【没作品】悪役転生11
レストランの出前がフェンリルの拠点に届けられてから、三十分が経過しようとしていた。
「もう待ちくたびれた」とモンティのあくびが聞こえる。
確かに、頃合いだ。
月の光を避けながら、僕達はスラムの廃屋からそっと這い出した。
慎重に歩を進め、拠点まで十メートルを切った。
背後にいたアルチナの手を握る。すると、柔らかく握り返された。それはつまり「了解」を意味する。
死神の行動範囲ギリギリのところに立つフェンリルの構成員──見張りだろう──の背後に赤い瞳の骸骨が現れた。そして手に持つ大鎌を首筋に当てる。
ドサリ。
男は声もなく崩れ落ちた。低レベルを哨戒に立たせるからこんなことになるんだぞ。カッサーノ。
『行くぞ』
小声で指示を出すとトリスタンがショートソードを抜いて駆け出す。扉を蹴破り、拠点の中に躍り込む。
「続け!」
アルチナとモンティを従えて、トリスタンに続く。
中では勇者がその実力を遺憾なく発揮していた。鋭く剣を振い、囲まれると左手から光の矢を放つ。
十人近くいたフェンリルの構成員があっという間に床に伏せていく。
「兄貴ィィ。こんなに派手にやらかして、カッサーノの野郎、逃げ出しちまいますぜ?」
トリスタンの活躍が疎ましいのか、モンティは口を尖らせる。
「大丈夫だ。その対策はしてある」
アチョー! と大声を上げ、階段の中腹から男が飛び降りてきた。アルチナが死神を発現させるが、一度目の即死攻撃は空振りに終わる。
クソ! レベルが高いのか!?
上の階から構成員達がどんどん降りてくる。トリスタンはそちらを抑えるのに手一杯。
正面の高レベルの男は俺達でなんとかするしかない。
「ホワタァ!」
カンフースターを思わせる掛け声とともに、踏み込みながら男は身体を回転させる。バックハンドブロー。
しかし、僕には当たらない。レベリングしたのはアルチナだけじゃないんだよ。
【 名 前 】 デイブ
【 年 齢 】 20
【 職 業 】 ダムドの頭領
【 レベル 】 10
【 体 力 】 130
【 魔 力 】 20(−20)
【 攻撃力 】 25
【 防御力 】 20
【 俊敏性 】 30(+50)
【 魅 力 】 23(−23)
【 運 】 7(−7)
【固有スキル】 愚者の天秤(2)
【 スキル 】
戦闘用に【愚者の天秤】でチューニングしたステータスはアジリティ重視だ。目で見える攻撃なら躱せる。
何度もカンフースターが飛び掛かって来るが、全て当たらない。
「喰らえぇぇ……!」
モンティが鎖を振り回す。仕方なく男が飛び退くと、その先で──。
大鎌が振り下ろされた。
糸が切れたように男は床に沈んだ。怪鳥音はもう聞こえない。
「ボス。こっちも片付いたぜ」
ショートソードの血を払いながら、色狂いの勇者が言う。
「カッサーノは最上階にいる筈だ。行くぞ」
計画通り進んでいた。




