↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/131

(89)

 リーユエンは冷めた視線でペリオンを見返し、肩をすくめた。


「別に助けたつもりはありません。ご当主さまは何と仰せでしたか?」


「サラザルの勢力拡大を許さない、目的は、学院内の均衡を保つためだと」


「さすがは、ご当主さま、ご明察です」

 

 ペリオンは、少し意地悪い聞き方をしてみた。


「殿下は、あれだけ迷惑を被ったのに、勢力均衡のためなら、エスメル先生ですら庇うのですか」


「別に庇っているつもりはありません。今頃エスメル先生にも、私のことは、どこかから伝わっていることでしょう。彼女も、私が学院島にいる間は、居心地が悪いかも知れませんね」


(エスメルみたいな単細胞じゃないから、本当にやりにくいな。本音ではどう思っているのか、そこの所を、はっきり聞かせてほしいのだが・・・)


「殿下は、サラザルもドロメルも学院から排除するおつもりですか」


「いいえ、そんな馬鹿げた考えが一体どこから出てきたのですか」


リーユエンは心底驚いて尋ね返した。


リーユエンの反応は、ペリオンには、意外だった。


「えっ、それが目的ではないのですか」


「そんな訳ないでしょう。学院は不偏不党、中庸自律がモットーですよ。派閥潰しなんかするわけないでしょう。大切な方針に反するではありませんか。ただ、勢力の均衡を図り、バランスをとって落ち着かせたいだけですよ」


(ああっ、もう、まだるっこしい。何が目的なのか、はっきり言ってくれ)

 

 思う通りに目的が聞き出せないため、ペリオンの苛立ちは募った。

 

 リーユエンは、そんなペリオンの反応を観察し、当主に比べたらまだまだ青くて御しやすそうだと思った。


「森の木を、気に入らないからとむやみやたらに切ってしまえば、森はいつか草地に変わってしまう。魔導士の派閥の均衡を崩すことは、今以上の争いを招くだけです。

 学院長は、そのあたりのことを、本当によく心得ておられて、実に見事な采配ぶりで、とても勉強になりますね」

 

 リーユエンはわざと話を逸らし、その話題を打ち切った。

「そろそろ、生徒を食堂へ連れていきませんとね、ペリオン先生もご一緒に行かれますよね」


 リーユエンの促され、ペリオンは席を立った。


(ペリオンの独白)

 叙勲式典に臨席した際の明妃殿下は、法座主猊下の傍で、美しい人形のように腰掛ける、大人しやかな女人に見えた。けれど、リーユエン先生は、全く腹の中の読めない、手強い相手だった。


 私だって、サラザル宗家の一員だ。情報収集解析において、人に遅れを取りたくないし、自信だってある。なのに、明妃殿下の狙いがまったく分からない。


 勢力均衡?そんな綺麗事は建前だとしか思えない。絶対何か目的があるはずだ。

 それを知るにはどうしたらいいのだろう。


 その目的を、ドロメルより先に知っておくべきだと、そういう気がしてならないのだ。

 サラザルの一員である私の勘が、先んずる者が制するのだ、と告げるのだ。


 しばらくは、リーユエン先生の動きを徹底的にマークしなければ・・・

 


 次の週、定例の教職員会議が開かれた。

 

 会議室へリーユエンが姿を現すなり、ツカリーゼがさっと近寄り、

「リーユエン先生、私の横に座ってなさい」と腕を掴み引っ張っていった。


 教授の横に二回生クラス担任がいるのは、本来不自然なのだが、ツカリーゼを恐れ、誰も何も言わなかった。


 ツカリーゼは、リーユエンにだけ聞こえるように、小声で説明した。

「エスメル先生が、あなたのことをすっごい目つきで睨んでたわよ。危ないから、私の隣にいなさい。トラブルは避けたいでしょ」


 会議の冒頭で学院長はいきなり、学院島を一週間後から十日間閉鎖することを言い渡した。


 ツカリーゼの横に腰掛けて話を聞くリーユエン以外、ほとんどの職員が驚きざわめいていた。


「動力炉のメンテナンスを実施するため、学院島を十日間閉鎖することになった。

 その間、動力炉の出力を最小まで落とすため、安全確保の必要があり、全生徒学生は、島から離れてもらう。

 教職員についても、不要不急の者は島から一旦離れてもらいたい。


 十日の振替については、第十月から第十二月の休養日は二日減らして一日のみとし、、残り四日間は厳冬休暇開始を四日遅らせて代替する」


「そんな事したら授業計画が滅茶苦茶になってしまう」


「休養日が月に一日なんて、酷すぎる」


 そこかしこで不満の声が上がった。

 

 動揺する様子もないリーユエンに、もしやと思ったツカリーゼは尋ねた。

「リーユエン先生、動力炉のメンテってどういう事なの?あなた、何か知ってるの?」


 リーユエンは、極力小さな声で、ツカリーゼにだけ聞こえるように説明した。

「動力炉のエネルギー源は、太極石なのです。それが劣化しているのが見つかったので、全て取り替えると聞いています」


「なるほど、それは、島からみんな追い出して閉鎖する訳よね。私どうしようかしら・・・私の実家は、金杖王国の台地の中にあるのよ。遠いから、帰っても、ゆっくりする時間もなく、すぐ戻ってこなくちゃならないのよね」


「それなら、うちへ来ますか」


 リーユエンの誘いに、ツカリーゼは目を輝かせた。

「あなたのお家にお邪魔していいの」


リーユエンは頷いた。

「先生には、すごくお世話になりっ放しですから、ぜひ、おもてなしさせてください」

 

 最後に、他の連絡事項が伝えられ、会議は終了した。


 エスメルはリーユエンへ体調不良で倒れた原因を色々詰問するつもりだったのに、ツカリーゼにガッチリガードされているので、声をかけそびれた。


(やっぱり、明妃だなんて、デマに決まってるわ。ヒョロヒョロと背ばかり高いだけの色気も何にもない女じゃない、ふんっ)

 

 十日の臨時休業の間、ドロメルの屋敷へ戻り、父グレゴルへ、明妃の噂はデマだから取り合わないでと伝えようと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。