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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 三回生第四クラス担任のイーダは、微笑んだ。

「あくまで噂で聞いたのですわ。今日の午後には、もう教職員のほとんどは、その噂を耳にしておりますわ」


 一回生第二クラス担任のノーラも頷いた。

「ええ、私もお昼ご飯を食べていたら、隣のテーブルの人たちが、そのように話していらしたのが聞こえました」


 二人とも上品に微笑み、無邪気な表情でエスメルを見た。けれど、心の中では同じような事を考え、楽しんでいた。


(ふふっ、エスメルったら、普段は当主の娘だからって、私たちに偉そうにしているけれど、リーユエン先生が明妃なら、玄武国第二位のご身分のお方よ。あの先生の正体を知って、どんな顔になるか見届けたいばかりに、来たくもないあなたのところへ来たのよ。あなたが取り乱した姿を見られるなんて、もう最高だわ)

 

 エスメルは紅茶茶碗を、今度は受け皿へしっかり置くと、完璧な微笑みを浮かべた。


「随分、奇妙な噂が飛んでいるのね。わざわざお知らせくださってありがとう」

 

 二人が、お茶菓子を食べ、部屋から出ていくまで、矜持の高いエスメルは、決して取り乱したりすることはなかった。自制の限りを尽くし、内心の嵐を抑え込んだ。


 しかし、その後、夜も更けた頃に、エスメルは父からの緊急書簡を受け取った。

 その書簡を読んだために、せっかくの自制も崩壊してしまった。

 

 ドロメル一族の緊急通信の手段は、火精を使う火書簡だ。火精へ働きかける特殊なインクで発信者が紙に内容を記すと、それが受け取り手の用意する紙へ、火精の力で焦がし文字となって浮かび上がるのだ。


 ただ、紙を焼いて文字を浮かび上がらせるには、火精の制御が非常に難しいので、一族の中でも当主に連なる高位の者たちしか操れない技だった。デリオンの策略により、リーユエンが明妃であると知ったグレゴルは、エスメルへ火書簡で直ちに連絡をとったのだ。


 (本当に明妃なの?それなら、どうして本当の身分を明らかにしないの。そうすれば、誰でも顎で使って言うことを聞かせられるのに・・・どうして、隠すのよ。やっぱりおかしいわ。だいたい第二位のお方が、学院島で教師を勤めるなんて有り得ないでしょう。絶対デマに決まっているわ)

 

 父グレゴルからは、リーユエンに謝罪し、関係を修復するように言われたが、エスメル自身は彼女へ謝るような、直接的な加害行為は何もしていない。

 本当に明妃かどうかもわからない者に振り回されるのは、真っ平だった。

 元々関係なんていうほどの関係もないのだから、修復のしようもない。

 すっかり開き直った気分で、エスメルは、リーユエンのことはしばらく放置しようと思った。 

 


 翌日、午後の授業終了後、ペリオンは魔導士塔を尋ね、リーユエンを見舞った。

 騎獣に乗り、演習場のある森の中を抜け、中央山嶺の麓に近い、魔道士塔近くまで来ると、魔獣のソアラスが空から降りてきて誰何した。


「第一クラスの担任だな、ここへ何をしに来たんだ?」

 コウモリの翼を羽ばたき、豹頭のソアラスがペリオンを見下ろした。


「リーユエン先生のお見舞いに来たんだよ。彼女に会わせてくれ」

「そこで待っていろ。聞いてくる」

 

 ソアラスはまた空へ上がり、魔道士塔へ飛んで言った。

(聞いてくるって誰にだ?リーユエン先生本人か)


しばらく待っていると、塔の庭に続く敷地の向こうから、スラリとした姿で、ひっつめ髪の青と灰色の時代がかった装束の年配の女がやって来た。その女は氷のように冷ややかな空気を纏い、ペリオンへ向けてくる視線も、何だか人間離れした冷たさだった。


「あなたが、第一クラス担任のペリオン先生ですか」

 

 ペリオンは、相手の雰囲気に圧倒されそうになりながらも「そうだ」と返事をした。


「私は、リーユエン様にお仕えする、ウラナと申します。リーユエン様のところへご案内いたします」

 

 そう言うと、ウラナは先頭に立ち歩き出した。


(何だか随分厳しい雰囲気の女だな・・・凡人ではなさそうだ)

 ウラナの纏う雰囲気は、凡人のものとは思えなかった。


 しかし、リーユエンが明妃であるのなら、法座主猊下の妃であるのだから、彼女に仕える者が人外の者であっても不思議なことではないなと、ペリオンは考えた。

 

 今日の午後の授業は、魔導術基礎編を重点的に行なった。天気が良かったので、リーユエンは外で板書をしながら、授業を進めていた。


 ペリオンが案内された時、ちょうどハンツォンが質問しているところだった。


「先生、水と火は相剋関係にあるのなら、互いに力を打ち消しあうと思っていたんです。でも相乗効果で倍にできるってどういうことなんですか?」


「通常は、火を消すには水を使うね。それなら打ち消しあう関係だ。だが、強力な火力で水を熱することで水蒸気へ変えることができる、そうすると高熱を帯びるし、体積も一気に増えて、水の攻撃力を高めることができる。つまり火精の使いようによって、水精の力を強めることができるんだよ」

 

 ハンツォンは、大きく頷いた。

「なるほど、わかりました。相剋関係だって、機械的に覚えるだけじゃだめなんですね」


「そうだよ、物質は変化する。絶えずその変化の様子を捉え、最適な術の発現展開を考えていってほしい」

 

 ちょうど、そこで授業が終わった。ペリオンは衝撃を受けた。


(俺たちサラザルは水精使いだから、火精にそんな使い道があるなんて考えたこともなかった。

 それに二回生の段階で、五行相剋関係の講義をするなんて、随分水準の高い授業だ)

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