【没作品】悪役転生8
「モンティ、水をかけろ」
ギャング団「ダムド」の拠点には地下室がある。壁も床も天井も岩をくり抜いたようにゴツゴツしており、当然窓はない。
そこで灯りの魔道具が照らすのは、両腕を鎖で吊るされ、モンティに水をぶっ掛けられるトリスタンだ。
「……うっ、ここは……?」
「やっと起きたか。ここはウチの拠点だ」
トリスタンは眩しそうに目を細めた。そして、自分が鎖で吊るされていると分かり、取り乱す。
「なんだこれは! 俺を解放しろ!」
「この状況で命令? お前、馬鹿だろ」
トリスタンはガチャガチャと鎖を引っ張るが、当然外れない。ゲーム仕様上外れない。この鎖に繋がれている間は魔法だって無効だ。
「こんなことをして、許されると思っているのか!?」
「あんなことをして、許されると思っているの!?」
僕の背後に隠れていたアルチナが前に出て、トリスタンを糾弾する。
「……俺は何も……」
トリスタンはもごもごと口籠る。
「アルチナ。何をされたか言ってみなさい」
「私、モンスターと戦っていたんです。ホーンラビットと。初めての経験だったので、上手く倒せなくて攻撃を受けてしまって、私は地面に倒れました。襲ってくるホーンラビットをなんとかナイフで仕留めた時、私のすぐ側に男の人が立っていました」
「その男は?」
「この人です」
アルチナはピシャリとトリスタンを指差す。
「どんな様子でしたか?」
「この人は、はぁはぁ言ってました」
「それは走ってきたから──」
「黙れ!」
モンティがまたトリスタンに水を掛けた。
「はぁはぁ言っていただけですか?」
「この人は、私の服が乱れているのを見て、股間を膨らませていました」
「ふむ。はぁはぁ言いながら勃起していたわけですね。怖くはありませんでしたか?」
「怖かったです。レイプされると思いました」
「本当にレイプしてやる! って叫んでましたしね」
自分でも覚えているのだろう。トリスタンは気まずそうに下を向いた。
「さて、トリスタン。いや、ハメスタン。お前には二つ、道がある」
トリスタンは顔を上げる。
「一つは単純。ここでレイプ魔として死ぬ道だ。そこのモヒカン男がお前の首にナイフを滑らせば、おしまいだ」
「……」
トリスタンは無言で息を深く吸った。
「もう一つは俺の舎弟として生きる道だ」
「俺がギャング団の一員に……!?」
「表向きは冒険者を続けていい。お前の力を借りたい時だけ、声をかける。レイプ魔のことも黙っておく」
「……本当か?」
「本当だ。ハメスタンとも呼ばない」
一度目を瞑り、息を吐いてからトリスタンはこちらを見据えた。
「分かった。舎弟になるよ」
ここで脳内に効果音が鳴った。そしてメッセージウィンドウが開く。
『後の勇者、トリスタンが舎弟になりました』
トリスタンが王家から勇者認定されたのはその二日後だった。




