【没作品】悪役転生2
据えた臭いが鼻をつく。
スラムの悪臭まで再現されているのか。この世界は。
ダムドの拠点から飛び出し、細い路地を右へ左へとモンティは進んでいく。ゲーム知識と照らし合わせようとするが、視点が違うのでなかなか難しい。
「キョロキョロしてないで! 兄貴急いで!!」
モンティは首から伸びたチェーンを振り回しながら走る。スラム民への威嚇のつもりだろうか? こんな面倒くさいムーブは原作にはなかった気がするが……。
「あそこです!!」
少し開けた通り。
露店の店主らしき髭の男が若いチンピラ二人に掴み掛かられていた。辺りには商品らしき小物が散らばっている。
記憶通りだな。間違いなくデイブでスタートした時のオープニングイベントだ。
「お前ら! その手を離しやがれ!!」
モンティが叫ぶ。
「ふん。モヒカン野郎か。またやられに来たのか?」
チンピラは店主を離すと、こちらに向き直った。
モンティが僕の背中に隠れ「兄貴、オナシャス」と小声で言った。原作通りの小物っぷりだ。清々しい。
僕は心の中でステータスを意識した。すると、半透明なウィンドウが視界の端に現れる。この辺りは原作と同じUIだ。
【 名 前 】 デイブ
【 年 齢 】 20
【 職 業 】 ダムドの頭領
【 レベル 】 1
【 体 力 】 30
【 魔 力 】 10
【 攻撃力 】 15
【 防御力 】 10
【 俊敏性 】 15
【 魅 力 】 20
【 運 】 5
【固有スキル】 愚者の天秤(1)
【 スキル 】
よし。あった! 【愚者の天秤】があった! デイブの初期ステータスは平均的だし攻撃スキルもない。普通ならチンピラ二人を相手したらやられてしまうだろう。
しかし、【愚者の天秤】があればなんとかなる。
俺はウィンドウをタップして慌てて固有スキルを使った。
【 名 前 】 デイブ
【 年 齢 】 20
【 職 業 】 ダムドの頭領
【 レベル 】 1
【 体 力 】 30
【 魔 力 】 10
【 攻撃力 】 15
【 防御力 】 10
【 俊敏性 】 15(+20)
【 魅 力 】 20(-20)
【 運 】 5
【固有スキル】 愚者の天秤(1)
【 スキル 】
【愚者の天秤】はステータスの値を付け替えることの出来るスキルだ。今回は「魅力」を20削って「俊敏性」に加えた。
相手のチンピラ二人は力は強いがノロマだ。スピードで圧倒すれば簡単に勝てる。このように。
無言で踏み込みながら頭を沈めると、大振りのフックが髪を掠めた。躱されて泳いだ身体に、膝蹴りをかますと「グエッ」チンピラが妙な声を出して沈む。
まずは一人。
もう一人のチンピラは顔に怒りを浮かべながら掴みかかってきた。横にステップしてギリギリで躱し、足を掛ける。すると、チンピラは面白いように地面に転がった。ちょうど顔がモンティの足先にある。
モンティが分厚いブーツのつま先で蹴り上げると、ゴンッ! と鈍い音がしてチンピラは動かなくなった。
「次、このダムドのシマで勝手なことをやったら命はないと思えよ」
腹を押さえながら立ち上がるチンピラに啖呵を切る。男は意識を失った仲間を担ぎ、這うように逃げていった。
「ふぅ」
初めて人に暴力を振るってしまった。現実世界ではあり得ない言動のオンパレードに気持ちが昂り、なかなか落ち着かない。
「兄貴ィィ。逃していいんですかぁ?」
「まだフェンリルと正面からやり合うのは早い」
そう。時期尚早なのだ。このオープニングイベントでは絶対にチンピラを殺してはいけない。もし、殺してしまうと敵対組織である「フェンリル」が総力を上げてダムドを潰しにくる。
ここでは軽くしめるぐらいが丁度いいのだ。本格的にやり合うのはもっと力をつけてからだ。
さて、問題はこれからのご褒美イベントだ。何が貰えるかは……運次第。




