四章 ~闘技大会~(8)
大会二日目の朝を迎えた。今日は午前に二試合、午後に一試合戦う予定だ。もちろん順当に勝ち上がればの話だが。
「じゃあ決勝戦は応援にいくから、準々決勝と準決勝、頑張ってね。」
「おう、二人もバイト頑張って。」
フィリたちのエールを受けて会場へと向かう。
会場に到着すると、昨日と同様に控室に通される。しかし室内は昨日とは違い、二人しかいない。随分減ったものだ。
俺と同室になったのはアドミス・テネス。王立魔法学院の一年生、俺とフィリの一つ年上か。真面目で強気そうな女生徒で、委員長って感じ。というかなんか睨んできてないか?
「カルロ・ブライト…、悪いけど、今日は負けないから。」
睨んできたかと思うと、今度は突然の宣戦布告を受ける。
「お互い勝たないと当たらないだろ。気が早いんじゃないか?」
「モンク先輩は強いけど、アンタには勝てない。それに、アタシも絶対勝つ。」
そう言うと、それ以降は何も言わずにじっと座って待機していた。よくわからないが、これがおもしれー女というやつなのかもしれない。などと思っているうちに呼び出され、闘技場に向かう。何はともあれまずは目の前の相手だな。
ディルフッド・モンク、王立魔法学院の三年生、身体が大きく、まさに体育会系といった感じで、先ほどのテネスのモンク先輩という呼び方がとてもしっくりくる。
一、二回戦では、アネルマのガランのように、自らのガタイを活かした近接攻撃を武器に勝ち上がってきた。筋肉をアピールするためか、なぜか上裸で戦っているのは気になるが、さてその実力、どれほどのものか。
試合開始と同時にお互い距離を詰める。昨日と同様に先制攻撃を決めようと試みるも、ガードされる。この速さに反応してくるか。すかさず反撃するモンクの攻撃を避け、距離をとりながら攻撃魔法を放つが、モンクはそれを腕で弾きながら、距離を開けまいと着いてくる。やはり近接戦を好むか。不用意に近づくべきじゃなかったな。というか攻撃魔法を肉体で弾くって強靭すぎるだろ。
「いいねいいね~!君ほどの強敵は魔法学院にもそういない!俺の筋肉も喜んでいるぞ!!」
足を止め、防御魔法・壁でガードする俺に向かって、モンクはテンション高く防御魔法に拳を打ち付けながら言い放つ。喜びの感情を抱けるだけあって、近くで見ると確かにいい筋肉だ。だがまあ戦いようはある。
俺はモンクが右拳を打ち付けるタイミングに合わせて防御魔法を解除し、その勢いのまま前によろけるモンクの右腕を掴んで投げ、あらかじめ自分の後方に展開しておいた防御魔法・壁にぶつける。
「がはっ!?」
いきなり投げられて驚くモンクに追い討ちをかけようとするも、素早く立ち上がって距離をとられる。モンクの表情には先ほどのような余裕はなくなっているが、それでも勝負を楽しもうと口角をあげる。
「まさかこの体格差で投げられるとは思わなかったぜ。」
「柔よく剛を制すってやつだな。」
「?」
「どんなに強靭な肉体をもっていても、洗練された技の前では無力なんだよ。」
「…ハッ、知ってるよ。そんなこと。魔法なんてほとんどが遠距離から攻撃できる。近づけないんじゃどんなに身体を鍛えても意味がない。」
魔法のあるこの世界だと特にそうだろうな。
「でもよお、それじゃつまんねえだろ!!高度な技術で魔法をぶつけ合うのも悪くはねえよ。でもやっぱ鍛えあげた肉体で、そういうのをぶっ壊していったり、拳をぶつけ合う方が燃えるじゃねえか!!」
モンクは熱く語って己を奮い立たせる。
「だから俺は、君がどんな技をもっていたとしても、力でねじ伏せてみせる。」
モンクはひたすら俺への攻撃を続ける。俺はそれをいなし、躱し続ける。一撃でももろに食らえばかなりのダメージだが、俺には当たらない。やがてモンクの攻撃が止まり、息をきらす。
「ハア、ハア、まだまだ!」
モンクは顔をあげ、笑顔でこちらを見る。まだ目は死んでいない。大した男だ。
「いいね、そういう泥臭いの、嫌いじゃないぜ。」
俺も男だからな。モンクの言ってたことがわからなくもない。
「だから最後は、技じゃなくて力でアンタを倒してやるよ。」
「は?」
「身体強化魔法・重。」
俺は魔法を使うと、右腕を一度ぐるりと回す。
「歯ぁ食い縛って全力で防御しろ。」
何かを察したモンクはとっさに身体の前で腕をクロスする。俺は一歩で間合いを詰めると、モンクのガードする腕を殴り、ぶっ飛ばす。モンクはそのまま会場の壁に激突し気絶。俺は準決勝進出を決めた。




