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三章 ~アネルマ~ (11)

「お前…どういうつもりだ。なんで街を…。」


 ガランの質問で、ニックは話し始める。


「一ヶ月前、魔界調査部隊の人間が俺のところに勧誘にきた。俺は当然断ったが、向こうもかなりしつこくてな。ムカついた俺は嫌がらせでもしてやろうと、ヤツらの拠点に忍び込み、そこで見つけた一匹の魔獣を盗み出した。」


 ニックは嬉しそうに続ける。


「魔獣なんて初めて見たよ!俺は昔から魔法を研究するのが好きだったんだ。だから魔獣を見たとき、嫌がらせとか関係なくとっさに持ち出してた。それからはこの森で魔獣を研究することにした。テーマは人工的に魔獣を生み出すこと。別にそれで何かをしようとしてたわけじゃない。ただの好奇心だ。」


 好奇心…か。どちらかというと義務的に行動する俺にはあまり馴染みのない感覚だな。


「まず考えたのは繁殖。盗んできたのはオスの犬の魔獣だったから、メスの犬を連れてきて同じ檻に閉じ込めてみた。結果はただ殺されただけだった。おそらく魔獣同士じゃないと繁殖しないか、そもそも繁殖行為をしないのかもしれない。」


 ニックは饒舌(じょうぜつ)に話し続ける。好きなものの話しになると止まらないオタクそのものだ。コイツこんな喋るヤツだったのかよってなるやつ。


「次に俺は魔獣の血肉を食わせることで魔獣化させることを試した。これがうまくいった。まあ元々体内を魔界の瘴気で満たせば魔獣化することは知っていたが、魔獣の血肉を食らうことでも可能だったんだな。そしてふと気づいたんだ。本来魔獣化しない大型の動物も、このやり方で少しずつ体内を瘴気で満たしていけば、魔獣化させることができるんじゃないかってな。そうして生み出したのが熊の魔獣だ。」


 理論上は可能でも、それを実現できるってのが凄いな。大した才能だ。でもまあ、仲間に欲しいタイプではないな。


「こうして人工的に魔獣を生み出すことに成功したわけだが、もちろんそれを世に放つわけにはいかないし、俺は魔獣たちを収納空間魔法にしまっておくことにした。でも簡単に管理できるものでもないから、一度街に数匹の魔獣を誤って放ってしまったときがあったんだ。そしたら次の日に俺の研究拠点の近くまで警備隊が来て、あの時は焦ったよ。バレたら当然捕まるだろうし、仕方ないから熊の魔獣を放ったんだ。」


 おそらく熊の魔獣は徐々に魔獣化させていったから、多少は理性が残っていたのだろう。実際こちらが攻撃意識を示すまで襲ってこなかったし、管理もしやすかったと思われる。でも他の魔獣はそうはいかなかったようだ。


「まさかあんなに強いとは思わなかったよ。おかげで研究がバレずに済んだ。…でもその翌日、魔界調査部隊のヤツらが俺が魔獣を盗んだことに勘づいて、俺の家まで問い詰めにきた。ヤツらは俺を攻撃し、無理やり連れていこうとしてきた。だから俺は魔獣を解き放つことにした。ヤツらは抵抗してたが、すぐに殺されたよ。そしてそのまま魔獣たちは街を襲っていった。」


 これが真実か。まあだいたい予想通りだな。


「最初は恐ろしかったよ。でも街が壊され、人々が死んでいくうちに、だんだん自分の研究成果が認められていくように感じたんだ。嬉しかったなぁ。」


「お前、ふざけんなよ。それだけのことをしといて、何が嬉しいだよ!!」


 ガランは怒りを抑えきれず、ニックの胸ぐらを掴む。


「俺が警備隊に入ったのは、この森にある俺の研究拠点を見つけさせないためだ。一週間はうまくいってたのに、まさかあんな化け物が来るなんて災難だったよ。」


 化け物作ってたヤツに化け物呼ばわりされるとは。


「もういい、お前のことがよくわかったよ。被害にあった人たちや、魔獣に怯えて暮らす街の人たちのためにも、お前は今ここで殺す。」


 ガランは魔法で身体を強化し、ニックを殴る。


「ぐはっ!…あー痛った。もう自棄(やけ)だな。収納空間魔法。」


 ニックの収納空間魔法から魔獣が溢れ出てくる。


「クソッまだこんなにいたのかよ!」


「攻撃魔法・貫。」


「えぇ~!?」


 ガランは驚きながらこちらを見る。フィリたちの方に行かれても困るし、速攻で全ての魔獣を殺すことにした。とはいえさすがにもうスタミナがきれそうだ。


「ガラン、さっさとコイツも殺して終わらすぞ。」


「お、おう。」


「いや、速すぎだろ!まあでもギリギリ間に合ったな。」


 そういうニックの口元には血が付いている。さっきガランに殴られたときにできた傷、ではなく、あれは…魔獣の血?まさか食ったのか?生で?


「百年前、王都より東に住んでいた人々は、魔界の瘴気によって全員死んだ。だが熊の魔獣のように、体内に取り込む量次第では俺も魔獣に、いや魔人になれるはずだ!」


 一か八かの賭けに出たか。だが残念、そううまくはいかないものだ。


「あがあぁぁぁぁー!なん…でっ!?くそぉぉぉぉー!」


 ニックの体内にニック本人が持つ魔力とは別の魔力が流れていく。ニックの体内には今二つの魔力が存在し、その二つが調和せず反発し合っている。その結果どちらの魔力も制御できなくなり、暴走した魔力によってニックは内側から爆ぜて死んだ。


「フ○ーザにやられたク○リンかよ。」


 人間は動物と違って魔法を使う。故に魔人化することはほぼ不可能なのだろう。まあ何はともあれ、元凶は死んだし、あとはフィリたちが倒せるかどうかだな。

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