクション。よろしくお願いします(*´ω`*)

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― 新着の感想 ―
読了しました!! 前書きに書いてた、しまなみっ子の友の会がここに来た物語に出てくるとは……! 最高の展開(*´ω`*) ヒサシ良いタイミングで来るなぁ……! 人形? 人形って何だ?うわぁぁ、次回が気…
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