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三章 ~アネルマ~ (13)

「お見事。」


 やはりフィリの攻撃力はとてつもないな。なるべく早く杖で魔法を扱えるようになってもらいたい。グレンダの動きも良かったな。あれだけ動けるフィジカルもそうだが、何よりあの正確な射撃技術が凄い。


「お前もそうだが、今どきの若いヤツは化け物揃いなのか?」


 隣でフィリたちの戦闘を見ていたガランはもはや驚かずに呆れている。俺はニックの肉片を見ながら返答する。


「たまたまだよ。この街は運が悪くて、運が良かった。それだけだ。」




 少しして戦闘を終えたフィリたちが戻ってきた。


「お疲れ~、いやーうちらも中々やるでしょ?ねーフィリフィリ。」


「うん、どう…だったかな?」


 フィリはおずおずと俺に聞いてきた。グレンダよ、俺が女心がわかるというところを見せてやろう。


「防御魔法の使い方も前より良くなってたし、何より最後の攻撃魔法はさすがだと思ったよ。」


 フィリはまだ満足してなさそうだ。俺から欲しい言葉はこういうことじゃないんだろう。俺はフィリの頭を撫でると、目を合わせる。


「もしフィリが杖で魔法を扱えるようになったら、きっと俺と同じくらい強くなれる。期待してるぞ。」


 そう言うと、フィリは目を輝かせて、うん!と嬉しそうに頷いた。フィリは俺と対等な関係でいたいのだ。だから褒められるよりも、頼られたい。それがフィリの女心ということだ。


「ねぇねぇ私は~、私は褒めてくれないの?」


 グレンダがニヤニヤしながら聞いてくる。腹は立つがまあコイツがいなかったら、今のフィリ一人で勝つのは厳しかっただろうしな。


「いい射撃の腕だな。」


「それだけっ!?…まあ及第点としましょうか。」


 それは何に対する評価なのだろうか。


「それで?そっちはどうなったの?」


「あったしかに、ニックさんは?」


 落ち着いたところで、俺とガランは二人にニックとの会話や、何があったのかを話した。




「うへー、嫌な死に方~。」


「でも、王都より東側に住んでた人たちは、みんなそうやって死んだってことだよね。」


「どうかな。実際にどう死んだかは伝わってないし、今でも魔界調査部隊のヤツらとか、魔界に踏み込んでる人はそれなりにいるけど、そういう死に方をした例は聞いたことがない。」


「たしかに、勇者たちも五年ごとに魔界に入ってるしな。」


「まあ今まで魔獣の肉を食った人間なんていないだろうし、瘴気を吸うのとは全然勝手が違うんじゃないか?」


 おそらく瘴気自体は魔力ではなく、動物の体内に入ることで魔力が生成されるのだろう。(ゆえ)に瘴気を吸うぶんにはそこまで問題はないと考えられる。憶測(おくそく)に過ぎないけどな。

 これ以上このことを議論しても仕方がないだろう。俺たちは話し終えると、ニックが拠点にしていた洞窟へと向かう。中からは異様な臭いが立ち込めていて、明かりを点けると、辺りには魔獣や普通の動物の死骸などが散乱していた。


「ひどいことするね、動物の命をなんとも思ってないみたい。」


「そんなもんだろ。俺たちだって今日たくさん魔獣を殺したじゃないか。」


「いや魔獣は・・・いや、たしかにそうだね。自分だけ正しいみたいに言うのは違うね。」


「…せめて埋葬してあげよっか。」


 俺たちは死骸を燃やしていき、残った骨を洞窟の近くに埋めた。


「あの子たちも埋めよっか。」


 フィリが熊の魔獣たちの方を見てそう言う。あんな獰猛(どうもう)な生き物をよくあの子なんて言い方できるな。それは優しさといっていいのか?


「悪いがそれは待ってくれ。」


 熊の魔獣のもとに向かおうとする俺たちを、後ろからガランが制止する。ガランの手には洞窟の中で見つけたと思われる本が抱えられている。


「その本は?」


「ニックの研究日記だ。アイツの言ってたことがより細かくまとめてあった。これは証拠として持ち帰る。それと今埋葬した魔獣たち以外の、西地区やさっき倒した魔獣たちも証拠として残しておく。」


 まあそれが良いだろう。いくら俺たちが、魔獣倒してきました。犯人も見つけて倒しました。といっても完全に信じることはできないし、住人たちの不安も取り除けないからな。


「わかった。どうするかはこの街の人たちに任せる。」


「えー、いいの?私たちが倒したんだよ?」


「そもそも俺たちは部外者だ。これ以上首を突っ込む必要はない。あとは被害にあったこの街の人たちが決めることだ。」


「悪いな、助かるよ。」


 ガランとの話が付くと、俺たちは山を降りて街へと帰った。

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