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魔導士学院生は、今日も元気ですっ!(落ちこぼれ呼ばわりされても、くじけません)  作者: nanoky


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 学院島へ戻ってきたツカリーゼは、自身の生き甲斐である、球体関節生き人形作りに、早速取りかかった。


 都では、リーユエンを引っ張り回し、手芸用品店にまで連れて行き、買い物に付き合わせた。

 その時、ツカリーゼに腕を掴まれ、逃げるのを諦めたリーユエンは、不思議そうに尋ねた。

「ツカリーゼ教授、手芸店で何を買うおつもりですか?」


「人形に着せる衣を仕立てるから、レース生地とか繻子織生地を買うのよ。

 このお店でしか扱っていないものが多いから、今日は絶対買い物するわ。それに、人形の装身具や、靴も作るから、何か使えそうなものがあったら、買うつもりなの」


 ツカリーゼは、高級なレース生地や繻子織生地や、ガラスビーズや天然石なども購入し、杏りんごを入れる木箱四つ分にもなるお買い上げ商品を、信玄袋に入れて持ち帰った。

 

 そしてツカリーゼは、目下、人形の各パーツの形成・乾燥を終え、表面を磨いて滑らかにする作業に取りかかっていた。


「待っていなさいよ、私の、愛しい大切な人形ちゃんたち、お肌を綺麗綺麗にしてあげましょうねぇ」

 

 最初は無光沢のザラザラした質感の表面が、サンドペーパーや、研磨布を、何度も取り替え、何工程もかけて、丁寧に磨き上げていくうちに、真珠のようなしっとりとした光沢を帯びてきた。

 ツカリーゼは、人形の表面を磨く時、魔力をこめるので、血の通った本物の人間の肌のような質感になっていくのだ。

 

 今は、三体の人形をほぼ同時進行で取り組んでいた。

 中でも、彼が特に熱心に制作しているのは、明妃だった。


 叙勲式典で、間近で、かなり長い時間、じっくりと彼女を見ることができたので、今度こそ完成できると自信を持って製作中だった。

 それに、リーユエンも製作したら面白そうだと思って、ほぼ同時並行で作っていた。

 それから、あと、もう一体、ツカリーゼは、にっこり笑ってその人形を取り上げた。


「ふふっ、ちびリーユエン、あなたの人形を作る日が来るとはねえ」


 それは、数年前、冶金錬成術研究棟へ、大きな本を胸に抱えて急ぐ、ちびリーユエンの姿だった。今のリーユエンの製作に取り掛かったとき、その姿を思い出し、つい懐かしくなり、一緒に作り始めたのだ。

 

 人形の各パーツの研磨が終われば、あとは組み立てるだけだった。

 しかし、三体の人形のパーツを並べながら、ツカリーゼは首を傾げた。


「あら、変ね・・・明妃とリーユエン先生のプロポーションって、こんなにそっくりなの?」

 

 ツカリーゼの作る人形は、傀儡術に基づいて製作するため、実物のきっかり四分の一スケールで製作されるのだ。これは絶対的な基準で、それが狂うことはあり得ないのだ。


 ツカリーゼは魔導術としての傀儡術を修めているため、たとえ本人の体に触れなくても、その正確なプロポーションやサイズを精密に再現することができる。

 なぜなら、モデルの体に直接触れたり、寸法を測らなくても、魔力波を飛ばし、その反射率から割り出す、傀儡術の奥義の一つを、ツカリーゼは使えるからだ。


「法座主猊下は、ものすごく背の高いお方だから、側にいる明妃は小柄で華奢に見えてしまうけれど、実際には、結構長身なのよね。

 六尺余りのリーユエン先生と、身長はほとんど同じくらいあるわね。でもこの二人って、人形にしたらこれほど、プロポーションがそっくりになるのかしら・・・これじゃ、見分けがつかないわ」

 

 ツカリーゼは、二体の人形パーツをしばらく交互に眺めた。


「他人の空似なのかしらね、案外、親戚とかだったりして・・・まさかね。今日の作業はここまでにしておきましょう」

 

 ツカリーゼは、お菓子を焼いて、お茶にしようと思った。

 それに余ったお菓子は、明日、グリムエールの塔で特訓中の、リーユエンと玄武の二人組に差し入れしてあげようと思った。



 その翌日、グリムエールの塔では、今日もパオディンがリーユエンの六尺棒に叩きのめされ、また悲鳴を上げた。

「ギャアー、痛いっ、痛いっ」


 余りの痛さに、涙目になり、六尺棒を滅多やたらと振り回し、逃げ回っていた。

 ヨーディンの方は、教えてもらった十式の型を使って、何とか六尺棒を受け止め、猛攻を耐えた。

 

 リーユエンは、パオディンの足元を狙い、六尺棒を低く旋回させ、容赦無く薙ぎ払った。


「パオディンさま、十式をお使いなさい。逃げてばかりでは、怪我をなさいますよ」


 リーユエンの言葉に、パオディンはもうどうとでもなれ、と半ばやけになって、第三式の技と第五式の技を繰り出した。

 すると、リーユエンの六尺棒の真ん中へ棒が撃ち込まれ、凄まじい衝撃となり、彼女の棒が宙を飛んだ。

 ソアラスが飛び上がり、棒を咥えて戻ってきた。


「リーユエン、大丈夫か」

 パオディンは、自分の六尺棒を放り出し、リーユエンの元へ駆けつけた。


「・・・・」

 リーユエンは右手首を左手で押さえ、顔色は真っ青になっていた。が、パオディンを見上げて尋ねた。


「この一打を撃ち込まれたとき、何を考えておられました?」


「えっ、何って、ただもう無我夢中で・・・」

 

 パオディンは、そこでしばらく黙り込んだ。

 それから、満面の笑顔になった。


「そうか、わかったよ。これがそうなんだな。

リーユエンありがとう、明日から、俺、真面目に観想するよ」

と、リーユエンの手を取って握手しかけたが、はっと気がついた。

「リーユエン、手が折れたのか?」


「大丈夫です、明日には治りますから」


 パオディンは、また涙目になり、

「リーユエン、ごめんな、それにありがとう。俺、本当に、明日から、生まれ変わったつもりで頑張るよ」

と、うるうるした目でリーユエンへ訴えた。


 リーユエンは、手首がひどく腫れてきたのを感じながら、それでも笑みを浮かべた。

「パオディンさま、どうか、離陰大公閣下の期待に応えられるよう、修行に励んでくださいませ」


 無我の境地を理解できたパオディンなら、魔導師階梯を、三日もあれば、第六階梯まで自力で到達できるだろう。リーユエンが指導できる範囲はここまでだった。

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