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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 第三クラスの籠の中には、種類ごとに束ねられた薬草が整然と置かれ、その束は十束、彼らが全種類採集したのは明らかだった。


 エスメルは、心の中で、ヨーダム太師が細かく指導して、薬草を集めさせたのだろうと考えていた。

 齢七百年を越える大魔導士が担任に着くなんて、差がつき過ぎて不公平だ、こんな事なら最初にハンデをつけさせるべきだったと悔しがっていた。


 ところが、ヨーダム太師は、思いがけないことを言い出した。

「ハイメル教授、第三クラスの生徒たちは、まずマルテンがあなたの資料を読み込んで、三枚目の白地図にその情報を書き込み、クラス全体で手分けして薬草を探し出した。

 生徒たちだけで、これをやり遂げたのだ、どうか、先生からも褒めてやってくれ」

 

 ハイメル教授は、ヨーダム太師から、マルテン作成の薬草地図を受け取り、それを眺めて感心した。

「これは実によくできている。一枚目と二枚目の資料を、地図へ情報として記入し、それを元に全種類見つけ出したのだね。

 第三クラスの君たちが自主的にやり遂げたのが、実にいい。本当によく頑張った」

 

 もちろん、地図を作ったマルテンを一番に褒めてもいいところだが、ハイメル教授は、あえてそういう褒め方はしない。

 

 十種類の薬草は、森林から山の麓の草原、そして高地にかけて、自生場所は広範囲に渡る。

 移動手段の限られる低学年の生徒たちでは、全員で力を合わせなければ、全種類採取することはできないからだ。

 第三クラスの五人が、それぞれ真剣に薬草を探し求めた結果、全種類採取できたのだ。だから当然のこととして、全員を褒めたのだ。


 その次に、ハイメル教授は、第一クラスの籠をのぞきこんだ。

「どうやら君たちは、ビストルタ・オッフィキナリスの群生地を見つけたようだね。

 この薬草は、消炎、解熱、止瀉薬用に、全草すべて無駄なく使える薬草だ。クラスみんなで、たくさん採取してくれてありがとう」


 最後に、第二クラスの籠をのぞき込み

「おや、マンドレイクを見つけ出したのか、素晴らしい。

 これは毒にも薬にもなる、扱いの難しい薬草だ。根が二股に分かれていて、人形みたいに見えてちょっと不気味だが、花は可愛らしい。

 根に傷があるね。この根の汁が皮膚につくと、毒性があるから、もし、素肌に触れた場合は、すぐに洗い流しておきなさい。珍しい草をとってきてくれて、ありがとう」

 

 マンドレイクを採ってこれたのは、目端の効くジャンリュウが、ロージーとタロナの後をつけて、彼女たちが掘り出した後、隣の株を掘り出して持って帰ってきたからだった。


 ハイメル教授は上空から見ていてその事を知っていたけれど、それにはあえて触れなかった。

 第二クラスの生徒をわざわざ褒めたのは、担任であるエスメルの面子を潰さないようするためだった。 

 

 三回生、四回生の魔導術実践課程で、火精使役術の専任講師であるエスメルの激しい気性は、教師の間では周知のことだ。

 ドロメル当主の愛娘であるエスメルのご機嫌を損ねるのは、龍の逆鱗に触るのに等しい自殺行為だ。もし籠が空であったとしても、ハイメル教授は何かしら褒めたに違いない。

 

 その日の本草学の実習は、無事に終了した。


 

 翌朝、魔導士協会の定例会に出席する太師の代わりに、第三クラスの面倒を見ようと、ニエザがやって来た。


 太師はニエザへ注意した。

「第二クラス担任のエスメルに気をつけなさい。

 あの女は、気性が激しく、自分が納得いかないとなると、相手を負かすまで容易には引き下がらない。

 わしは、齢七百年を越える大先輩だから、あの女も、正面切って文句を言ってくることはなかった。だが、ニエザはまだ若いから、気に入らないことがあれば、文句を言ってくるかもしれない。

 困った時は、遠慮なく学院長を呼び出して良いぞ。わしが、ドゴロフには、エスメルがゴネたら、お前が責任を持って対処するよう釘を刺しておいたからな」


「はい、ありがとうございます」

 太師へ礼を言いながらも、ニエザは、私だって齢は二百年を超えたんですけれど・・・生意気なドロメル派には、私なんかきっと黄色い嘴のヒヨコも同然なんだろうと思った。

 

 ニエザへ注意を終えると、太師はリーユエンについて尋ねた。

「リーユエンはもう、潔斎を終えた頃かな?」


「はい、予定通りなら、今晩から岩戸へ籠るはずです」


「何とか、必要量を作り出せたら良いのだが・・・」


「リーユエンなら、大丈夫ですよ」


 ニエザは、前回も、十年分作り出したのだから、今回も大丈夫だろうと楽観していた。


 しかし、ヨーダム太師は、眉を寄せて考え込んだ。


「何か、気なることがおありなのですか?」


「リーユエンは、東海大帝によって換骨変易の法を受け、体を作り替えられてしまったのだ。

 見かけ以上に、中身が変わっておるやも知れぬ。

 以前と同じように業が可能かどうかが、分からないのだ」


 ニエザは、そんな話を少しだけ聞いた記憶があったが、ヨーダム太師ほど知識がないため、それがどれほど重大な問題なのかが理解できなかった。


 ただ、ニエザの方でも気がかりなことがあって、師父へ伝えておく事にした。


「リーユエンをプドラン宮へ送っていった時、業が終わったら三日後に迎えにきて欲しいと頼まれました。移動するには、早すぎる気がします」


「随分強行日程だな、なぜ、そのような無茶をなさるのだ?」


「業が終わって五日目に、魔導術概論を講義するそうです。逆算したら、三日後には迎えにいかないと間に合わなんです」


「魔導術概論など、臨時休講して後で補講すればよかろう」


「リーユエンが言うには、補講を入れたい日は、講義室が全てドロメル派の教師に抑えられて使えないそうです。それで仕方ないので、予定通りに行うことにしたそうです」

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