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【没作品】優等生の悪役転生 〜ゲーム世界で悪態つくのが気持ち良すぎて現世に戻りたくありません〜

 僕は幼い頃から優等生であることを義務付けられていた。


 父親の家系は地元の名士として知られており、今も市議会議員を勤めている。母親は県の教育委員会で働いており、こちらもお堅い。


 とにかく、僕は良い子であることを求めてられていた。高校生になった今も、友達と夜遊びもすることなく、バイトもやっていない。勉強と生徒会活動で青春を終えようとしていた。


 いたのだが……。


「デイブの兄貴ィィ!! ヤベェっす!!」


 煉瓦造りの殺風景な部屋。そこにポツンと置かれた一人掛けのソファに僕は座っていた。ここはどこだろう? 夢の中なのか?


「兄貴ィィ!! 聞いてるんですか!?」


 僕の前にはモヒカン頭にチェーンのついた首輪をした男がいる。誰かに殴られたのか、鼻血を出している。


「はい。聞いています。何かありましたか?」


「えっ……!? デイブの兄貴、どうしちゃったんすか?」


 デイブの兄貴? 僕がデイブの兄貴……!? おかしい。僕の名前は横文字ではない。


「僕がデイブ?」


「兄貴がおかしくなっちまったよ〜! もうおしまいだ!! フェンリルの奴等にシマを奪われちまう」


 デイブ、フェンリル。そしてこのモヒカン男……。知っている三つの要素が、とあるゲームタイトルを連想させる。


『ロード・オブ・カオス』


 クライム・アクション・ファンタジーと銘打たれ、それなりにヒットしたゲームだ。いわゆる箱庭系だが、舞台を中世ファンタジーにしたことで独自性を確保し、現在は第三作目が製作中である。


 僕は『ロード・オブ・カオス』の一作目からのファンだ。かなり熱心にやり込んだ。だから断言出来る。


 ここはゲームの中だ。どんな理屈か分からないが、僕は『ロード・オブ・カオス』の世界にいる。


「兄貴ィィ。正気に戻ってくれよ〜!」


 デイブは一作目で主人公として選択できるキャラの一人だ。スラムにある二人だけのギャング団『ダムド』のリーダーである。そしてこのモヒカン男は──。


「騒ぐんじゃねぇ! モンティ!! 殺されてぇのか!!」


「おっ! デイブの兄貴が正気に戻った!!」


 現実では絶対に使わない汚い言葉を吐くと、不思議な満足感に満たされる。何か殻を破ったような達成感すらある。


「フェンリルの奴等がどうした?」


「奴等がウチのシマの露店からショバ代を取ろうとしてるらしくて!」


「ふざけやがって!! 今すぐ案内しろ!!」


「勿論っす!」


 モンティがドアを開け放った。


 スラムの悪意がワッと部屋に押し寄せてくる。


 改めて、ここが『ロード・オブ・カオス』の世界だと認識した。この世界では良い子の優等生は生き残れない。


 やるかやられるか。


 この扉を出た瞬間、僕はギャングとして振る舞わなければならない。


「兄貴、行きますよ!」


 心臓が早鐘を打つ。しかし、嫌な緊張感ではなかった。むしろ、興奮だ。


 僕は腹を決め、外に飛び出した。


 オープニングイベントの始まりだ。

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