四章 ~闘技大会~ (7)
大会初日を終えて、準々決勝に駒を進めた四人が出揃った。カルロ・ブライトの相手は王立魔法学院の三年生、ディルフッド・モンクに決まった。もう一試合は昨年三位のフィグ・イネースと、王立魔法学院の一年生、アドミス・テネスが戦う。この四人の中から決勝戦でシン・ウェールズと戦う一人が決まる。
「準々決勝進出おめでとうー!!」
いつものように喫茶店に行くと、フィリたちが盛大に迎えてくれた。忙しかっただろうにちゃんと試合を見ていてくれたようだ。
「カルロちゃん強いのね~。かっこよかったわ。もう惚れちゃったわよ!」
そう言ってマスターは投げキッスをしてくる。俺は飛んできたキスをキャッチして、熟練のセカンドさながら素早くあちらのお客様へ送球する。
「この調子なら優勝できるんじゃない?」
「どうかな。明日の相手は今日の相手とは比にならないと思うよ。」
「そうなの?カルロ以外の試合はよく見てないからわかんないんだよね。」
「魔法学院の生徒のレベルはかなり高いよ。さすがに才能あるヤツらが集まるだけあるな。」
明日準々決勝で当たるモンクも中々やるが、それ以上に、お互い勝ち上がれば準決勝で当たるテネスの方が強そうだったな。一年生ながら大会の出場権を勝ち取ったのも納得だ。
「明日はマスターが午後休みにしてくれたから、グレちゃんと一緒にカルロの応援にいくよ。」
「そうなのか?」
「うん、マスターが入場のチケットもくれたの。」
「常連さんがくれたのよ~。でも私がお店離れるわけにはいかないし、それにカルロちゃんも私より二人に応援してもらった方が嬉しいでしょ?」
それは間違いなくそう。というか俺が決勝まで勝ち上がる前提で話しが進んでいるな。どうもフィリは俺を信頼しすぎている節がある。あまり良い傾向ではないが、だからといって明日わざと負けるのも違うか。
しばらくして、二人のシフトが終わるのに合わせて、そろそろ宿に戻ろうかとしていたときだった。
「おっいたいた。カルロ・ブライト!てめえのせえで俺の防衛班での株が下がっちまったじゃねえか!お礼しにきてやったぜ。」
店に入ってきたのは確か二回戦で戦った…当て馬?みたいなヤツ。後ろに輩っぽいのを数人連れてお礼参りにきたらしい。あんだけボロ負けして、なぜ数を連れてくれば勝てると思えるのか。
「なっ何だよその目は!いいからさっさと表出ろ!それともここで始めるか?」
俺が憐れみの目で見ていると、当て馬くんはより激昂してしまったようだ。
「ちょっと!私の店で勝手なことしないでくれる!?」
このままだと店にも迷惑がかかってしまうな。仕方ない、相手してやるか。俺が重い腰を上げようとしたそのとき、突然外から声が聞こえた。
「店を出るのはお前らだ。」
その声と共に当て馬くんの後ろにいた輩たちが次々と倒されていく。やがて輩を全員倒し、声の主が店内へと姿を現す。
「なっ!シン・ウェールズ…なんでここに!?」
へえ、あれがチャンピオン、シン・ウェールズか。身長も高く、ガタイも良い、そんでもって顔も整っているときた。そりゃ人気出るわ。
シンは目の前にいる当て馬くんではなく、その奥にいる俺を見ている。ここにきたのは俺が目的か?気になるところはあるが、今は、嘘っやだっも~ちゃんとメイクするんだった~などと、シンのファンのマスターがとにかくうるさい。もしかして俺じゃなくてこっち見てる?
「どこ見てやがる!」
当て馬くんは余所見をしているシンに攻撃魔法を放つが、素早く避けられてしまう。
「伝統ある大会を汚すんじゃねぇよ。」
シンはそのまま当て馬くんの腕を掴んで後ろへ投げると店の外へと蹴り飛ばす。
「俺の街で悪さはできないと思え。さっさとこの街から消えろ。」
シンにやられた当て馬くんたちは恐れをなしてそそくさと逃げていった。シンは一度店内に目をやると、俺と目があった。しかしそれ以上は何もなく、どこかへ行ってしまった。
「何だったんだ?」
「やっぱかっこいいわ~、ヤバ~い、こんな距離で見たの初めて!サイン貰いたかったな~。」
しかし驚いたな。さっきの動き、身体強化魔法を使っていなかった。化け物じみた身体能力だな。明日はそれに加えて魔法と七色に変化する武器とやらもプラスされる。だがシンの魔力自体はそうでもなかった。平均ちょい下ぐらいか?勝ち目は十分にあると感じたな。それに…
「俺の街…か。」




