表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/38

【没作品】悪役転生7

 クライム・アクション・ファンタジー『ロード・オブ・カオス』でプレイヤーが使用出来るキャラクターは基本的にヒールだ。


 弱小ギャング団の頭領だったり、暗殺組織の一員、悪徳聖女なんて選択肢もある。そんな数あるプレイヤーキャラクターの中で、唯一のベビーフェイスが勇者「トリスタン」だ。


 トリスタンは田舎から王都に出てきた青年。国王が重用する占い師から「勇者認定」されることにより、数奇な人生を送ることになる。というのがゲーム上の設定。


 基本的には冒険者ギルドや王室からのお願いをこなしていくのがトリスタンを選択した時のゲームの進め方だ。


 単独でギャング団や暗殺組織にも対抗出来るように調整されており、成長すればとにかく強い。欠点は女にだらしないぐらいだ。

 

 しかし現在はまだゲーム序盤。「勇者認定」はなされていないし、レベルも低い筈。トリスタンを襲うなら、今がチャンスだ。


「……兄貴。奴が動きました」


 冒険者ギルドを見張っていたモンティが路地裏に戻ってきた。


「どちらに向かった?」


「大通りを真っ直ぐ南に」


 ということは討伐依頼を受けて南の平原に向かったか。ホーンラビットでも狩るのだろう。チャンスだ。


「よし、アルチナ、モンティ。俺達も動くぞ。勇者狩りだ」


 二人は黙って頷いた。



#



 ニース王国南の平原は序盤のレベリングポイントだ。ホーンラビットやステップウルフは弱いのでレベル1でも何とかなる。


 僕達は冒険者パーティーを装い、平原に来ていた。トリスタンを追って。


 視界の先ではトリスタンが見事な剣捌きでホーンラビットを斬り飛ばしている。


 まだ「勇者認定」を受けていないとはいえ、トリスタンは強い。初期ステータスは平均的に高いし、固有スキル【光魔法】は強力だ。


 正面からいけば、俺とモンティではやられてしまう。アルチナの【死神】ならなんとかなるだろうが、死なせてしまっては意味がない。策を練らなければ。


 トリスタンから充分距離をとり、ホーンラビットを狩りながら入念な打ち合わせを行う。今回の作戦、鍵はアルチナだ。



#



 熱を込めて演技指導をしていると、陽が暮れ始めていた。暗くなる前に仕掛けなくては……。


「よし。アルチナ。打ち合わせ通りに頼む」


「うん!」


 革の胸当てをつけ、駆け出し冒険者風のアルチナが短剣をぶらぶらさせながら平原を進んでいく。僕は遠見の魔道具を取り出し、トリスタンの様子を観察する。


 彼は岩に腰を下ろして休憩していた。そこから30メートルのところで、アルチナは足を止め短剣を構える。トリスタンはスッと顔をあげた。間違いなく、アルチナを見ている。


 勇者になるとはいえ、年若い男だ。女冒険者が一人でいれば気になるのは仕方がない。


 アルチナがホーンラビットと戦闘を始めた。ぴょんぴょん跳ね回る兎のモンスターに短剣を振るうが、なかなか当たらない。


 トリスタンは気になるのか落ち着かない。とうとう立ち上がり、一歩ずつアルチナの方に歩き出した。


「きゃっ!!」


 平原にアルチナの悲鳴が響く。ホーンラビットの角が彼女の革の胸当てに激しくぶつかったのだ。短剣を離し、地面に倒れ込むアルチナ。トリスタンは走り始めている。


 よし。


 モンティに目配せをして、アルチナの元へと走り出す。


「助けてー!」


 普段出すことのない大声をアルチナが発する。トリスタンはもうアルチナのすぐそこだ。


「いや〜!!」


 ピタリとトリスタンの動きが止まった。戸惑うような雰囲気。


「いや〜!!」


 アルチナは叫び続ける。そのように指示している。


「テメェ! 何してやがる!!」


 モンティが怒鳴りつけた。


「えっ、いや。違うんだ。俺は助けようとしただけで……」


 こちらに向き、弁解を始めるトリスタン。その足元には服のはだけたアルチナが転がっている。


 イキるモンティを退かせて、前に出る。そしてトリスタンを睨みつけた。


「ふん。このレイプ野郎が。股間を膨らませてどうやって助けるつもりだ?」


 バッと股間を手で隠すトリスタン。残念なことに、アルチナの霰もない姿に興奮していたようだ。


「この野獣め。恥を知れ!!」


 トリスタンの顔がカッと赤くなった。結構短気だな。


「クソッ! こうなったら本当にレイプしてやる!!」


 トリスタンが長剣を抜き、こちらに剣先を向け──。


 ──シュッ!!


 アルチナが先に動いた。漆黒の刃が抜かれ、トリスタンの腿を斬りつけたのだ。


「痛ッ……!? なんだ……身体が動かない!」


 トリスタンは目を見開き、額から汗がしたたらせる。影縛りのナイフが効いたのだ。


「剣を抜いたな。覚悟は出来ているんだろうな?」


「な、なぜ身体が動かない……!!」


 剣を構えているせいで、トリスタンの股間はガラ空きだ。


「悪さ出来ないようにしてやるぜ」


 ステータスを開き、【愚者の天秤】で弄る。


 【 名 前 】 デイブ

 【 年 齢 】 20

 【 職 業 】 ダムドの頭領

 【 レベル 】 1

 【 体 力 】 30

 【 魔 力 】 10(−10)

 【 攻撃力 】 15(+55)

 【 防御力 】 10(−10)

 【 俊敏性 】 15(−15)

 【 魅 力 】 20(−20)

 【  運  】 5

 【固有スキル】 愚者の天秤

 【 スキル 】 


 僕は全力で勇者トリスタンの股間を蹴り上げた。鈍い音が響き、瞳がひっくり返る。立ったまま失神したようだ。


「モンティ、麻袋に入れて縛ってくれ」


 よし。勇者の捕獲、成功だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ