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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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「そんな事、プドラン日報にも載って無かったわよ」

 プドラン日報は、プドラン宮殿(都市全体)内の様々な出来事を伝えるプドラン新聞社発行の日報だ。


 カスパルは、鼻を鳴らした。

「ふんっ、法座主府が手を回して、記事を全て押さえてしまったからですよ。

 衛兵にも厳重な箝口令が敷かれたんです。

 でも、どうしたって、出入りの商人や、偶然来合わせた観光客やら、全ての口を塞ぐのは無理だった。俺は、方々から聞き込みして、ここまで調べ上げたんです。

 エスメル先生だって気になるでしょう?

 魔導士としては大した経験も積んでいないリーユエンが、こんな大魔導士級の術が発現操作できるのかは、なぜなのか。その秘密を知りたいとは思いませんか?」


「あなたは、それが何か知っているの?」

 

 エスメルは、在学中のカスパルの悪い噂を思い出し、この男は信用ならない奴だと気を引き締めた。


 しかし、カスパルは、エスメルの態度の変化を気にすることなく続けた。


「実はね、俺は、今、魔導士学院とは全く違う系統の魔導士の先生に弟子入りしているんです。それで、やっと階梯が進まない俺でも、いろいろ術が使えるようになったんです」


「色々って、あなたは、在学中から結構術は使えていたじゃないの」


「ふん、あんなものは子供騙しです。もっと破壊力があって、インパクトのあるものが、今は使えますよ」


「あなたは、水の精を氷精に変態させて氷魔術まで使えたじゃないの、それだって、術としては十分すごかったわ」


「ふふっ、あの頃の俺の術は、発動の仕方に致命的な欠点があったんです。今の先生はそれをすっかり矯正してくれた」


 ここで、カスパルは懐中時計を取り出した。


「いけない、もうこんなに遅い時間です。途中まで送りましょう。このあたりは、いくら火精の使い手のエスメル先生でも、用心が悪すぎる。

 それにあなたが本気で暴れたら、この辺り一帯は、火の海となって焼き尽くされてしまう」


「嫌だ、変なこと言わないで、そんな事する訳ないじゃない」

 

 カスパルは席から立ち上がった。


「中層地区への入り口までお送りしましょう。そうだ、今度また会ってくださいよ。

 俺の師匠に、先生を是非紹介したいんです。先生と師匠なら、きっと魔導術について、有意義な話ができると思います」


「あなたの師匠?」


「ええ、西荒の古い魔導士の家系に連なる先生なんです。今日は、いないけれど、今度店に来てもらいます。学院系の魔導士も知らない古い魔導術に詳しいんです。

 話を聞かれたら、きっと参考になると思います」


「分かったわ、また、声をかけてちょうだい」

 

 一時間後、エスメルを、中層地区の入り口まで送り届け、カスパルは店へ戻ってきた。


 店の扉を鍵と呪文で二重に開錠し、カスパルは中へ入った。

 もう店員も帰った後で、中は静まり返っていた。

 オレンジ色のランの一つで照らし出された、薄暗い店内の一番奥の闇から「お帰り」としわがれた声がした。


「ただいま戻りました」


 カスパルは、闇に向かって丁寧に揖礼した。


 闇の中から、小柄な老人が現れた。


「例のものは手に入ったのか」

 

 老人の問いに、カスパルはニヤリと笑い、懐から薄いカードを取り出した。


「これが、学院の通行許可証です。これ一枚あれば、学院の結界を通り抜けることができますよ」

 

 小柄な老人は、カスパルへ近寄り、その薄いカードをじっくり眺めた。


「あのエスメルという教師に、今日、出会えたのは、実に幸運だった。

 職員証は手に入ったし、それにリーユエンの消息まで聞き出せた。上々の成果だ」

 

 カスパルは、カウンターから水煙管を二つ持ち出し、一つを老人へ勧め、自分も吸い始めた。


「師匠、リーユエンが、明妃だというのは本当ですか?

 俺が昔見たとき、あいつは、俺の腰くらいしかないチビで、顔には、ひどい火傷のあとまであったんだ。パレードの時の明妃とは別人だとしか思えない」


「確かに、おまえが別人かと疑うのも無理はない。だが、わしが青牙の居城で会ったとき、もう背丈は六尺を越えておったよ。子供の成長など早いものだからな」


「あいつは、西荒の大牙の国へ何をしに行ったんです?玄武の国からだと、随分遠方ですよ」


「おまえは知らんようだが、リーユエンは大牙の紫牙一族の出身だ」


「えっ?あいつ、玄武国出身じゃないのか」


「わしは、大牙国大長老ソライ様に長年お仕えしておった。その話はしたじゃろう」

 

 カスパルは頷いた。


「リーユエンは、ソライ様のお子だ。長年行方不明であったのが、ようやく見つかって、ソライ様は手元に留めおこうとされたのだが、反抗され、逃してしまったのだ」


「師匠は、あいつを連れ戻しにきたのか」

 

 師匠は、ガラスのような生気のない目をカスパルへ向けた。


「連れ戻しにきたというのとは、少し違うが、まあ似たようなものだ。ただ、あやつは警戒心が強い。完全に捕縛できるチャンスを狙って確実に捕縛する必要がある」


「リーユエンの捕縛も重要だろうが、あっちの計画は順調なのか?職員証が手に入ったから、もう実行できる。例のブツの運搬は、もう始まる頃だ」


「学院島の古い石を取り出して、それから、新しいものに取り替えるのだ。今から、おまえも一緒に学院島へ向かってくれ、先に敷地内に入り込み、前の石を取り出したところで一気に襲撃をかける」


「分かった、もう三人、腕の立つ奴に声をかけておいたから、連れて行くよ。乗り物はあるのかい?」


「ここへ明日の朝いちばんに連れてこい、わしの術で、学院島へ一気に移動させてやろう」

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