四章 ~闘技大会~ (2)
「ここは…喫茶店?」
翌日、フィリに渡された地図の場所に向かうと、そこには喫茶店が佇んでいた。なぜここに呼び出した?よほど美味いコーヒーが飲めるのか?真意は不明だがとりあえず中に入るか。
「いらっしゃいませ。」
中に入るとフィリとグレンダが元気良く迎えてくれた。二人はメイドの格好をしていて、この店がメイド喫茶であることを瞬時に理解した。いやでも表の看板にはメイド喫茶とは書かれてなかったし、普通入店したときはお帰りなさいませ、ご主人様って言うよな?てことはただの喫茶店がメイドの格好で給仕しているだけなのか?というか
「何してるんだ?二人揃って。」
「見ての通りバイトだよ。闘技大会が終わるまでの間だけここでバイトさせてもらうことになったの。」
グレンダはそう言って髪をかきあげる。彼女は服装に合わせてか、普段とは違ってメガネをかけている。わかってるじゃないか。
「バイトって…まさかこの店で何かやらかしたのか?」
「ちっがうわよ!どんだけ私のこと信用してないのよ。」
「私がバイトしたいって言ったの。そしたらグレちゃんも一緒にやるって言ってくれて。」
フィリから提案したのか。しかしこういうコスプレをしているのを見ると、フィリが美少女であることを再認識させられるな。似合い過ぎてる。
「何か理由があるのか?」
「えっと…昨日グレちゃんとショッピングしてるときに、杖のお店に寄ったの。私も杖で魔法を使えるようになったら、もっとカルロたちの助けになれるかなって思って。けど安いのでも結構な値段するし、だからバイトを…」
この前俺が、フィリが杖で魔法を扱えるようになったらって言ったことが影響してるのかもな。
「そういうことなら、言ってくれれば…わざわざバイトしなくても。」
「まったく、わかってないわね。」
突然奥のカウンターから声が割って入ってきた。カウンターにいたのは三十代くらいの男性。おそらく彼がこの喫茶店のマスターなのだろう。
「あなたの手を借りずに、ちゃんと自分が稼いだお金で買いたいってことじゃない。それくらい理解してあげなさい。」
なるほど、俺としては正当な対価というか、先行投資のつもりでフィリにいろいろ買ってあげているが、フィリとしては俺に甘えてしまっているように感じていたってことか。
「いつもカルロが食事代とか宿代を払ってくれてるし、せめて自分が使うものは自分で買えるようになりたい。その一歩として、杖を買いたいと思ってるの。お願い、闘技大会までは時間もあるし、ここでバイトさせて。もちろん魔法の鍛練も頑張るから。」
そう言ってフィリは俺に頭を下げる。続けてグレンダも私からもお願い、と頭を下げる。別に何か困るわけでもないし、俺は二人に頭をあげさせ、バイトしていい旨を伝えた。
「二人とも素直でいいこね。大事にしてあげなさいよ。」
その後俺はカウンター席に案内された。フィリとグレンダは他の従業員に作業を教わりながら働いている。
「あの格好は?」
「喫茶店開くにしても、他のお店と何か差はつけないとでしょ?それでほら私可愛いもの好きだから、可愛い格好で接客したらいいって思いついたの!」
てっきり異世界からの輸入だと思っていたが、この人が自力で思いついたのか。だから格好だけでシステムはまだ構築されてないんだな。
「そういえば、あの二人身分証持ってなかっただろ?良かったのか?」
「闘技大会の時期は忙しくなるから、いつも短期のバイトを雇ってるのよ。正式な採用とは違うし、身分証は必要としてないわ。必要なのはやる気と、私のような可愛さだけよ。」
マスターのウインクに俺は苦笑いを返す。しかし二人が日中バイトするとなると、俺はその間何をしていようか。俺もバイトするかな、それか・・・
「マスター、闘技大会のエントリーっていつまで受け付けてるんだ?」
「あら、マスターじゃなくてお姉ちゃんでいいわよ。」
呼ばねえよ。
「エントリーはたしか本戦の一週間前までしてたから、明日までね。…なに?アンタ出る気なの?」
強いヤツがいたらスカウトしようと思ってこの街まできたんだ。どうせなら直接やり合った方が実力もわかるだろう。
「今日中にエントリーしてくるか。」




