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【没作品】悪役転生14

「ノックしてくれれば良かったのに」


 ブリネッタは煙草を吹かしながら、気怠そうに言う。その衣服は乱れ、汗でツヤツヤと光る肌が露わだ。


「で、ボス。どうしたんだ?」


 盛り上がった筋肉を誇るわけでもなく、ごく自然に全裸の勇者トリスタンが問いかけてきた。


 二人揃って賢者タイムなのか、落ち着いてやがる。


「これからの商売についてだ。ブリネッタ」


 ブリネッタは細く長く息を吐き、煙が宙を漂う。


「安心して。これまで通り薬は作るわ」


 スキル【薬物生成】をもつブリネッタは材料の組み合わせによって様々な薬物を作ることが出来る。


「これまで通りでは困るんだよ」


「……ボス。あんまり刺激の強い薬を売ると国に睨まれるぞ。今でも貴族の間で問題視されているんだ」


 スパイとして王城に出入りし、貴族界隈の情報を集めるトリスタンが顔を顰めた。


 そう。フェンリルは危ない橋を渡っていた。あのままやっていれば早晩、どこかの勢力に潰されていただろう。だから、これまで通りでは不味い。


「これから目指すの中毒性が高く、誰もが毎日手軽に使える薬だ」


「誰もが……」

「毎日手軽に……?」


 ブリネッタとトリスタンが仲良く首を傾げた。いい加減こいつら、服を着ればいいのに。


「ああ。俺はそのレシピを知っている」


 そう。原作で。



#



「兄貴ィィ! めちゃくちゃ美味いっす!! 最高っす!!」


 モンティが新拠点のテーブルに置かれたスラムの安い串焼きを食べながら、涙を流している。


「デイブ! 野菜食べられる!」


 好き嫌いの多いアルチナが人参を齧る。


「本当に何にでも合うわね……」


 ブリネッタが小瓶を手にして震えながら言った。この薬物がニース王国に巻き起こす未来を想像しているのだろう。


 小瓶の中身は……うま味調味料だ。


『ロード・オブ・カオス』では砂糖と酵母菌、そして【薬物生成】のスキルがあれば簡単にうま味調味料が作れる。


 原作では手軽な小遣い稼ぎとしてよく知られているレシピで、これが大きな問題となることはなかった。


 しかし、この世界ではきっと違う。


 ここの生活の一番の不満は味気のない食事だ。大体の料理が甘い、しょっぱいのどちらかで旨さが足りない。


 それを補うのがブリネッタが生成したうま味調味料だ。


「兄貴ィィ! この白い粉はなんて名前なんですか?」


 原作では単にうま味調味料だったが、それでは味気ないな。ネーミングは重要だ。


「ウマインだ」


「「「……」」」


 いつも喧しいモンティが黙り、アルチナが下を向き、ブリネッタが小瓶を落としそうになった。


 僕のネーミングセンスに恐れ入ったのか?


「モンティ。スラムの屋台にこのウマインを配って必ず料理に使わせろ。すぐに評判になるはずだ。そうすれば皆、ウマインを欲しがる。噂を広めたら、手の空いてる構成員に販売させろ。値段は後で指示する」


「りょ、了解っす……」


「ブリネッタはウマインの生産に励んでくれ。材料はこちらで仕入れる」


「わ、分かったわ……」

 

「二人とも元気がないな。ウマインをかけた串焼きをもっと食べろ」


「う、うっす……。ウマイン……」

「ウマイン……」


 モンティとブリネッタはしばらく歯切れの悪い発言を続けるのだった。

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