研究日誌03:砂漠調査記録
実は、ずっと気になっていた。
「……何をするんですか?」
砂漠。
どこまで行っても変わらない世界。
アレイスタが懐を探る。
紙切れを取り出した。
「これよ」
【幻の湖の調査】
「……幻?」
「あるけど、ない。
見えないけど、被害がある」
なぞなぞのみたいだ。
「目的地は分からないわ」
「分からない、のに……行くんですか?」
「ええ。でも、”あて”はある」
アレイスタがメルクに手を差し出した。
「矢を貸して」
メルクが腰の矢筒に手をかけた。
「……」
矢を一本引き抜いて、アレイスタに差し出す。
今、メルクが笑った気がする……。
ぶしゅっ
アレイスタが鼻血を吹いた。
「――っ!?」
僕は駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「……大丈夫、大丈夫」
アレイスタは平然としている。
鼻を押さえる。
「朝までおっさん達と”どんちゃん”してただけだから」
「……どんちゃん?」
言葉も、内容も、意味が分からない。
メルクが驚いた顔をしている。
「あんた、これ……とんでもないわね」
アレイスタが、矢を両手で持つ。
「え?」
ぐにぃ
止める間もなく矢を折り曲げた。
「【フリードリヒ】!!」
メルクの顔が、一瞬で赤くなる。
「謝罪を要求!!」
怒鳴り声が砂漠に響いた。
「【フリードリヒ】よ! 私の!!」
「今は、単なる道具よ」
アレイスタは悪びれもせず、曲げた【フリードリヒ】を構えた。
「ダウジングに使うから」
「使うから、じゃない!!」
メルクは本気で怒っているみたいだ。
この人、消耗品に名前を付けているの?
アレイスタは気にしていない様子。
【フリードリヒ】を前に突き出し、ゆっくりと歩き出した。
「……水脈と、繋がったわ」
目が青白く輝いていた。
砂漠。
どこまで行っても変わらない世界。
足跡だけが僕らの存在証明。
それもすぐに、消え失せる。
アレイスタは迷わない。
【フリードリヒ】が指し示す場所へ。
確信を持って、進んでいる。
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基本は摺り足。
凹凸のないところを選ぶ。
呼吸を乱すな。
一定に。
三つ前のパーティの戦士が言うコツを思い出してひたすらに歩く。
はぁ、はぁ
この二人の体力、化物。
ついて行くのが精一杯。
もう、どれだけ歩いたのか、
「ここよ」
お尻にぶつかりそうになった。
【フリードリヒ】が、下を向いている。
「ここで、水脈が……なくなってる」
「水脈って、なくなるものなんですか?」
「普通は、ならないわ」
アレイスタが足元の砂を見下ろす。
「だから、ここ」
メルクが腕を組んで、周囲を見回していた。
「……何もない」
砂。 空。 風。 塩。
水の気配すらない。
「ここが、目的地よ」
夕日が砂漠を赤く染めていく。
僕らは、「何もない場所」に、腰を下ろした。
これから何が起きるのか。
まだ、誰にも分からない。
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