三章 ~アネルマ~ (10)
「俺が作ったって、魔獣を作るなんてできるわけないだろ?変な言いがかりはよしてくれ。」
まあ当然否定するわな。俺はフィリ達の様子を見ながら話しを続ける。
「お前を疑う理由は単純だ。魔獣が現れたとき、常にお前が近くにいた。昨日も今日も、西地区が襲われたときも。」
「そんなのたまたまだろ。」
たしかにその通りだ。だから今から確認する。俺はニックの杖を指さす。
「お前が杖に着けてるそれ、収納空間魔法だろ?」
「?別にこれくらいそれなりに魔法を扱える人なら誰だって持っているだろ。」
「ああ、普通一つは持っている。でもお前のように二つ持っている人は珍しい、何か誤って出すわけにはいかないものがしまってあるんじゃないか?」
ニックが所持している収納空間魔法は二種類存在する。昨日出会ったときと今装着しているものは同じだが、今日の出発時や先ほどの休憩中に着けていたものは別物だ。
収納空間魔法はどれも同じ見た目をしているが、杖に装着したときに流れる魔力量に多少差が生じる。魔力の視える俺には今日会った時点でニックが少なくとも二つの収納空間魔法を所持していることがわかった。
「…っ!?なんで二つ持っていることが…、いや持ってるからってそれだけで犯人扱いしてくるのはひどくないか?」
「じゃあ今ここで魔法を発動すればいい。簡単にお前が犯人ではないと証明できるぞ。」
俺の言葉にニックは何も言い返せないでいる。この様子だと予想は当たってたみたいだな。フィリ達は一度距離をとって作戦会議しているようだ。どんな作戦でいくのだろうか。
「ちょっと待ってくれ!俺全然話しについていけてないんだが!?ニックが犯人…なのか?というかそもそも魔獣って作れるのか?」
ここまで黙って話しを聞いていたガランはまだ動揺しているようだ。
「魔獣化は動物の体内が魔界の瘴気に侵食されることで起こる。つまり、魔界の瘴気を動物の体内に取り込ませれば、人工的に魔獣化させることも可能だ。もちろん相応の知識、技術は必要だろうが、彼はアネルマで魔法の腕がいいと評判だったようだしね。」
「その魔界の瘴気ってのはどうやって入手するんだ?」
「アネルマにも少し前まで魔界調査部隊のスカウトが来ていたのでは?」
「魔界調査部隊…、あー確かに来てたな、なんか胡散臭いヤツだったけど、たしか西地区が襲われたときにソイツも死んだんじゃなかったかな。」
「まあその魔界調査部隊ってのはいろいろ非合法なことやってるヤツらで、魔獣を使った裏の商売とかもしてるんだよ。ソイツらから買ったのかくすねたのかは知らんが、その魔獣の肉や血を動物たちに摂取させることで魔獣化させた。そうだろ?ニック。」
フィリ達は…なるほど、フィリの防御魔法で魔獣の攻撃を防ぎ、一瞬動きが止まった瞬間にグレンダが攻撃、これを繰り返しているようだな。一見攻撃は通ってないように見えるが、グレンダの攻撃は常に同じところ、右のひざ裏あたりか?に当たっている。塵も積もれば山となる、いや、より適切なのは雨垂れ石を穿つ、だな。二人の魔法の才能あってこそできる良い作戦だ。
「・・・・・・」
ニックは何も言わず黙ったままだ。沈黙は肯定とはまさにこのこと。これ以上待っても意味ないな、殺すか。
「おいニック、ブライトの言ってることは合ってるのか?・・・何も言わないなら俺はブライトを信じるぞ。」
ガランがニックに詰め寄る。あの大きさで来られると怖そうだなぁ。
「はぁ~、わかりましたよ。そうですよ。全部ソイツの言う通りですよ。」
ニックは罪を認めると、ガランを手でどかし、俺を睨む。
「余計なことしやがって。」




