三章 ~アネルマ~ (14)
「かんぱ~い。」
目の前でグレンダが思いっきり酒を呷る。いい飲みっぷりだ。
街に戻るや否や、ガランをはじめとした警備隊の面々は忙しくしていた。まあ一気に状況が変わったからな。仕方ない。俺たちは邪魔にならないように詰所を後にし、もう夕方のいい時間だったので、夕飯を食べに向かった。
ミーアさんと違い、グレンダはなんの躊躇もなく酒を注文した。まあ酒はアネルマの特産らしいし別にいいけど、それ以外にも遠慮なく料理を注文していく。コイツ金ないんだよな?俺(年下の未成年)が支払うのわかってんのか?
「別に俺が支払うけど、少しは遠慮しないか?普通?」
呆れて思わず口にだしてしまった。
「フッフッフッ、明日になればすぐに返すわよ。カルロも見たでしょ?あの懸賞金。ここの支払いぐらい余裕でできるっつーの。」
そう言って俺のおでこを指でコツンとすると再び酒を注文する。一発ぶん殴ってやろうかな。
「そんなにすごい額なの?」
隣のフィリが聞いてくる。そういえばフィリは貼り紙を見てなかったか。
「数年は働かずに遊んで暮らせる額だな。」
フィリはあまりピンとこないのか、うへぇ~と唸っている。
「そうなのよ!これで私もしばらく安泰だわ~。アッハッハッハッハッ!」
店にグレンダの高笑いが響き渡る。
翌日
「なんで私がお金貰えないのよ!?」
詰所にグレンダの怒声が響き渡る。
「ですから、報酬は依頼を受けたブライトさんに渡す決まりなんです。」
まあそりゃそうだわな。俺はグレンダを無視して報酬を受け取る。
「いやでも、熊の魔獣は二匹いたの。一匹はカルロが倒したけど、もう一匹は私…一人ではないけど倒しはしたの。その報酬も支払われるべきじゃない?ねぇおねーさーん、お願いだよー。」
グレンダは納得できずに受付のお姉さんの肩を持ってぐわんぐわん前後に揺らす。あのお姉さんも災難だな。
「もちろんその分も用意してるところだよ。とはいえすぐには用意できないからもう少し待ってくれ。」
ガランが割って入って、グレンダを落ち着かせる。
「ガラン、その後は?」
「しばらくは忙しくなりそうだな。街の復興作業やニックのこと、倒した魔獣たちの扱い、まだこれから決めなきゃいけないことや、やらなきゃいけないことが山積みだ。」
「そうか、なら今用意してる分の金はこの街のために使ってくれ。」
「えっ、いやそういうわけにはいかねーよ。気持ちはありがたいが、アネルマを救ってくれたお前らにはちゃんと報酬を受け取って貰わねーと。」
「これだけでも充分な報酬だよ。それにどうせ俺たちは今日、この街を出るからな。」
「・・・わかった。すまんな、正直助かる。さすがにあれだけの被害があると、復興のために金が必要になってくるからな。お言葉に甘えさせてくれ。ありがとう。」
ガラン、そして警備隊のみんなが頭を下げる。うん、いい感じにまとまったんじゃないか。と思ったが当然あの女が黙ってない。
「ちょいちょいちょいちょい、なーに勝手に話し進めてんだ!私のお金の使い道勝手に決めないでよ!」
「いや用意したとしても受け取るのはブライトなんだが。」
「私だって頑張ったのにー!」
グレンダは寝転がってじたばたする。なんて醜いんだ。
「グレンダ。」
俺がじたばたするグレンダに声をかけると、彼女は動きを止めて寝転がったまま俺を見る。その目の前に先ほど貰った報酬を俺が見せると、彼女はガバッと起き上がって掴もうとする。俺は掴まれないようにスッと報酬を引く。
「グレンダ、この金で俺に買われてくれないか?」
「へ?買うってカルロあんたまさか私の身体を…」
「そういう意味じゃねーよ。仲間になって、俺の目的のために一緒に旅をしてくれないかってことだ。」
先ほどまで泣きそうだったグレンダの顔がみるみる笑顔に変わっていく。
「たくもー、しょうがないなー、子ども二人で旅させるのも危ないし、私が付いていってあげますか。」
「あっ、そんな感じなら無理してこなくていいです。」
「すいません冗談です!よろしくお願いしまーす!」
相変わらず手のひら返しが凄い。っとそうだ、フィリにも確認しないとな。
「フィリも構わないか?」
俺がフィリに聞くと、グレンダは目をうるうるさせてフィリの庇護欲を誘う。
「私は昨日からグレちゃんと一緒に旅ができたら嬉しいなって思ってたから大賛成だよ。」
天使かよ。
「天使かよ。」
お前も言うのかよ。いや俺は言ってないか。何はともあれグレンダが仲間になった。




